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身代わり女装がバレたのに「男同士でもいい」と言われました〜絶対無理なので全力拒絶中  作者: 水波瀬 凪


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10/21

【10話目】勉強を教えてくれる海斗の約束と恋愛感情としょうが焼き

早速今日から、海斗に家庭教師を頼んだ。


お礼は海斗の料理。


俺に料理を永遠に作っていい権利をあたえてやった。


「え、永遠ってそれ、プロポーズみたいだな」


海斗が勘違いして喜んでたけど、そういうことにしてやってもいいかってちょっと魔が差した。


隣の部屋からは、ダークな感じのメロディが漏れ聞こえてくる。


「なに聞いてんのかな?」


聞こえてくるのは「化け物」「暗闇」「燃えるゴミ」とか変な歌詞。


「ああ、黒セカオワじゃね?」


「なんだそれ」


「翠の趣味かな、ちょっとダークなやつ」


「えー翠ってあんな見た目キラキラして見えるのに」


とてもダークな音楽を聴きそうにみえない。


っていうか、珠里一緒に聴けるのか?


珠里なんかTikTokくらいしか見ないのに。


「好きなやつの好きなものを好きになろうってしてるんだろ」


翠の影響力すっげーんだな。


「海斗は、どんな音楽聴くの?」


ん? と参考書を見ていた海斗が、顔をこっちに向ける。


ちょっと見つめられて、なんかドキッとしてしまって目をそらす。


「俺はそうだな、特にこれってのはないけど、流行ってるのは聴いてみるかな」


そういって、陸は? と返される。


「うーん、音楽よりスポーツ見てるほうが楽しい」


「そうか、今度野球見に行くか?」


「うん、行きたい!」


海斗の父親の会社で、ドームの座席を確保してるんだってさ。


希望したら行けるんだって。


あんま詳しいことはわかんねーんだけど、そりゃ行きたいだろ!


「じゃあ、親父に聞いてみておくよ、それよりここ終わらせよう」


海斗は再び、参考書と問題集をペンの先で指して、


「ほら、良く読んで、そもそも陸、問題の意味って理解できてんの?」


読んでみてって言われたから声に出して読む。


「えー、えっくす、2,たす、かっこ、あ、Ⓐ…」


「陸、わかった。中学の因数分解からやり直そっか」


「俺さ、頭打たれ過ぎだからバカになったかも」


「は?」


「あ、剣道でさ」


「……よく高校受かったな」


そうだな、でも、海斗の高校みたいな偏差値高いとこじゃない。


試験さえ受ければ誰でも通るような、そういう学校だから。


ほんとは高校なんか、別に行きたくなかった、でも姉ちゃんが高校くらい出ておかないと就職できないっていうからさ、しょうがなく学費安そうなとこ探して入った。


「まあいい、とにかくこれからも教えるし、野球楽しみに頑張ろう」


「うん、ありがとう海斗」


海斗の教え方って、めちゃわかりやすかった。


「いつもそうやって海斗って覚えるんだな」


なるほど、コツがあったんだ?


俺、教科書丸暗記してた。


でも、数字が変わったら意味不明になってた。


中学の数学が理解できてくと、勝手にいまやってるところも、わかるようになってって、だんだん面白くなってきたんだ。


「なんかパズルみたい」


俺が喜ぶと、それを見た海斗も一緒になって喜んでくれるし、褒めてくれるんだ。


ほめられると、胸の奥の方が、じんわりあったかくなる。


こういう気持ちって、あんまり感じたことがなくって、ちょっと苦しい。


嬉しいのに苦しいって、変だよなぁ……。


でも、うれし泣きってあるし、それと似たようなものなのかも。



今日の分の勉強が終わって、海斗が夜ご飯の準備を始めた。


「今日はなに?」


「豚肉のしょうが焼きにしようかなって思ってる」


「わ、肉だ肉! 俺、好きだよしょうが焼き」


「明日から月曜だし、元気で頑張れるように、スタミナつけたいもんな」



海斗が玉ねぎ切ってたら、珠里が部屋から出てきてキッチンに並んだ。


「わたし、なにすればいい?」


お、また珠里が料理やる気だな。


「野菜サラダ、作ってくれる?」


「はーい、まかせといて」


まかせて大丈夫なのか? と思って様子をうかがってたら、ちゃんと作れててびっくりだ。


「ゆでたまごも欲しいな」


翠も部屋から出てきて、珠里に言ってる。


「やだ、ゆでたまごだって、翠くんかわいい」


いちゃいちゃしてる。


ほんと、人ってわかんねーもんだな。


いや、恋愛感情が?


翠と珠里見てても、普通に普通の彼氏彼女に見えるもん。


まえに海斗が言ってたとおり。


性的対象って、恋愛感情により関係なくなるってこと?


ふたり、もう、そういうこと、したのかな。


夜の妄想をうっかりしてしまい、慌てて打ち消した。


友達のそういうの、想像するのってヤバいよな。


生々しいっていうかリアルすぎっていうか、なんかすみませんって気持ちになっちゃう。



海斗は、女の子とそういうことやりたくならない?


俺に勉強教えたり、料理したり、野球の約束したり。


それは楽しいことだけど、恋愛しなくて平気?


珠里たち見てたらやっぱり、恋愛したいなって、俺は思うんだけどな。



こっそり、珠里がつけた身長の線をチェックした。


「あ、また伸びてる」


珠里の身長はたぶん女の子の標準的だと思うんだ。


それを超えたら、俺だって!


勉強もできるようになって、身長も伸びればきっともっと、いまより選択肢が広がるんじゃないか?


「希望しかないな!」


期末さえ終われば夏休みだ。

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