40 これは大きな伏線・・・なのか? Ⅱ
さあ、米国に出発だ。そっちも楽しみなんだ~。
米国へはグラスプリーフ家の自家用機で行く。
米国国内だけでなく、愛国や他の国々にも商談等で行き来するため自家用機を3機ほど所有しているってさ。
会社役員が仕事で遠方へ行く場合や緊急の対応が必要な場合に使用するらしい。
外部に貸し出すこともあるって。
今回は、エイダン叔父さんが伊国、仏国、英国に仕事があって、米国に帰るときに私たちも一緒に、ってことになったみたいだね。
ただねえ、多分それは名目上の理由だね。
本当のところは、叔父さんが早く母様に会いたくて迎えに来たんだと思うよ。
母様の兄のライアン伯父さんと弟のエイダン叔父さんは、ものすっごいシスコンだからね。
おじさんたちの様子を見ていて、「兄様のシスコンはこっちに似たんだぁ」って納得したもん、私。
あっ、またズレたあ?
まあ、母様はグラスプリーフ家の会社関係者でもあるから公私混同にはならないんじゃないかな(私と兄様はただのオマケだよ。オマケっ)。
でもホント、自家用機の移動は助かる~。
米国国内は広すぎて空の旅の乗り継ぎも大変だからね~。おかげで快適な旅になったよー。無事到着。
さて、今日から滞在する家は、母様が生まれ育った家だ。
まだ、母様の部屋はそのまま残っている。
今の家の主はライアン伯父さん。
母様が実家に帰るたびに、「アリス、そろそろ別居婚でもいいと思うよ。ハルキはちょくちょく来るよ。」って言ってる。
な~んかそんな結婚があったような・・・?
兄様が言った、「それって妻問婚みたいだねえ」を聞いて「それな」って思ったよ。
こんな風だから母様が実家に帰るときは、父様が米国に迎えに来て一緒に帰る、ってところまでが毎回のパターンだ。
まあ、今回の米国訪問には目的が2つほどあったんだけどね。
1つ目は、ライアン伯父さんの奥さんアシュリーが2ヶ月くらい前(もうすぐ3ヶ月だったかな?)に出産したから赤ちゃんに会うこと。アシュリーは母様の親友でもある(母様はすでに1回会いに行ってるよ)。
2つ目は、エイダン叔父さんの結婚式が近々あるんだよ。
エイダン叔父さんが結婚する相手アグネスは母様たちと幼なじみだ。アグネスだけでなく、彼女の弟ドナもだけどね。
で、母様の仕事についてだけどね、モデルやってるって前言ったことあったっけ?
薬剤師の資格も持ってるけど。
モデルはねえ、主でやってるわけではないし、デザイナーが「どうしてもアリスがやって」って言うからねー。
だから、母様は大体「Kelly」ってブランドのモデルだけやってるようなもんだ。
なぜって?
「Kelly」のデザイナーは、母様の幼なじみのドナだ。
そして、ドナは母様をモチーフに作品を創っている。彼の言によると母様は彼にとって「創造の女神」なんだそうだ。
たまたまドナたち兄妹と母様が湖にピクニックに行っていたとき、湖をバックに立つ母様を見て「ビビッと感じて」描いたデッサンが世に出るきっかけになったらしいよ。
ほ~んと「たまたま」じゃない?ってドナに聞いたら、「アリスを見ているとスランプに陥っていても何か出てくるんだよ。スゴくない?」って。
それも何度もって。密かにベルが何かしてるんじゃない?って私は思ったよ(確かめてないけど)。
ドナはホントにすっっごい人見知りで、普段は引きこもっているから、親しい人でないとめったに会えない。
だから「Kelly」は姉のアグネスが運営している。
ドナは服のデザインを中心に作ることしか考えてないから。
どうしても人前に出ないといけないときには(ファッションショーの最後とか)、別人か?ってくらい全身作ってる感じで出てる。
ほんとーにスゴいよ。普段のドナを知ってたら「誰これ」って思うもん(まあ、母様もモデルの時と普段は全然違う。髪も目もメイクもキャラも変えてるから~)。
性別不明の美人さんになってる。
ブランド名のケリーだけ名乗り、性別も含めて他は全て出してないからね。
挨拶も声を変えて録音したのを上手く合わせて流してるからねえ(口パクだよ)。
こんなんだから「Kelly」関連のモデルの仕事は、ほとんど母様が引き受けている。
他のモデルさんも母様かアグネスが選んで依頼している人ばかりだよ。
そういえば、母様がモデルになりたかったのかどうかは聞いたことないな。今度覚えてたら聞いてみよう。
次っ、母様は薬剤師の資格は持ってるんだけど、今はあまり製薬には携わっていない。
今は化粧品を作っているみたいだ。そのために資格も取ったみたいだし。
薬作りはねぇ、アシュリーがやってるんだよ(母様とアシュリーは高校、大学と一緒だったみたいだよ)。
今は産休中だけどね。
母様は、薬剤師の資格を取るために勉強したことや色んな薬草の知識を基に、「できるだけ楽してキレイに」を目指しているんだってさ。
私はさ、最初ソレ聞いて???だったよ。
だってねえ、母様の化粧品ってグラスプリーフの会社だけしか取り扱ってないし、市販されてないんだよ。
今までは、特定の美容サロンか個人からの依頼が中心だったと思う。
お金も時間もある人がお客様なんじゃ?
と思って母様に聞いたら、「そんな人もいるけれど、自分でバリバリ働いている人は普段の美容は短い時間の方がいいって人もいるのよ。」ってことだった。
まあねえ。母様も毎日時間が余っているわけではないもんねえ。走りまわってもいないけど。
それで、今作っているのがオールインワンの基礎化粧品なんだって。目標が「不老」ってんだからビックリだよねっ。細胞を若く保つのを目指しているんだって(アシュリーからも「早く作って~」と熱望されているみたい)。
「それってお高くなるのでは?」って聞いたら、「皆に使ってもらいたいから一般に流通できるようにしたいと思っている」って。値段の設定は3段階くらいにはなるかも、とも言ってた。
容器とか香りとか中の成分の量の違いとか、かな。
で、それにいい素材はないかずっと探していたんだって。
ベルから「愛国にあるかも~」と聞いてグラスプリーフの森や薬草園を見て回って、よさそうと思ったのは試していたみたいだよ。
ガッカリした様子はなかったから何か見つけたのかもだね~。
さあ、どんなのが出来上がってくるのか、ちょっと楽しみだよ(いや、ちょっと怖いか?)。
今のグラスプリーフの会社は、全体の指揮はライアン伯父さんなんだけど、化粧品関係はエイダン叔父さんなんだよね。
というか、母様のためにエイダンが化粧品部門を作ったんだよ。それをライアンも認めたんだよ。ホントはそっちも自分がしたかったみたいだけど、さすがに無理ってことで、泣く泣く諦めたみたい~。
今度「Kelly」がメイク化粧品を出すみたいだけど、当然それに母様も協力しているから必然的にグラスプリーフも関わってくることになるね。
エイダン叔父さん、いっそのこと化粧品から美容全般に手広げちゃう?忙しくなっちゃうけどね。
補足だけど、アシュリーの実家は飛行機の製造販売をしている。
アシュリーのパパは整備士の資格を持っていて、小型飛行機は運転だけでなく整備も自分でやるんだって。
それを見るのが好きだったアシュリーも小型飛行機の運転だけでなく、自分が操縦する機の整備までできるよう資格を取ったって(スゴいよねえ)。
これはついでなんだけど、アシュリーのお兄さんはパイロットなんだってさ。
家族で飛行機好きみたいだけど、何でアシュリーは薬作ってるんだろう?って思ったよ。
アシュリー曰く、「大学でもアリスとずっと一緒にいたかったの。」だって。
ライアンとアシュリー夫婦の共通点は「アリス大好き」ってことだ。
昔は2人で、母様に変な虫がつかないように協力し合っていたみたいだし(多分だけど、母様は気付いてたはず。だってベルがいるもん)。
その結果、結婚したってこと・・・?(否定はできないなー。今でもずーっと家にいていいって母様に言ってるくらいだしねえ。)
その関係で、グラスプリーフ家が3機ほど自家用機を持つことになったかは知らないよ。
私は移動が楽であればよいのだ。
っと、おじさんたちも普段の呼び方は「ライアン」「エイダン」だよ。
さて米国に着いた2日後、私と兄様、桐葉と蓮でここら辺を観光することにした。
母様の生家には何度か来たことはあったけど、ここらを見て回った記憶はないんだよ。
私がまだ小っちゃかったからかもしれないけど、大体家で過ごすことが多かった。
米国に来たら当然薔子さんの所にも行かなきゃならないから、こっちで過ごすのは2~3日だからね。
今回はエイダンの結婚式があるから1週間くらいはいる。
モチロン和国に帰る前には薔子さんの所にも寄る予定だよ。
エイダンの結婚式は5日後だ。
だから、明日にはアイリスとイアンも愛国からやって来る。
父様も前日には来るって言ってた(そして結婚式の翌日には薔子さんの所へ皆で出発)。
そして前日にはアシュリーも実家から赤ちゃんと一緒に戻って来るらしい。
出産後から今までは実家にいて、ライアンが毎日会いに行ってたらしいよ。
なぜかって?えーー、詳しくは知らないけどエイダンの結婚式の準備でバタバタしていたのと、ライアンが育休をしばらく取るみたいだから調整のため少し忙しかったんじゃないの~?
アシュリーのところの両親も娘大好きって感じらしいから、本人にとっても両親にとっても良かったんじゃないの~。
エイダンの結婚式後はライアンは育休に入るし。
ああ、エイダンの家はここの隣に建ってる。もういつでも住めるようになってるってさ。
ここ、敷地が広いからもう一軒くらい建てられたみたいだけどね・・・。
敷地内にゲストハウスとアイリスたちの別棟もあるんだよ。こっちはスケールがでっかい!!隣が見えないもんねー。
閑話休題。戻ろう。
今日は大人組は皆忙しそうだったから、ちゃんと母様の許可を取って観光することにしたのだ。
車の運転手とボディガードは一応付けてもらった(付けられた)けど、桐葉と蓮がいるから大丈夫。
おおっと忘れていたよ。大吉も来ている。あのサンザシの若木を頼んだ後やって来たんだよ。
どうやってって?大吉は時空を超えられるから簡単なんだよ。だって月兎のところと行き来してるんだよ。和国から愛国までって大吉には楽勝でしょ。
今は私が斜めがけしているバックの中に入って、顔だけ出しているよ。
さてさて母様の生家の割と近くには、赤い岩山や4つのエネルギースポットで有名な場所があるんだ。今日の午後はそこを探索する予定なんだけど、午前中は遠い方から行こうと思っている。
さあ、午前中は世界最大級の峡谷と言われている場所だ。1日で観光するため、早朝から活動開始だよー。
「うひょーっ、見晴らし良すぎーーー」
あっ、つい叫んだらこだました。
「ホント、スゴいねえ。」
兄様は壮大なスケールで広がる目の前の自然に見入っていた。
お昼ご飯は車の中で食べて、午後の場所にやって来ましたよ。
さあ、これから歩くぞぉ~。
4大ボルテックスを巡るのだ。
一番最後を家に近いところにして、夕日の中の景色を堪能して帰るのだよ。
ガイドブックには、どのくらい時間がかかるかも載っているけど、多分私たちはそれより短い時間で行ける。普段から鍛えているからねえ。ハッハッハッ楽勝。
午後も予定通りに見て回り、いよいよ最後の場所で夕日を眺めて帰るのだ。
今日も1日充実していたなあ。満足満足。
夕日の中の赤い岩山、そしてそれが水面に映っている。
「ふわぁ~、キレイだねぇ~。少し眩しいけど・・・。」
「そうだねえ。」
「んー? ええーーーーっ」
(イカイトツナガッタッス)
(桃香、何か来るぞ。)(やな予感が・・・)
「 ・・・・・・ 」
(柊、何か来そうだねえ。)(うん・・・)
次の瞬間、目の前には1人の少年と鳥がいた。
「シオン、どうやら別の世界のようじゃ。」
「父上、母上・・・」
兄様が彼らに声をかける。
「ねえ、君たちはどこから来たの?」
答えたのは鳥だった(九官鳥に見えるけど・・・)。
「われらは地底王国より来たのじゃ。どうもここは異世界のようじゃな。」
「シュウ、チテイオウコクハ、マエモモカモイッタセカイニアルッスヨ。」
「「 あの世界ぃ? 」」
「ソウッスヨ。」
「ほう、おぬしらは異世界に行けるのか。もしかして噂に聞く一族なのか?」
「あの世界では管理人の一族と言われたことはありますね。」
「おおそうか。シオン、よかったぞ。彼らに頼もう。」
「信用しても大丈夫なの?」
「多分な。それに他に方法はないぞ。」
「・・・そうだね。」
その少年は鳥と話して心を決めたのか、私たちの方を向くと助けを求めてきたのだ。
「僕はシオン・ザラーム。僕の国、地底王国で内乱が起きたため逃げてきたんだ。
しばらく匿ってもらえないだろうか。
こちらは、僕の師匠アスル殿だ。」
「わしはアスル。地底王国の知恵と呼ばれておる。
この子シオンを教えておる。
この子は地底王国に必要な者。死なせるわけにはいかんのじゃ。
どうかわしらに力を貸してもらえまいか。」
なんと、鳥が先生だった(ビックリ!)。
まあ、桐葉と蓮も私たちの導き手だけどねえ(狼と犬。今は人の姿をしているけどさ。あっ、大吉は人の姿にはならないよ)。
「・・・シュウ、モモカ、カレラヲタスケテアゲテホシイッス。」
大吉が少し考えて(それとも月兎から連絡でもあったのか?)言ってきた。
それを聞いた兄様は、1度頷くと「わかったよ。」って言ったんだ。
その少年は、少しクセのある黒髪に紫の瞳、色白で綺麗な顔立ちをしていた。
こんなキレイな子を、そこら辺にほっとくわけにもいかないよねえ。
ところで、と周りをキョロキョロ見ていると、大吉が「ダイジョウブッスヨ。ダレモイナカッタッスヨ。」って。よかったよ。誰にも見られなくって。
車のところで待ってもらってた運転手とボディガードには何て言おう。
いいや、兄様たちに任せようっと。
後はヨ・ロ・シ・クねっ(ポーイっと)。
ってことで、その1人と1羽を連れて帰ったんだ。
父様にも北斗さん経由で連絡したよ。桐葉から。
母様には私たちから話したよ。
今晩は家にいるのが私たちだけだったからよかったよ(ライアンはアシュリーのところだし、エイダンは今晩は新居の方に行くって言ってたからね)。
夕飯後に、シオンたちに用意した部屋に一緒に行って、使い方なんかを説明したんだ。
そのついでに、もっと詳しい話を聞くことにしたんだよ。
状況がわからないと、シオンをどのくらい預かることになるのかとか、どんな対応をすればいいのかとか、全くわかんないしね。
その場には、彼らがこちらに来た時にいた全員がいた。
まず、兄様が尋ねたんだ。
「思い出したくないこともあるかもしれないけど、もっと詳しい内容が知りたいんだ。
話せるかな?」
「・・・うん。話すよ。」
「どうしても今は話せないことがあったら、それは無理に話さなくてもいいよ。
でも、どういう状況でこちらに来ることになったのか。どのくらいこちらにいるつもりなのか。その間、僕たちにしてほしいのはどんなことか、は話してほしいかな。」
「わかった。」
シオンの話(時々アスルの補足あり)によると、地底王国というのは、その名前の通り地下にある国らしい。
だから、その国の存在については、あの世界でもあまり知られていないらしいよ。
各国の王家や神殿に記録が残っているくらいじゃないかって。
ただ、この地底王国、数百年に1度、地上に現れるらしい。海上にまるで巨大な島が一夜にして現れたように見えるって(ってことは地下というより海底?)。
兄様はビックリしていたんだけど、そもそも地底王国という国の役割は、あの世界に魔物や魔獣、病などを生み出すことなんだって。
じゃあ、地底王国ってなくなる方がいいんじゃないかって?
んー?そう単純じゃないんじゃないかな。
だってさ、魔物や魔獣がいるから魔石が取れたり特別な素材が取れたりする面もあるでしょ。
何にだって両面あると思うんだよ。
利点もあれば欠点もある。
病だって、ない方がいいけど、あることによってその病を克服しようと人が努力することによって医療が発展する。
または、病気になることによって健康であることのありがたさや家族や親しい人の大切さや優しさに気付くことがある。
人は、何もしなくても生きていけるなら努力ってするのかな?どう思う?
何もしないって人がけっこういそうな気がするけど。
ああ、また逸れちゃったね。
地底王国は、その生み出す魔物や魔獣、病などの数や量を調整していたんだって。多すぎると地上の世界が滅んでしまうからね。
そして、その調整をするのが地底王国の王の重要な仕事だったらしい。
で、あと数年で地底王国が地上に姿を現すという頃になって、事件は起こった。
王弟が王位の簒奪を企てたのだ。
アスルによると、この王弟は自分たちの方が魔力が多く優れているのに地底に追いやられている(本人はそう思っている)のが気に食わなかったみたいだ。
周囲にも同じような考えのものたちが集まってきていたみたいだし。
そして、兄が先に生まれたってだけで王になるというのも不満だった(実際は、兄の方が魔力も多く、王としての資質もあったから、のようだが)。
だから、チャンスがあれば王位と地上の世界を乗っ取ろうと考えていた。
そんなある時、地底王国で他の生き物から魔力を奪える魔道具が開発された。
王としては、余分な魔力を吸い取ることで魔物や魔獣が増えすぎないように調整するために利用しようと考えていたようだが、王弟は自分の魔力を増やすために利用できると考えた。
王は弟の野望にも気付いていたため、魔道具の開発については弟に知られないようにしていた。
しかし、開発者の近くに王弟の協力者の息がかかっている者が紛れ込んでいたのだ。
そして、王弟側の者の手によってこっそり盗み出されてしまった。
それから間もなく、事件は起こったのだ。
ある晩、王弟から王に「相談したいことがあるから王と王妃に秘密裏に会いたい」と連絡があった。
王の方でも、魔道具の紛失に王弟が関わっているのではと疑っていたから当然警戒はしていた。
だが、まさか王弟が既に魔道具を手に入れていて、今晩それを使ってくるとは思っていなかったのだ。
魔道具は、まだ試作品の段階で実験を繰り返しているところだった。完成にはもうしばらくかかるだろうというのが、開発者の意見でもあった。
それを王弟は使ってきたのだ。
王は、その魔道具を弟に持たせているわけにはいかなかった。
何回使えるか、どれだけの魔力を吸い取るのか、等の調整もしていないのだ。
何としても破壊しなくては、と考えた。
その結果、王と王妃の全魔力を魔道具に注ぎ込み粉砕するしかなかった。
王宮はほぼ全壊状態となり、王弟は全力で身を守ったため死にはしなかったがケガはしたようだ。
アスルは王より「シオンを連れて逃げろ」と念話が来たため、すぐに寝ていたシオンを起こして異世界へと移動したらしい。最後に見たのが、王宮の大半が吹き飛んで壊れるところだった。
アスルは以前より、王から「国や我らに何かあったらシオンを連れて逃げてほしい」と頼まれていたって言ってた。
シオンのことを「次代を継ぐ者」って言ってたってことは、シオンは次の王ってこと・・・?(ひぇ~、責任重大じゃな~い・・・)
「どのくらいこちらにいることになるのかは、私にもわからない。
こちらにいる間に、私はもっと学ばねばならない。
だから、安心して学べる場所がほしい。
学ぶことについては師匠がおられるから、師に従うつもりだ。」
「うむ。わしからもお願い申す。
あちらに帰る時期は自ずとわかるであろう。
じゃが、今はまだいつとはわからぬ。
それまではよろしくお頼み申す。」
「うん。わかったよ。
じゃあ、改めて、僕は神代柊。こっちは妹の神代桃香。
そして、僕たちの傍にいるのがそれぞれの導き手、シオンの師匠のような存在になるかな。
僕の隣にいるのが蓮、桃香の隣にいるのが桐葉だ。
今は人の姿になっているけど、蓮と桐葉は犬の姿になることもあるよ。桐葉はホントは狼だけどね。
ああ、桃香の肩にいるのが大吉だよ。
これから、よろしくね。」
「うん。よろしくね。」
「「 よろしく 」」「ヨロシクッス」
「僕らの母のアリスには、さっき会ったね。
近々父もここに来るから、その時に紹介するよ。
両親にも協力してもらわないといけないから、さっき聞いた話は2人にも話すよ。
いいかな?」
「いいよ。」「うむ。構わぬ。」
その後は、慌ただしく過ぎていったよ。
アシュリーが連れて帰ってきた赤ちゃんに会い、エイダンたちの結婚式があり、その翌日には薔子さんのところに移動した。
薔子さんの所には3日ほどいて、1日は薔子さんの舞台を見に行ったんだよ。
その日は千秋楽だった。
舞台には、な~んと舞ちゃんも子役として出ていたんだよ(スゴいでしょ)。
だから、この舞台は薔子さんだけでなく、舞ちゃんを見るのも目的だったんだ~。舞ちゃん、がんばってたよ。まだチョイ役だけどね。一生懸命練習して、プレッシャーにも負けずにがんばってたよ。
シオンも一緒に見てた。スッゴい興味深そうにしてた。よっぽど珍しかったのか周りをキョロキョロ見ていて、何か面白かったよ(だってさぁ、シオンの肩にいる師匠と同じ動きだったんだもん。大吉が師匠は見えないようにしていたけどさ)。
ああ、シオンは薔子さんの養子ってことになった。
私たちと一緒に和国に行って学ぶ、って設定だね。
だから、名前も神代シオンになった。色白と黒髪はそのままで、紫の瞳だけもっと暗い色にして黒っぽく見えるようにしたみたい(色は師匠が何かして変えてた)。
こうしてシオンは、しばらくこちらの世界で過ごすことになったんだよ。
えっ?何?米国には妖精みたいのはいないのかって?
いるよ。
グラスプリーフ家の庭にはサンザシの木(これも愛国からベルが持ってきた若木を植えたんだって)があるから、妖精たちの中には愛国と行き来しているものがいるらしい。
これまでは、私たちの前には姿を見せないようにしていたんだって~。
それと観光に行った場所でも見かけたよ。空を飛んでるのもいたしねー。(皆には多分見えないだろうけど)
そっちとは友だちにならなかったのかって?
うーん?そっちとは多分、縁がなかったんじゃないかなぁ・・・(と思うよ)。




