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【リメイク連載中】目が覚めたら世界が異世界っぽくなっていた件  作者: 白い彗星
異世界召喚かとテンションが上がった時期が俺にもありました
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赤チーム自己紹介



 チームわけが発表され、現在は昼休みだ。


 普段は、リミやルーアらいつものメンバーと食べるのだが、今回は違う。誰が言い出したわけでもないが、大抵の人がチームのメンバーと一緒に食べる構図になっていた。


 それは達志も例外ではない。


 他の人達はともかく、達志にとってはクラスメートは『みんなと比べて一年知らない』相手なのだ。


 リミ、ルーア、ヘラクレス、マルクスに関してはそれなりに交流は深めていたが、それでもそんな短期間で、この学校で過ごした一年が埋まるはずもない。


 加えて、今回のチームメンバーに彼女らはいないのだ。なので、チームメンバーと交流を深めるといった意味で昼食を共にするのは必要なことだ。


 ちなみにリミは、「タツシ様と一緒になれなかった!」と騒ぎながら昼食もついて来ようとしていた。ルーアに引きずられていったが。



「…………」



 そんなわけで現在、達志はいつもとは違うメンバーと昼食を共にしている。


 それぞれが思い思いに食事を進める中、ふと一人の女子生徒が話しかけてくる。



「やー、こうしてちゃんと話すのは初めてだねぇ勇界くん!」


「ん、そうだね。えっと……小宮さん」


「おー、覚えててくれたんだ!」


「そりゃクラ……あー」



 にこやかに笑いながら話しかけてきたのは、クラスの中でもムードメーカー的な存在である小宮 蘭花。


 覚えてたことに対して、クラスメイトだしと答えられなかったのは彼女がクラス内でも目立っているからだ。茶髪のショートボブと大きな目が印象的であるが、正直、この中のメンバーの半分くらい名前はわからない。



「まあ、せっかくの機会だし、改めて自己紹介とかどうよ!?」



 というわけで。自然な流れで、あくまで自然な流れでお互いの自己紹介を促す。



「んー、そだね。勇界くんでなくても、初めて同じクラスになった人もいるだろうし」



 特に突っ込まれることもなく、自己紹介モードに突入することに成功。心の中でガッツポーズを決める達志だが、それを悟られてはいけない。



「じゃあ、私からいくね! 小宮 蘭花、血液型はA型! 風魔法に関してはちょいと自信あり! 好きなことは友達作り、嫌いなものは勉強!

 好きなものはお母さんの作ってくれた卵焼きに、ハンバーグに、唐揚げ! 嫌いなものは納豆、オクラ、とろろで、まあネバネバしたものが……」


「や、そこまで言わなきゃダメ!?」



 まだまだ続きそうな自己紹介を途中でストップさせる。てっきり名前と、もしかしたら一言程度だと思っていたのだが、こうも深く掘り下げられるとは……



「あ、ごめーん。つい熱が入っちゃって。名前だけでよかったよね!」



 手の平を合わせて謝る蘭花だが、困ったように笑い舌を出している。それも愛嬌というのか、これが彼女という人間なのだろう。


 なんていうか、コミュニケーションが服を来て歩いているような人物だ。好きなことが友達作りとは。



「じゃーお次どうぞ!」


「あ、あぁ」



 蘭花から時計回りに進んでいくようになったが、次に話を振られた彼が少々気の毒である。あんなバリバリの自己紹介の後とはツイてない。


 次の番である男子は、眼鏡をくいっと上げて咳ばらいを一つ。



「えー……シャオ・リングルだ。その……魔法は使えない。よろしく」



 言葉少なく、名前と魔法についてだけ話す彼だが……逆に、それだけかと突っ込みたくなる。それは自己紹介が短すぎるとかいう意味ではなく……



(もっと他に言うべきとこあるだろ!)



 そう思うのは、彼の容姿によるものだ。というのも、彼は人型ではあっても完全な人ではない。二足歩行のトカゲ……いわゆるリザードというやつだ。


 藍色の鱗は日々手入れされているのか艶やかに光っている。


 眼鏡をかけたリザードという奇怪な光景。一応、達志が寝覚めるまで面倒を見てくれていたウルカ先生もドラゴンの顔をしていたが、彼よりも容姿は爬虫類に近い。


 ちょっと何言ってるか自分でもわからない。



「ごめんねえ、彼引っ込み思案だから」



 その見た目で!? ……という突っ込みはなんとか抑え込んだ。考えたこと全て口に出す癖も徐々に直していかなければ。



「次、いいかな」


「お、はいはーい。どんどんいってみよう!」



 まだ頭の処理が追い付いていないのだが、それでも各ターンは回っていく。手を挙げたのは、次に順番を控える人物だ。



「ネプランテ・ゴンだ。気軽にネプって呼んでくれやあははは!」


「ど、どうも」



 豪快に笑いながら手を伸ばしてくるのは、桃色の皮膚をしたゴブリンだ。背が足りないためか、椅子の上に立ち背筋を伸ばしてようやく握手を求めている。


 応じないわけにもいかないので、握手を交わす。


 ちなみにご丁寧に靴を脱いで椅子の上に立っている。あと高い声色や、何よりスカートを着用していることから女の子なのだろう。



「アタシが使えるのは、闇属性の魔法さ! つっても、煙幕で相手の視界を塞ぐことくらいしかできねーんだけどな!」



 何がおかしいのか、高笑いをしている。声が大きいため耳が痛い。現に隣のシャオは耳を塞いでいるし。



「まーこれまで話す機会はなかった奴もいるけど、よろしく頼むぜお前ら!」



 蘭花とはまた違った意味での目立つタイプ、というのだろうか。その勢いに押されるばかりだが……向こうからガンガン話しかけてくれそうなので達志としては助かる。


 そして今度は、ネプランテから促すように次の人物にバトンタッチする。



「次はあっしでやんすね。小金山 バキ。魔法は使えないっすけど、その代わり自分で言うのもなんっすけど頭脳明晰で……」


「あっし!? やんす!?」



 まだ自己紹介の途中であったが、もう突っ込まずにはいられなかった。マンガみたいなぐるぐる丸眼鏡に、ゴブリンと大差ないんじゃないかと思えるほどの身長。


 何より、その話し方が特徴的すぎる。



「ん、何か問題でも?」


「あ、なんでもないです……」



 いけない、せっかく本人がノリノリなのに、場の空気を壊すようなことをしては。ここは大人しくしておこう。



「バキはこう見えても、学年トップクラスで賢いんだよねえ」


「いやあ、照れるでやんす」



 さっき自分で言うのもなんだけどって満更でもなかったくせに。あとその見た目じゃ全然驚かないがり勉感だよ。……そう叫びたい気持ちを、ぐっと抑え込んだ。


 何はともあれ、残り一人だ。今までリザードやゴブリンやがり勉、様々な人物と向かい合ってきた。もうこれ以上驚くこともないだろう。


 ほら、次の人物は……つやっつやの黒髪を七三にした、ちょっとナルシストっぽいけど見た感じ普通の好青年じゃないか。確かに顔立ちは驚くほど整っているし。


 がり勉に七三といつの時代だよと言いたくなるが。ともかく彼が口を開くのをじっと待ち……



「さあ、次はアニキの番っすよ!」


「!?」



 いきなり声を上げたバキ。嫌な予感がする。



「その容姿から言い寄る女性は数知れず! しかしそれらを一刀両断! それもそのはず、なにせ小学生以上は女じゃねえ、それこそがこの人、毒島 ロペ!」


「ふっ……よろしこ」


「ダメだこのチーム!!」



 最後の最後に、とんでもないのがぶっこまれてきてしまった。このチームもうダメだと、確信してしまうほどに。

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