「純一郎、今日は一緒に飲むぞ。」
「純一郎、今日は一緒に飲むぞ。」
一郎から電話で呼び出されたワシは、いつもの居酒屋に向かう。
暖簾をくぐると、一郎はすでに赤くなっている。
「お、来たな。まあ一杯飲め。」
一郎は酒に弱いくせに酒が好きだ。
「大学のころから変わらないな。少しは大人な飲み方を覚えなさいよ。」
「いいんだよ。酒は飲んでも飲まれるな。」
「飲まれてんじゃねえか。」
「あ、そうか。わははは……」
一郎は笑い転げてた。
「全くしょうがねえ奴だな。」
ワシは湯呑みで日本酒をがぶ飲みした。
ワシはいくら飲んでも何も変わらん。
だから、飲む意味が分からない。
でも、そんなワシと飲むのが楽しいらしい。
しばらく飲んでると、店員が近づいてくる。
「あの、岡田さんに電話です。」
「なんだ、いっちゃん。またスマホ置いてきたのか。」
「縛られるのが嫌なんだよね。」
「どうせバレんだから、持ってこいよ。お店に迷惑だろが。」
一郎は電話に出ると、すぐに神妙な顔になる。
電話を切ってからも、長いあいだ無言だった。
ワシは黙って湯呑みを傾けていた。
こんな時に何か言うほど若くはない。
「もしかしたら、一生に一度のお願いをするかもしれん。」
「そうか、分かった。」
「一生に一度だぞ、いいのか?」
「ワシとお前さんの仲だ。何も聞かんよ。それに、いっちゃんに貰った命だ、いつでも返すよ。」
一郎は黙り込んだ。
「それに、一生に一度のお願いはもう使ったぞ?」
「え?」
「大学の時、初めてできた彼女と海に行くってんで、ワシに代返を頼んだろうが。」
「そんなことで一生に一度のお願い使ったのか。俺、馬鹿なのか。」
「それだけ真剣だったんだろ。ま、2か月で振られてたけどな。わははは」
「わははは」
2人で乾杯した。
その時、ワシのスマホが着信を告げる。
おかしいな、ワシもスマホは置いてきたはずだが。
ポケットを探ると、学内電話を置き忘れてきたようだ。
『神田知佳』
画面に表示されている。
うわ、あいつかよ。
めんどくせぇな。
あいつ変人だからな。
でも、出ないともっとめんどくせぇしな。
「もしもし?」
「あ、柴崎教授ですか?」
「ワシのケータイにかけたんだから、ワシ以外に誰がでるんだ?」
「誰かが代わりにお出になることありますよね?」
めんどくせぇ……
「あー、分かった分かった。で、何の用だ?」
「実は折り入ってお願いしたいことがありまして。」
断りてぇ……
めんどくせぇ……
でも、断ったら、もっとめんどくせぇ……
「ほんのちょっとだけ、画像編集お願いします。」
絶対、ちょっとだけで終わらないな……




