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未確認来訪者  作者: 1N0R1
第四章
50/50

羽音

怪物が大きな口を開く。

我々全員を飲み込む程に

「みんな逃げろ!」

大声で呼びかけるが、既に逃げ切れる距離ではない。

…なら一瞬でも、

覚悟を決め、大きな口の方へ向かう。

ほんの一瞬でも隙を作れば、

怪物がこちらに気を取られた。

まだだ、まだ引きつけるんだ。

大きな口から触手のような物が伸びる。

世界がゆっくりと流れる。

神が覚悟をする時間を与えたかのように

私の命と引き換えにみんなの命を守れるなら、

ゆっくりと触手が迫る

最期まで役に立てるなら、

「いきなさい」

そんな声と共にゆっくりだった世界が正常に流れ始める。

見上げれば人影が背を向けて触手に立ち向かっていた。

大きな口の呼吸を直で感じる。

再び大きな口へ向かう。

生き残る為に

暗い大きな口が目の前まで迫る。

地面も建物も、全てが崩れる音が次第に強く、小さくなる。

そして遂に、

暗闇と静寂に包まれた。

背中には微かに外の光が漏れ、そこら中に小さくても確かに鼓動が響いた。

鼓動だけを頼りに暗闇を進む。

……!

怪物の内側に四つの鼓動が響く。

1つは怪物の

1つは私の

1つは先程のあの人の

……

不安定な羽音が響く。

…近い!

咄嗟に構える

心臓と羽の音だけが鼓膜を震わせる

一体、何処に、

一瞬だけ羽音が止んだ。

その刹那、右腕に無数の歯が刺さった痛みが走る。

思わずそっちに気を取られた一瞬、真後ろで小さく羽音が鳴った。

触手を振り払い、振り向いた時には既に戦いの火蓋は切られていた。

空気を切る音が耳元に聞こえる。

少しずつ暗闇に慣れた目がその姿を映す。

そこには

私の耳元にまで伸びた腕に繋がる胴は羽を生やした人間と

その足元からは怪物の肉でできた檻が伸びる姿が映った。

右腕から少量の血が垂れる。

檻が羽を生やした人間を囲い始める。

耳元に伸ばした腕がゆっくりと胴の方へ戻る。

一滴の血が地面に落ちる。

その音に反応したかの様に檻が形を変え、隙間がなくなるように羽を生やした人間を覆った。

その姿が糸でできた繭を彷彿とさせた。

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