表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/31

第2話 旧式AI支援ユニット

「考える前に動くことが重要です!」


ぽんこが壁の方を向いて、すぐに向き直る。


「おっと、その前に……マスターのこと、教えてください!」


俺か。

俺は……


「俺は……山田悠斗」

「マスターの名前はヤマダユート。はい!続けて年齢とお仕事をどうぞ!」


ぽんこがウィンドウを出してメモをとる。


「27歳。システム管理」

「お、ダンジョンマスター適性高いですね。花丸です。どんなシステムです?」

「小さな会社の社内システムだ。実際は社長の愚痴を聞いたり、お局様の機嫌をとったり、雑用みたいなもんだったけどな」

「なるほどなるほど、苦労されたみたいですね」


なんだこれは、面接か?


「それより、この世界はなんなんだ?」

「はい!マスターの世界とは違うようですね!」


やっぱりか、まあそれはそうだろう。


「どういう世界なんだ?」

「マスターの世界の語彙で言うと『剣と魔法の世界』でしょうか」


剣と魔法、ファンタジーか。


「俺はどうなったんだ?」

「……一般的にダンジョンマスターは、死亡した知性体が再構築されて、任命されます」


うん。

再構築だ、そうじゃないかとは思っていた。


「つまり、俺は死んだってことか」

「マスターの記憶には死亡時の様子はありません。もしかしたら死んでないかもしれません」


「まあいい。家族はいなかった。それなりに未練はあるが、遺した人がいるわけじゃない」


そう言って、話を打ち切る。


ショックじゃないと言ったら嘘になる。

しかし考えたら、きっと動けなくなる。


自己紹介はこれくらいで十分だろう。


それが伝わったのか、ぽんこも次へ進むことにしたようだ。


「はい、それではとりあえず支配域化をやってみましょう」


その言葉と共に、先ほどと同じウィンドウが表示される。



【支配域化】

・選択領域:2m×2m×4m

・状態:未分化(岩盤)

・必要DP:4


「まぁ、やってみなきゃわからないよな」


決定をイメージすると、ウィンドウが確定表示に変わる。


【支配域化:確定】

【残DP:6】


見た目は特に変わらない。


「はい、これで構造をいじれるようになりました。次は空洞にしてみましょう」


【地形変化:基礎整形】

・空洞化:0DP


「空洞化は無料か。試し掘りにはありがたいな」


ここで金を取られたら、本気で泣くところだった。

壁に向けて、通路を作るイメージを押しつける。


壁が消え、荒れた岩肌の通路が現れた。

足を一歩踏み入れる。


「おお、ちゃんと洞窟になってる。石っぽいし、湿り気もあるし」


見た目も感触も、ゲームの安い洞窟テクスチャよりずっとリアルだ。


「よくできました!さて次は光源です!」

「必要か?部屋の明かりで十分じゃないか」

「チュートリアルです!文句言わずにやってください」


意識を向けると、期待通りウィンドウが出た。


【地形変化:補助】

・光苔:1DP

・天然発光鉱石:4DP

・人工照明パネル:10DP(コア部屋限定)


「初心者は光苔(ひかりごけ)一択です!」


光苔を選ぶ。


「これでどうだ」


決済を意識すると、通路の岩肌に小さな光がじわりと灯った。

緑がかった淡い光が、広がっていく。


「おお。安いのに仕事はちゃんとしてる」


光苔が広がると思った以上に明るくなった。


残DPは5。

ぽんこは視線を通路に向ける。


「支配域No.1、通路生成と光苔設置を確認しました。さっきまで暗すぎ問題でしたが、現在はぎりぎり合格レベルです」

「暗すぎ問題って名前がついていたのか」

「はい。内部メモでそう呼んでいました。既に改善済みです」

「改善後の評価がぎりぎりなのは黙っておけよ」

「正直さは長所だと認識しています」

「そういうところだぞ」


ぽんこは気にせず、別のウィンドウを出した。


【チュートリアル:進行度30%】

推奨:支援ユニットと協力し、ダンジョン運営の基礎を開始してください


「さて、操作体験が終わったところで、これからの流れを説明します」


ぽんこの瞳のリングが、少しだけ明るくなる。


「これから行うべき主な作業は、支配域の拡張、地形の整形、環境生成、モンスターの配置、罠の設置などです」

「多いな」

「多いです。マスター一人だと、かなり大変だと思います」

「素直な評価ありがとう。知ってた」


「そこでぽんこの出番です。情報整理と進行管理と、マスターの精神衛生の補助を担当します」

「最後の項目が一番重要そうだな」

「とても重要です。さっきまでの暗すぎ問題のログを参照すると、マスターの心への負荷は高めでした」

「ログに残ってるのか、それ」


「残っています。個人的には、暗さよりマスターの独り言の量の方が心配でした」

「余計な分析するな」

「了解しました。分析はほどほどにします。ただし心配は続行します」


虹彩のリングが、少しだけ柔らかく光る。


「それではマスター。残DPは5です。非常に厳しいスタート条件ですが、一緒にがんばってダンジョン運営を始めましょう」

「いきなり詰みよりの状態から始まるダンジョン運営ね。はいはい」


自分で選んだ結果だ。

後悔してもDPは戻らない。


「まずは赤字経営からスタートか」

「ぽんこも全力でお手伝いします。倒産しないようにがんばりましょう」

「ダンジョンに倒産って概念があるのかは知らないけどな」


そんなやりとりをしながら、俺は最初の通路の前に立った。

コア部屋の無機質な壁と、光苔に照らされた岩の通路。


「よし。では、新人現場責任者と旧式支援ユニットの二人体制で」


深く息を吸い込む。


「試し運転から始めようか」


「はい、マスター」


ぽんこの返事とともに、俺は一歩、ダンジョンの中へ踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ