第102話 「豚さんのお料理は難しいですわ」
その日の夜、ラミスはまた一人ベッドの中で考える。明日レティシア将軍率いる、二万の援軍がホースデール王国より到着する。
…………。
二日前、ヘルニア帝国の軍勢二千が攻めて来る前日の夜。ラミス達姉妹は、四人で集まり神々の力の事について話し合った。
…………。
しかし、これと言って。何も新しい情報を得る事は出来なかった。
分かった事は二つ。
姉ナコッタに宿る、神々の力について。
これは人の姿を消し、人を閉じ込めて守る力の様だ。あの後姉リンにもう一度使った所、見事に姉の姿は消え去り、姉の姿は術者本人のナコッタ以外見える事は無かった。
これは二、三十回は使える様だ。ただし使えるの対象は一人だけで、人間にしか使えない様である。試しに、そこらにある花瓶や食器、ケーキ等に使ってみたものの全く効果が現れなかった。
一応、後日攻めてきたヘルニア軍の兵士や豚にも試しに使ってみたのだが。やはり、豚が消える事は無かったのである。
ミルフィーに宿る、神々の力について。
もう一度試してみものの、やはりあの風の様な攻撃魔法が出る事は無かった。何故使える時と、使えない時があるのだろうか?そして、その条件とは?
以上、得られた情報はこれだけである。
しかし、書物には幻術と法術との記載がある。恐らくミルフィー同様、姉ナコッタも複数の神々の力を扱えるのではないのだろうか?
そして治った顔の傷。これも、神々の力の可能性であるかも知れない。
…………。
結局何も分からず仕舞いである。
翌朝、予定通りホースデール王国からの援軍が到着する。
「駆け付けるのが遅れ、大変申し訳ありません。姫様。このレティシア、我が祖国ツインデール公国を取り戻す為、身命を賭す覚悟にございます。」
ホースデール王国軍、総勢二万を率いるレティシア将軍が姉リンの元に向かい挨拶を始める。
「遅いわよー、待ちくたびれ……もが……。」
にっこりと微笑みながら、姉リンの口を塞ぐナコッタお姉様。
「久しぶりね、貴女に会えて嬉しいわ。レティシア。」
「お久しぶりでございます、ナコッタ姫。」
「そんなにかしこまらないで、レティシア。私達はお友達でしょう?」
レティシア将軍は、元ツインデール公国の候爵令嬢であり、ナコッタの友人でもあった。
レティシア将軍率いる二万の援軍を加え、ツインデール公国の兵力は三万近くまで膨れ上がる。
……三万。しかし、これだけ居ればあの豚王に勝てるのだろうか?
城に向かう途中の馬車の中、あの怪物の恐ろしが頭を過り不安に駆られるラミス。
…………。
「大丈夫ですか?……お姉様。」
不安そうなラミスを案じ、ミルフィーが心配し声をかける。
「……何でもありませんわ、ミルフィー。」
ラミスは気丈に、にこりと妹に微笑んだ。