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復興へのロードマップ 〜まずは拠点防衛(フェーズ1)から始めよう〜 3


「結界と、自動迎撃システム……」

 僕は女神たちの言葉をヒントに、自分の例外スキルで可能かどうかをシミュレーションしてみた。


 【火種】を応用した熱源感知式の罠や、【水滴】を応用した水圧カッターをトラップに組み込めないか。


【叡智と探求の女神:どちらにせよ、高度な防衛機構を構築するためには『触媒』が必要よ。

土や木じゃ魔力を保持できない。

魔物を倒して得られる『高純度の魔石』か、あるいは古代遺跡の『魔導核』のようなコアアイテムが要るわ】


「触媒……なるほど」

 僕は小さく頷き、ゴードンに向き直った。

「ゴードンさん。この村の近くに、魔物が巣食っているような洞窟や、古い遺跡はありませんか? 防衛用の結界を作るための『素材』を集めに行きたいんです」


 僕の言葉に、ゴードンは少し考え込み、やがてハッとしたように顔を上げた。


「……あります! この村から北へ半日ほど歩いた山の中に、かつて領主様が鉱石を掘り出していた『廃坑』があります!

瘴気が濃くなってからは、恐ろしい魔物が棲み着いたと噂されていて、誰も近づきませんが……あそこなら、特殊な鉱石が手に入るかもしれません」


「北の廃坑ですね。わかりました、明日はそこへ行ってみましょう」

 僕は土に描いたロードマップの「フェーズ2」の横に、「廃坑探索」と書き加えた。


「そして、拠点の安全が確保できたら、いよいよ【フェーズ3:産業の確立と周辺村へのアプローチ】です。ここで作られた美味しい作物や綺麗な水を武器に、ルミナス村などへ働きかけ、難民を受け入れていきます」


 神界の人事局が押し付けてきた「リストラ確定の死の区画」は、今や僕の野望を実現するための土地に変貌を遂げようとしていた。


「……素晴らしい」

 ゴードン老人は、僕が描いたロードマップを見つめながら、感嘆の声を漏らした。


「神官様は……まるで、百戦錬磨の軍師か、偉大なる領主様のようですな。

ワシらのような泥水すすってきた年寄りにまで、こんなにも明確な『希望』を見せてくださるなんて」


「大げさですよ。僕はただの、少し魔法が使える神官です。

……さあ、夜も遅いですし、今日はもう休みましょう。明日からは忙しくなりますよ」


 僕は照れ隠しにそう言って、土の図を足で消した。


♦︎


 やがて、短くも濃密だった夜が明け始めた。

 東の空が白み、冷たい夜気を押し退けるように、柔らかな朝の光がアデル村の崩れた屋根を照らし出す。


「ん……ぁ……」

 シエルが目をこすりながら起き上がってきた。

 昨日までの青白い顔色とは見違えるほど、頬はほんのりと赤く、目には力が宿っている。


「おはよう、シエルちゃん。よく眠れた?」

「……うん! おじちゃん、おはよう! わたし、すっごく元気!」


 シエルは僕の神官服の外套を綺麗に畳んで返すと、元気いっぱいに立ち上がった。


 そして、ゴードン老人の横に立つと、小さな両手で腰に手を当てて胸を張った。


「わたし、はたけの草むしりする! お水も汲む! いっぱいいっぱい、おてつだいするね!」


「ハハハ、そうかそうか。頼もしいな」

 笑い合う祖父と孫の姿。

 その光景をカメラ(光球)に収めながら、僕はそっと神界端末を開いた。


【下級神ライト(中級神/Cランク)】

【現在の存在値:56,320】

【アデル区画:セクター1の拠点防衛率:5%(未達成)】


 数字は着実に積み上がっている。

 神界の無能な上司たちを黙らせ、この狂ったシステムを根底から覆すための力が。


「よし。それじゃあ、ロードマップの『フェーズ1・後半戦』……家作りと、畑の拡張から始めましょうか!」


 僕は白銀の剣――いや、万能の農具と化したそれを背中に背負い、高く伸びをした。


 二柱の最高位女神という最強の「指示厨サポーター」と、初めて獲得した「信者(村人)」たち。

 

 底辺神の、限界集落からの下克上スローライフ。

 その希望に満ちた第一歩が、朝日に照らされて力強く踏み出されたのだった。

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