表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイの物語  作者: Shadow
第1部:第1部: 序章
11/34

第十一章― ミコよ、見えているか。これは俺じゃない…奴らのせいだ

王城の広間。


タイは演説を終えた。


次の瞬間――


王族の首が、床に転がった。


血が広がる。

誰も動けない。


そしてその直後。


世界中の王国へ、一つの知らせが届く。


戦争を起こしたのは――

ニュースタジアの王ではない。


闇の中の「誰か」だと。


だが。


その「誰か」は、今ここにいた。


タイ。


彼は王城の屋上から静かに降りた。


指を軽く動かす。


透明な結界が王国全体を覆った。


外へは出られない。

だが中には入れる。


罠だった。


タイはゆっくり歩き始めた。


一人で。


王国を――


皆殺しにするために。



血が流れ続けた。


兵士。

市民。

騎士。

貴族。


子供すら。


誰一人として例外はない。


タイは淡々と殺した。


怒りではない。

狂気でもない。


ただ――


処理するように。


そして。


彼はある屋敷に辿り着く。


公爵の屋敷。


庭には一組の夫婦。


公爵キオラ・シシ。

そして妻。


タイは歩く。


一歩。

また一歩。


公爵は眉をしかめた。


「……何をしている?」


「なぜここにいる?」


「私はお前を招いていない。帰れ。さもなくば兵を呼ぶ」


その言葉を聞いた瞬間。


タイは笑った。


低く。


冷たい笑い。


「怖かったよ、キオラ・シシ」


一歩近づく。


「呼べよ」


「兵士を」


「残っているならな」


公爵の顔が凍る。


「……残っている?」


「どういう意味だ」


タイは静かに答えた。


「殺した」


沈黙。


風が吹く。


タイは続けた。


「全員」


「なぜ呼ばない?」


「もう一度言う」


「全員、殺した」


そして小さく呟いた。


「……すまない」


公爵の顔に一瞬希望が浮かぶ。


だが。


次の言葉で砕けた。


「自分に謝っただけだ」


「お前みたいな屑に謝る気はない」


恐怖が公爵を飲み込む。


彼は逃げた。


妻を置いて。


タイはそれを見て笑った。


「はは……」


「見事な男だ」


「妻を捨てて逃げるとは」


逃走。


追跡。


そして――


血。


次の瞬間。


庭に現れた少女。


カムラ。


「……何?」


「この騒ぎは?」


「護衛は?」


「お父様は?」


階段を降りた彼女は――


見てしまった。


父。


地面を這っている。


両足は切断されていた。


母。


背中を貫かれ、木に吊るされている。


カムラの世界が崩れた。


そして。


タイ。


彼がそこに立っていた。


少女は叫ぶ。


「……ユウタロウ!」


「何をしているの?!」


タイは振り向かない。


だから。


彼女は本を投げた。


本はタイの足に当たる。


タイはゆっくり振り向いた。


涙。


怒り。


憎しみ。


カムラの目。


タイは――


嗤った。


侮辱するように。


カムラは震える声で言った。


「呪ってやる……ユウタロウ……」


タイは笑った。


そして答えた。


「違う」


静かな声。


「俺はユウタロウじゃない」


一歩。


「俺は――タイだ」


沈黙。


「ユウタロウは偽名」


「そして」


「お前たちが殺した」


「俺の息子の名前だ」


カムラの思考が止まった。


理解。


恐怖。


絶望。


すべてが一度に押し寄せる。


そして。


タイの笑い声が――


屋敷中に響いた。


タイは剣を持ち上げた。


公爵を殺すために。


だが次の瞬間。


軌道が変わる。


剣が走る。


少女の首が飛んだ。


カムラの頭は地面を転がった。


タイはそれを蹴った。


父の前へ。


公爵は娘の首を見る。


言葉は出ない。


顔だけが全てを語っていた。


タイは近づく。


「どうした?」


「娘だろう」


「何か言えよ」


公爵は泣きながら叫ぶ。


「待ってくれ!」


「頼む!」


「何でもする!」


「金をやる!」


タイは止まった。


「金?」


「どこだ」


公爵は笑った。


助かったと思った。


「寝室の枕の下に鍵がある!」


「地下の金庫だ!」


「取ってくれ!」


タイは答える。


「いいだろう」


彼は背を向けた。


歩き出す。


公爵は笑う。


その瞬間。


腕が切断された。


肉が裂ける。


骨が砕ける。


身体が――


爆ぜた。


タイは地下へ降りる。


金庫を開ける。


金。


宝石。


だが。


臭い。


腐臭。


さらに奥へ。


そこにあった。


子供の死体。


無数の。


タイの表情が変わる。


頭を押さえる。


記憶。


封じていた過去。


叫び声が漏れた。


壁を拳で砕く。


タイは地上へ戻る。


庭へ。


煙草に火をつけた。


そして――


再び殺し始めた。


王国を。


すべて。


王国は死んだ。


通りは血で染まり、

建物は静まり返り、

生き物の気配は一つもない。


ただ――


死体。


山のように。


腐敗の匂いが風に混ざる。


そしてその光景を見た諸国の軍は震えた。


戦場を何度も経験した兵士たちでさえ、顔色を失った。


何人かはその場で嘔吐した。


何人かは気を失った。


それほどの地獄だった。


誰かが叫ぶ。


「……こんなことをした奴らは……」


「必ず殺す!!」


その時。


結界の中で。


タイはその声を聞いていた。


ゆっくり振り返る。


そして小さく笑う。


「面白いな」


静かな声。


「この光景を見て……」


「人類への脅威だと言うのか」


「笑わせる」


タイは呟いた。


「やったのは――俺一人だ」


やがて。


三つの王国の軍が到着した。


数百万の兵。


英雄召喚された勇者たち。


将軍。


騎士団。


すべてが集結する。


王国を包囲した。


兵士が叫ぶ。


「出てこい!!」


「卑怯者ども!!」


その言葉を聞いた瞬間。


タイの目が冷えた。


「卑怯者?」


怒りが滲む声。


「卑怯なのは……」


「お前たちだ」


「俺と」


「妻と」


「子供たちに」


「何をした?」


空気が震える。


タイは言った。


「だから誓う」


低い声。


「お前たちを」


「皆殺しにする」


タイは結界の外へ歩いた。


後ろの部下に言う。


「ここから出るな」


「俺が呼ぶまで」


彼らは答える。


「……はい」


タイは前へ進む。


軍がざわめく。


「誰だあいつは?」


「どうやってこんなことを……」


タイは指を動かす。


結界が消えた。


次の瞬間。


戦場全体を覆う新しい結界。


逃げ場はない。


タイは笑った。


狂ったように。


兵士たちの背筋が凍る。


そして言う。


「王国を殺したのは」


自分の手を見る。


「この手だ」


沈黙。


誰も信じない。


タイは指を一本立てた。


「お前」


中央の兵士を指す。


「消えろ」


次の瞬間。


その兵士は――


消えた。


血だけが残った。


戦場が凍りつく。


タイは言う。


「思い出したか?」


「俺だ」


「タイ」


その名前が戦場を震わせた。


「……タイ?」


「あり得ない」


「死んだはずだ!!」


タイの目が燃える。


「生きている理由は一つ」


「お前たちを」


「殺すためだ」


その時。


タイは彼らを見た。


勇者たち。


かつて一緒に召喚された者たち。


そして――


彼を嘲笑った者たち。


盾の勇者。


役に立たないと言われた男。


タイは笑う。


「盾だから?」


「殺せないと思ったか?」


冷たい目。


「全員」


「殺す」


勇者の一人が叫ぶ。


「待て!!」


「俺たちは同じ世界の人間だ!」


「一緒にこの世界を支配するはずだろ!」


タイは笑った。


「お前」


「俺の名前は覚えてない」


「だが最初の出会いは覚えてる」


兵士が叫ぶ。


「盾の勇者だぞ!!」


「攻撃できるわけが――」


タイは言う。


「お前が最初だ」


次の瞬間。


タイのオーラが解放された。


嵐。


大地が揺れる。


森が倒れる。


地面が裂ける。


空が暗くなる。


兵士たちは呼吸できない。


何十万が窒息した。


何十万が焼かれた。


ただ――


オーラだけで。


戦場は墓場になった。


兵士たちは勇者を見る。


「勇者様!!」


「倒してください!!」


その瞬間。


タイが動いた。


一瞬。


勇者たちの身体が切断された。


頭だけが残る。


タイはそれを拾う。


恐怖。


兵士たちは震える。


泣き叫ぶ。


「許してくれ!!」


「お願いだ!!」


タイは言う。


「謝罪で」


「家族は戻らない」


そして。


戦争が始まった。


タイは飛び込む。


黒い糸が腕から伸びる。


細い。


だが鋼より強い。


剣が抜かれる。


戦場が爆発する。


腕が飛ぶ。


脚が落ちる。


首が転がる。


血が雨のように降る。


タイは笑う。


狂気の笑い。


「どうした!!」


「勇気はどこだ!!」


彼は踊るように殺す。


死の舞踏。


兵士たちは逃げる。


叫ぶ。


「魂の収穫者だ!!」


だが逃げられない。


タイは飽きた。


糸を強化する。


数百万の兵。


二日かかった。


二日。


ただ殺し続けた。


そして。


戦場に残ったのは――


死体だけ。



その時。


タイの部下たちが到着した。


ドラクリナ。


ディアブロ。


二人は言葉を失った。


死体の山。


血の海。


そしてその中心。


タイ。


死体で作られた椅子に座っていた。


剣を地面に刺して。


静かに。


ディアブロは震えながら笑った。


「……はは」


「俺……」


「前に死ななくてよかったな」


ドラクリナは囁く。


「これが……タイ?」


ディアブロは答える。


「違う」


冷たい声。


「これは」


「俺たちが知ってるタイじゃない」


「顔に感情がない」


「心に躊躇もない」


「静かに歩いて」


「確実に殺す」


「彼の武器は銃じゃない」


「必然だ」


タイは言った。


「これは」


「俺の怒りの」


「ほんの一部だ」


そして。


彼は歩き出す。


人類を滅ぼすために。


首を集めながら。


二ヶ月後。


彼はエルフの森に辿り着く。


弓が向けられる。


「止まれ」


「危険人物だ」


矢が飛ぶ。


タイの頭に当たる。


だが。


彼は死なない。


矢を掴む。


そして言う。


「女王を呼べ」


「ローザを」


エルフたちは震える。


「なぜ名前を……」


タイはオーラを少しだけ出す。


森が悲鳴を上げる。


木。


精霊。


魂。


すべてが叫ぶ。


そして――


女王が現れた。


「入れ」


タイは森へ入る。


ローザは彼を見る。


血まみれの身体。


「何があった」


タイは答える。


「これだ」


棺を出す。


ミコ。


ローザの娘。


そして。


人間の首の山。


ローザは震える。


「……何をした」


タイは言う。


「約束した」


「娘を殺した者の首を」


「持ってくると」


ローザは棺を見る。


涙が落ちる。


「……ミコ?」


タイの声が崩れる。


「そうだ」


沈黙。


ローザは泣いた。


「私の悲しみは」


「お前の半分にも届かない」


そして彼女は言う。


「森に入れ」


六年ぶりだった。


少し後。


ローザが聞く。


「いつ死んだ?」


タイの声は詰まる。


「……言うな」


「もう耐えられない」


煙草を取り出す。


火をつける。


ローザは消す。


タイはまたつける。


また消される。


タイは睨む。


「もう一度消したら」


「殺す」


オーラが漏れる。


森が悲鳴を上げる。


ローザの頭が割れそうになる。


それでも言う。


「森が燃える」


タイは冷たく言う。


「なら試せ」


沈黙。


タイは森を出た。


ローザが聞く。


「どこへ行く」


タイは空を見る。


色のない空。


そして呟く。


「……分からない」


静かな声。


「たぶん」


「自殺する」


雨が降り始める。


彼は壊れた家に戻る。


膝をつく。


そして泣いた。


子供のように。


笑いながら。


泣きながら。


ミコが死んでから――


彼は一度も眠っていない。


眠ると夢に出るから。


タイは空を見る。


「こんな痛み」


「生きて感じるとは思わなかった」


静かな雨の中。


世界で一番強い男は。


ただの――


壊れた子供だった。


(第十一章の終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ