第十話
「ヒョーヒョッヒョッヒョッ!」
その声の主はマリコ先輩ではなく、私達『村岡高校』の最大のライバルである、『フェボン女子高校』の”ミッシェル富井”だった。
「ヒョーヒョッヒョッヒョッ! ナナコォ! あんた達呼ばれているわよ。まさか一回戦で敗退なんてことはないでしょうね?」
ミッシェルは私と同じ中学校出身であり、共にキープフィギア部で切磋琢磨した仲である。中学では私の方が成績が良かったため、ミッシェルは私にライバル心を燃やしており、ことあるごとに突っかかってくる、一言で言えば『めんどくさい嫌なヤツ』だ。
「うるさいわね! あっち行ってよ。マリコ先輩さえいれば、あんた達なんかには絶対に負けないんだからね!」
『フェボン女子高』はキープフィギアの名門高であり、前回の全国大会も優勝している。それでも、私は本気で勝てると思っていた。マリコ先輩と、美咲先輩と私の3人なら絶対に勝てると信じていた。3人がそろいさえすれば……。
「ふん! まぁ、あんた達みたいな弱小高なんて最初っから眼中にないわよ。もし、私達『フェボン女子高』と戦いたければ、決勝まで勝ち上がることね。ヒョーヒョッヒョッヒョッ! それじゃ、ごめん遊ばせ。ヒョーヒョッヒョッヒョッ!」
そう言うと、ミッシェル富井は気持ちの悪い笑い声と共に去っていった。
「……ムキー!! ぢぐじょう! ムカつく! ミッシェルのくせに!!!」
私はあまりの悔しさに地団太を踏んだ。『フェボン女子高』を倒して、ミッシェルの鼻を明かしてやりたい! ……でも、マリコ先輩がいなければ勝ち目はない。
「くそぉ……」
私は悔しかった。負けることが悔しいんじゃない。全力で戦えないことが、すごく悔しい。




