テスト、サイクリング、それは青春の一ページ
「まっ、また負けた…………」
今朝、学校の掲示板で一年生から、三年生までの期末テストの順位が貼られた。全校生徒分だとさすがに長くなりすぎて見にくいといった理由でぼくらの中学校では、一位から五十位までの生徒が点数と一緒に貼られている。今回は中学校になってから初めて実技教科の筆記テストがあった。合計九科目。範囲もそれなりに広かった、花梨や駿英にはすまし込んだ態度をとっていた。だけど、裏では猛勉強した。今回こそ一位になるんだって……だけど結果は、
「わぁー、一点差まで追い込まれたのは初めてかも。やるね椿」
『中学一年生(合計九百点)
一位 八六四点 夏木 雪瓜
二位 八六三点 奈波 椿
︙
六位 七八八点 宮鳥 花梨
︙
十二位 七一二点 新田 真弓
︙
︙
五十位 五六三点 姫井 駿英』
…………一点差で雪瓜に負けたっ!! そんなことってあるの?!
「二人とも点数高すぎだよ~。わたし平均で八五点取ってるのに、六位だもん!」
「あのなぁ……、お前ら全員高すぎるんだよ! 俺なんて掲示板ギリギリだぞ!?」
「いや……、駿英はよく掲示板に乗れたわね……」
掲示板の結果を見てから、教室の中でみんなでわちゃわちゃと騒ぐ。運動部たちは、みんな赤点はなかったのだろう。今日は教室の後ろで元気に『かっとばせ! 漢たちの闘い』をやっている。よほど鬱憤がたまってたんだろうな。今日はやたらとホームランが出る。
「皆さん、まんべんなく点数がとれていて、尊敬します……。私は数学と理科がどうしてもだめで……」
「いやいや……それで七○○点超えてるの意味わからないから。あなたよっぽど他の教科が得意なのね」
「ぼくも数学と理科の点数がなかったら、真弓に負けちゃうよ。わからなところがあったらぼくたちで教えるよ」
「みなさん、ありがとうございます……」
「今度は掲示板の端は端でも、一番上に載ってやる!!」
こうして、一回目の期末テストは幕を閉じた。あと一点……その重みを改めて思い知ったテストだったな。そんなぼくは今――。
「――ここで休憩にしましょ」
「うん、ずいぶん遠くまで来たねー」
雪瓜と二人で、サイクリングをしていた。どうしてこうなったというと、話は祭りの二日目にさかのぼる――。
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ぼくたちは、趣味の話をしているうちに、お互い、自転車で遠くに行くのが好きだっていう共通点が見つかった。それで雪瓜に一緒にサイクリングに行かないかって、誘われた。もちろん、一人で漕ぐときにはない楽しみがあるのは知っているんだけど……。
ぼくは一回、彼女の誘いを断った。……はずなんだけど、テストの点数が高かった方が言うことを聞けばいいじゃないか、って海瞳さんに言われてそうすることにした。……あとから考えれば、未来を視れる力がある彼女がそう言ったんだからぼくが不利だってことはわかったんだけど、そのときのぼくは自信満々だったから了承しちゃったんだ……。その結果が一点差なんだから……次は絶対に勝ってやる!!
それで待ち合わせの時間になって、集合場所の駅まで行った。そこには、動きやすい服装に最低限の荷物を持った雪瓜がいた。雪瓜が使ってる自転車はエンデュランスロードって言われるロードバイクだ。対するぼくは……。
「椿って見かけによらないで……アグレッシブね」
ちゃりーん、と鳴るベル、いきなりお使いを頼まれても大丈夫な大きなかご、六段階までのギア、これらがぜーたくに使われているホームセンターで手軽に買える普通の自転車、それがぼくの愛車だ!
……これでぼくは往復で五十キロ漕いだことがある。でもそれは、一人でいくらでも時間をかけて良かったからできたこと。雪瓜みたいに本格的な自転車を持っている人と、一緒に行くのは申し訳ない気持ちになる。だから、サイクリングの誘いも断ったんだけど……。雪瓜はそんなことはまるで気にしていないようだった。
「それじゃあ行くわよ。準備は良いんでしょうね?」
「う、うん」
それだけ言うと、彼女は自転車に跨って、目的地に向かい始めた。
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いまは目的地までちょうど半分くらいの場所。時間も予定通りだ。
「それにしてもその自転車でよく、あたしのペースについて来れるわね」
ドリンクホルダーからサイクルボトルを取りおいしそうに水分補給をしている。ぼくは、いろんなものを詰め込んだリュックをかごから取り出し、水筒を手にもつ。あぁ、熱がこもった手が冷やされていく……。
「だって雪瓜が後方を確認して、スピードを抑えたりしてくれてるんだもん。それに、雪瓜のつけてる香水かな……それがすごくいい匂いでさ、なんかやる気出るんだよね」
そう言うと、雪瓜はそっぽを向いた。サイクルボトルを戻してるのかな……?
小さな声で彼女から聞こえてきたのは
「………………ばか」
の一言だけだった。
休憩を終えてぼくたちは目的地まで自転車を漕ぎ始める。あの香水の匂いどこかで――。
(そうだっ! 祭りのときに安居院さんがみんなに渡していた新発売のやつだ!!)
安居院さんは、八月から発売する香水の試供品をみんなに渡していた。姉は『【シープ社】の新しい香水だぁ!!』って大喜びしていたし、花梨も真弓さんも安居院さんにお礼を言ってた。ただあの場で海瞳さんだけは困ったような顔をしてたけど。匂いに対しては、自分が予測できないから海瞳さんも対応がしにくいのだろう。
雪瓜は……みんなと同じように安居院さんにお礼を言って、大事そうにポケットにしまってたはず……サイクリングで使ってもよかったのかな? そんなことを考えていると、前の方から鼻歌が聞こえてくる。雪瓜の声だ。自転車を乗ってるときって後ろからの声は届きにくいけど、前からの声って、結構聞こえるんだよな。聞こえてることを言った方が……いや、楽しんでいるみたいだし伝えなくていいや。つい最近まで話したことがなかった彼女と二人でサイクリングをしているのはビックリだけど、お互い楽しんでいるし悪くないな。
――あぁ、きっと今日もいい一日になるな!
【作者の後書き】
こんにちは。ずいぶんお久しぶりです。作者です。まずはここまで読んでくださった皆さまにお礼を。
この作品は中学生の男女がたくさん出てきます。彼ら一人一人にそれぞれの人生があります。皆さまやボクが見れるのは、彼らの青春の一瞬だけです。残念ですけど、全部を書けるほど彼らの人生は薄くないんです。ごめんなさい。
中学から始まった彼らの物語は初めてにしては結構ぶっ飛んだことが起きましたね。公園で発見された謎の死体。夜の図書館から脱出。掲示板の謎。祭りの中での争奪戦などなど……。これがはじまりにすぎないのが恐ろしいです。今回出てきた登場人物の多くは次の物語からも出演します。早くても、来年の12月から書き始めます。皆さん忘れないようにブックマークをお願いします!
あと評価もしていただけると幸いです……。
さてここからはちょっと小噺を。
一回完結させた作品の続きを足すのはどうなのかなぁって思いましたけど、すいません、入れさせてください。ここまで書いておかないと次の話でないように齟齬が出てしまうんです……。そのかわり、これ以上話を足したり、編集を加えることはないので是非じっくり読んでください。まだまだ解決されていない謎は、これから新しいキャラクターが出てくるたびに解決したり、増えたりします……。飽きることのない小説が作れるようにこれからも頑張ります。
それでは皆さま。次の後書きでお会いしましょう!




