第41話 ― 冒険
翌朝、ノックの音で起きた。ドアを開けると、衛兵が立っていた。
煙草に火をつけ、煙を吹きかけて聞いた。
「何の用だ」
「殺人と器物損壊の容疑だ」
王を笑ってやるため、素直についていくことにした。
連行される途中、奴らが部屋に踏み込み、少女の手を掴んだ。彼女が泣き叫んだ瞬間――
圧力が溢れた。空が震えた。
全員が凍りつき、こちらを見た。
「その子に触れたら殺す。国も滅ぼす。
離せ」
鎧が恐怖で鳴った。彼らは手を放した。
兄弟に言った。
「部屋から出るな。何かあれば糸を引け」
王の所へ向かう道中、衛兵の一人が囁くのが聞こえた。
「あいつは知らない。貴族の前で処刑される予定だと」
計画を悟り、笑った。
衛兵が怯えて言う。
「何がおかしい? もう死ぬんだぞ」
「王は恥をかきたいらしいな。なら、貴族の前で笑い者にしてやる」
馬車の中、王をどう辱めるか考えていた。
着くと、衛兵の言葉通りだった。
巨大な闘技場に入った。頭を上げて歩く。
王が言った。
「無実の民を殺し、私有財産を侵害した罪だ」
「無実の民? 俺が侵害した財産とは?」
王が答えようとした。遮った。
「見下すな。
ただの王だろうが、調子に乗るな。
お前は屑だ。王冠を被ったゴミだ。
被った瞬間、それを汚した。
衛兵が増えようが、勇者が三人いようが、息子が見ていようが関係ない。
皆の前で恥をかかせてやる」
王が怒鳴った。
「獣を出せ!」
地が震えた。巨岩が門を砕いた。
鎖を引き千切り、構えた。
二足の巨牛、続いて緑色の巨人が二体。
指を鳴らし、魔法を使おうとした――出ない。
王を見ると、笑っていた。何かしたな。
牛が突進した。棍棒が振られ、埃が舞う。
埃の中、棍棒が来た瞬間、避けて指を殴った。棍棒が手から離れ、城壁で砕けた。
牛が指を押さえる。隙に角へ飛びつき、引いた。血管が裂けそうだった。
牛が頭を振る。顔の前で、口から強風が来た。
指が滑った。左角を放し、目を殴った。
バランスを崩し、膝をついた。
跳び上がり、糸を拳に纏わせ、急降下した。
角が来た。殴って折った。
両角が飛び、牛は顔から倒れた。
近づいて言った。
「ショーは終わりだ」
頭を殴り続けた。頭蓋が砕けた。もう一度殴ると、拳が埋まった。
手を抜き、頭の上に立ち、残り二体に叫んだ。
「来い。お前らの最後はここだ」
二体が来た。足取りは重い。
牛の角へ向かったが、衛兵が先に塞いだ。
くそ、退路がない。
糸を巻き、待った。
一体が手を上げた。殴れる距離だった。
避けると、地が砕けた。
足で手を蹴り、突進した。もう一体が殴ろうとしたので拳を蹴ると、相方を殴った。
相方が倒れた。足が顔の近くに来た。
踏みつけ、仰向けにした。
顔に跳び上がった瞬間、後ろから拳が来た。避けると、相方を殴った。
顔が砕ける音。危機を逃れた。
棍棒を探した。見つからない。
ローブを脱ぎ手に巻き、靴を脱いで王へ跳んだ。
壁の上、跳ぼうとすると下に衛兵がいた。
降りると、斧を持つ男がいた。微笑んで言った。
「さらばだ」
姿を消すように動き、頭を掴んで地に叩きつけた。武器が飛んだ。
手を伸ばし掴む。盾は鳴らなかった。
拳を握り、衛兵の中へ突進した。間を抜け、闘技場へ跳ぶと、首が後ろで飛んだ。
これで殺せる。
最も近い者へ。拳が来た。避けると、風圧が胸を裂いた。
斧を振ると当たり、火花が散った。皮膚が硬い。
足元へ行き、踵を切った。
糸を巻き、切り続けた。
顔から倒れ、血が飛んだ。
跳び上がり、首に着地して切った。
頭を蹴り、もう一体へ。
意識がないと思い、斧を上げた瞬間――不意に掴まれた。
くそ、寝たふりか。
締め上げられた。骨が軋む。斧が滑った。
死んだと思い、近づいてきた。目が合った瞬間、糸で手を切った。
切れた指の上を歩き、目に手を入れ、糸を頭に通して切った。
倒れて動かなくなった。
死体の間に立つ。血が服と顔を覆う。
王を見て微笑むと、怒っていた。
衛兵に囲まれ、王が叫んだ。
「もう一体出せ」
斧を投げたが、逸れた。
頭に当たるはずなのに、なぜ当たらない?
衛兵が言った。
「無理だ。結界に守られている」
そういうことか。
衛兵の中を歩いた。誰も動けない。
一人が出ると、頭が衛兵の足元に転がった。
振り返って言った。
「動けば同じ目に遭う」
誰も動かなかった。
闘技場を見渡した。何もない。ガラスか?
強い力を感じた。結界の源だ。衛兵が前進した。
手を振ると、体が裂けて倒れた。
もう一体――巨大な狼が出てきた。
王に言った。
「猫を出したのか?」
狼が突進した。気を放つと、止まった。
静かに言った。
「来い。なぜ攻撃しない。俺はここだ」
声を上げた。
「俺が殺したのは無実の民じゃない。奴隷商人だ。
財産侵害? 奴隷にも生きる権利と選ぶ権利がある」
王が怯え、剣を抜いた。
内なる力に集中し、結界の核を見つけた。
糸で核を砕いた。結界が消えた。
距離はあった。王は高所に、息子たちと共に。
瞬きの間に、王の前に立っていた。
王が剣で来たので折り、辱めた。
「なぜ剣を上げない?
折れているが、謝れ。無駄な力を使わせた。
お前の立場を教えてやっただけだ」
目を見て、静かに言った。
「よく聞け。
ゴミは恥をかかないと分からない。
道を塞ぐな。死が待っている」
王座の後ろに貴族もいた。落胆ぶりが見事だった。
手を上げ、糸で衛兵を袋のように掻き集めた。
持ち上げ、三つ数えて引き裂いた。
血が雨のように降った。笑いながら王を見ていた。
狼の方を見ると、目が合い、戻っていった。
城を出て宿へ。糸が引かれる感覚に、考えるより先に走った。
着いて、ドアを開け、兄弟を呼んだ。出てきた。
安心して聞いた。
「誰か来たか」
二人が泣いた。
「死ぬんじゃないかと、心配で」
抱きしめて言った。
「心配してくれてありがとう」
姉が言った。
「し……主人様……
お顔とお洋服が……
拭いて……いいですか」
微笑んで言った。
「気にするな。それと”主人”じゃなく”タイ”だ。兄だからな」
「で……では、お兄様と……?」
「ああ、それでいい」
弟がつかえながら言った。
「あ……あ……お兄様、ありがとう」
頭を撫でた。
「礼はいい。兄として当然だ」
姉の視線が俺の手に向いていた。嫉妬だった。
言った。
「お前も撫でてほしいか」
微笑んで言った。
「うん」
(第41話・了)




