第2話 「俺、まさかの推しVtuberになってました」
弱者の叫びが、俺の叫びが喉の奥からぎりぎり絞り出される。
「や、やめてよおおお……!」
その瞬間、視界がぐにゃりと白く滲んだ。
耳鳴り、心臓の鼓動、足元の感覚
ぜんぶが自分のものじゃない。
気づいたら、世界が別の角度で回転していた。
俺は、雨宮莉として目覚めた。
いや待て、どういうことだ。鏡に映るのは知らないはずの可愛い顔。
透き通る肌、きらきらの瞳、サラサラの髪。いやいやいやいや。
これは絶対俺じゃない。俺のスペックはもっとこう……暗い部屋でカビ臭い布団に包まるタイプなんだが!?
辺りを見渡すとヤドカリのように寄生していた俺の部屋は何処にもない。
「え……これ、俺……? 綺麗な部屋……ここどこ……」
声を出してみると、聞こえてきたのはアイドルみたいに甘く澄んだ声。
うわ、完全に本人。
でも頭の中は俺。暗黒面寄りの人間失格な俺。
試しに手を動かしてみる。
ほっそい!軽い!なんだこの指!ポッキーか!?
しかも爪がちゃんと整えられてて、俺のボロ爪とは次元が違う。
次に髪を触る。サラッ……ふわっ……シャンプーのCMかよ!
ちょっと待て、俺の頭皮の脂っぽさはどこ行った!
自分の意思で口を開くと、またもや天使みたいな声が響いた。
「こ、こんにちは……?」
え?可愛い。やばい、今俺、自分の声にキュンとしかけたんだが!?
いやいやいや、落ち着け。これは俺じゃなくて雨宮莉の声だ。そうだ、そうに決まってる。
でも、頭の中は完全に俺。
思考も感情も、弱者らしさ全開の俺だ。
……つまり
弱者の俺が、光り輝く彼女の中身になってしまった。
……どうすんだよこれ。




