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七月十四日(金) 午後四時半 裏山

 山の中に入ると、まずハイキングコースがかかれている看板が設置されていた。地図もついていてわかりやすい。そのなかに鳥居のマークがあった。きっと、地図帳で見つけた神社とおなじものだろう。ほかにマークやなにかがあることを示すシンボルはなかった。

そういえば、裏山に来い、って書かれていたけど、具体的な場所はわからないな。ぼくたちはどうしようか相談して、ひとまずその神社のところまで歩くことにした。


山に入って五分も歩けば、もう周りは緑に囲まれる。市街地に比べて気温も低いしなだらかな道が続く。だれでも安心して登れる場所だ。……半そでできた駿英は蚊に刺されていてかゆそうだったけど、ちゃんとした服装だったらこれくらいの虫は気にならないな。

会話はお互いが何をもっているか確認する流れになっていた。


「――ってことは、そのかばんの中には水筒とスマホだけはいってるのか」


「うん、あんまり重いと登るのも大変だと思って。そういう駿英は何を持ってきたの?」


「オレは水筒とスマホに加えて、タオルとか塩飴とか…なんか部活みたいだな」


「しっかりしてるな。さすがサッカー部。今度の大会はいつあるの?」


「八月のはじめだな。まだ出れるかはわからないけどよ」


「そっか…。うちのクラスって他にサッカー部いたっけ?」


「二…いやオレを含めて三人か。他のクラスに比べると少ないんだよなー。でもみんないい奴らだ。そいつらに誘われて明日一緒に祭りに行くし。今から入部してもいいんだぜ?」


「いやいや、もうサッカーはいいかな。部活のサッカーって楽しいけど友達とやるようなゆるいものじゃないでしょ」


「まあな。オレは強いやつと戦いたいから部活のサッカー好きだけどな。まずは、フォワードでガンガン点を取れる選手になって、レギュラーになってやる!」


「試合に出るときは教えてくれよ。応援しに行くから」


「ぜっったいに来いよ!」


そんな話をしながら歩いていると、少し日が暮れてきた。山の中だからか、町中よりも早く光が届かないみたいだ。左側の斜面に生えている木々の隙間から、ぼくたちの中学校も見える。えーっと、中学校がみえるから……。ぼくは山の入り口で観た看板を思い出す。うん、もう少しで神社につくぞ。でも、ちょっと暗いのが不安だな。


「駿英って明りになるようなものもってる?」


「おう。前の図書館みたいなことが起こったときように懐中電灯は持ってきたぞ」


「さすがに、山の中で地下に入ることはないだろうけど。暗くなったら必要かもね」


「今度は神社の地下か……面白そうだぜ」


「さすがにないでしょ。……ん?」


冗談めいた会話のなかで生じた違和感はすぐさまなにか疑惑めいたものへと変化した。


「駿英、図書館の地下にいたときの明かりって誰の何だっけ?」


「たしかあのときはオレもつばきも持ってなくて、かりんのものだったよな…。そのときアイツが持ってたのはスマホだったはずだ」


「……そうだよね。ぼくたちは彼女の持ってたスマホの明かりで地下の道を進んだんだ。あのときはいろんなことがあってそこまで考えが回らなかったけど、今思えばおかしなことだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()?」


「たしかに…でも、かりんもおれたちと一緒でそこまで頭がまわってなかっただけなんじゃ……?」


「そう考えることもできると思う。暗闇の中で、なおかつあそこから抜け出す手段を考えないといけなかったから。でも、ぼくたちがハッチを見つけるまでに二十分近くあった。そのあいだ、持っていたスマートフォンに気が付かないのはおかしいと思わない? それに、彼女は地下に行くとき、すぐにスマートフォンを出した。でも、連絡用としてじゃなく明りとしてだ」


「……もしかしたら、かりんは地下室があることも閉じ込められた原因もわかっていたのか?」


「そこまではわからない。でも彼女は何かしら知ってるんだと思う」


ほかに図書館で花梨はどんなことをしてたっけ? あれ、彼女はいつ――?


 そんなことを考えながら歩いていると開けた場所に出た。その先には神社があることを示す看板がある。もう少しだ。するとそのとき後ろから、がさっと草をかき分けたときの音が聞こえた。後ろから誰かきてたのかな。ぼくたちは一度立ち止まって、音がした後ろに振り返る。そこには一人の少女が立っていた。彼女が散歩やハイキングで来ていないことだけはすぐにわかった。頭はうなだれており、表情は見えない。学生服から伸びた青白い手足は少し気味が悪かった。少女は止まったまま動かない。日暮れの山の中で異様な光景だった。


「まあ、つばき。あいつ誰だ?」


「わからない。……気味が悪いし先にすす――」


「みーつけた」


「「……え?」」


ぼくらの会話を遮るように少女の方から声がする。意味が分からず二人して立ち止まっていると


「ミィツケタァァ――――!!!!」


山の中で少女の怒声にも近い絶叫がひろがった。ヤバいっ!!

直感的にそう理解したぼくたちは、神社の方へと向き直し、全速力で走った。


「おいおいおいっ! 何なんだよアイツは!?」


「そんなことは後だ。とにかく逃げよう!!」


後ろを確認すると遠くから少女が走ってくるのが見えた。走るのはぼくたちより少し遅いくらい。だけどぼくはこの場所を知らないのから不利だ。それに神社まで彼女についてこられると怪文書の謎が解けないかもしれない。一体どうすれば……?


「なぁ、つばき。このさきに広場がある! そこで隠れてやり過ごそう!」


「―っ! わかった!」


久々の運動で身体が思うように動かなかったけどそれでも前を行く駿英のペースについていった。広場につく頃には全身が汗だくだった。ブランコや滑り台、砂場と住宅街にある公園と変わらないような遊具が置いてある。でも、大きさ的にもボクたちが隠れるには少し心もとない。ふたりして、広場の上のほうにある雑木林まで行き、大きな木の後ろに身を隠した。あとはもう、少女が来ないことと、見つからないことを祈るだけだ。

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