やっちまいました
結局あの後も筋肉ナルシストの再三の断りを退けたリミは、ほっとため息をついていた。実際に十分と経ったかどうかという程度の時間であったが、リミにとっては相当な負担だったのだろう。
さて、さすがにもう告白イベントはないだろう。後は彼女にバレないように、この場から立ち去るだけ……そのはずだったのだが。
「さて……そこに、いますよね? 隠れてないで出てきたらどうですか?」
と、背筋の凍る発言が背中からかけられた。立ち去ろうと背を向けていたが、ギギギ……とロボットのような達志は振り向く。
リミの視線はこちらに向いていないし、むしろ背を向けているが……明らかに、この場に隠れている者……すなわち達志とヘラクレスに対する言葉であった。
「え、バレた? ってバレてた? マジで……?」
達志の額に冷や汗が流れる。その口振りから隠れていたことには最初から気づいていたのだろうが、敢えて指摘しなかったということだろう。
リミの声は、どこか冷たい。さすがに告白イベントを覗き見されては温厚ではいられないということか……
「早く出てきてください。でないと……わかりますよね?」
そう言った途端、辺りに冷気が漂い始める。
私的な魔法の発動は禁じられてるとヘラクレスは言っていたが……これは、マジだ。出ないとマジで氷付けにされかねない。
さすがに氷付けは勘弁だ。怒られてしまうだろうが、ここは素直に出ていくしかあるまい。
そう考え、腰を上げる。
「いや、悪いリミ……これは、つい……」
「ふっ、さすがはリミ……我が存在に気が付いていたとは!」
謝罪を口にしながら出ていく達志だったが、それは異様にうるさい声にかき消された。何事かと目を向けると、そこに映ったのは意外なものだった。
なぜか、そこにはルーアがいた。それも、リミの視線の先に。……これから導き出される答えは一つ。リミは達志達ではなく、ルーアに対して呼び掛けていたということで……
「お前もいたのかよ!!」
つまりリミは達志達に気づいていなかったということで……余計なツッコミ魂が災いして、リミに己の存在を知らせることになった。
「え?」
「あっ」
「ほぉ」
「はぁ……」
戸惑いつつ振り向くリミ、やってしまったと間抜けな達志、そこにいたのかと目を輝かせるルーア、何やってんだかとため息を漏らすヘラクレス。
四人の声が重なり、この場は暫し変な空気に包まれた。




