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この異世界でかりそめの君と〜最悪の悪魔になった幼馴染を元に戻すため、僕は彼女と世界を壊す旅に出る〜  作者: 鳴尾リョウ


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第9話 獣なら一嚙み

 次の日はしばらく歩いた疲れが出たのか、昼前くらいまで眠ってしまった。ダリアはというと、しっかり朝起きて、朝食をいただいたという。代金を払おうとしたが、トワルさんに「サービスです」と断られてしまった。


 意外なことにダリアは、フィルと仲良くなっていた。


 トワルさんによると、朝食を食べた後、遠くから見ていたフィルをダリアが、「ひまだから、構ってやる」と手招きしたそうだ。そこから、僕が来るまで二人で過ごしていたらしい。


 今はと言うと、フィルが部屋から持ってきたであろう、ぬいぐるみで遊んでいる。


「この子の名前はキューちゃんっていうの」


 フィルは手に持っているリスのぬいぐるみを、ダリアに見せつけるようにして言った。


「キューちゃん? 変な名前だな。リスはそんな風に鳴くのか?」


「わかんない」


「適当だな」


「いいの、かわいいから」


「ふん、そんな奴じゃ獣なら一嚙みだぞ」


 少し離れたところから二人の様子を見ていた僕に、ようやく気付いたのか、ダリアは「昼飯に行くぞ」と言いながら、近寄ってきた。


 僕は朝昼兼用の、ダリアは昼用のごはんを食べるために、僕たちはトワルさんから店を聞き、二人で出かけようとしたところで、「あたしも行く」とフィルがついてきた。


 トワルさんの様子をうかがうと、申し訳なさそうな顔をしていたが、僕に向かって「お願いしてもいいですか」と尋ねた。「もちろん」と返事をすると、彼女はフィルにお金を渡し、「いい子にするのよ」と頭をなでた。


 三人で外に出ると、昨日までの天気と異なり、今にも雨が降ってきそうな程、空がどんよりとしている。雨が降る前に急いだほうが良さそうだ。


 村はそんなに大きくなかったので、すぐに目的の店は見つかった。


 中に入ると、「いらっしゃいませ。何をお求めですか」と人の良さそうな女性が話しかけてきた。


 店内を見ると、野菜や果物などの食材が台の上にたくさん載せられている。聞いていた通り、ここは村の住人の食を支えているらしい。


「あの、何かお昼ごはんに食べられるものはありますか?」と尋ねると、


「それなら、サンドイッチか揚げパンはどうですか」と木の皿に置いてあるパンをおすすめしてくれた。


 サンドイッチを見ると、ハムとチーズが入っているものと、ジャムが塗ってあるものがあった。一方、揚げパンはというと、こんがり揚がったパンに、砂糖がまぶしてある。


 悩んだ結果、揚げパンにすることにして、店員にお金を払った。


 ダリアとフィルにどれを食べるか尋ねようとしたところで、僕の後方の二人を見た店員が慌てた様子で大声を出した。


「ちょっと、お客さん! 食べるのはお金を払ってからにしてください!」


 僕は驚きながら二人の方を見ると、ダリアが勝手にサンドイッチを食べていた。


「うん? どうせ金を払うんだから、先に食べても構わんだろう」


 自分の行動を悪びれる様子もなく、そんな風に言うダリアを申し訳なく思い、


「すみません、僕からきつく言っておきますから!」と必死に謝り、ダリアが食べた分とフィルが食べる分の代金を払い、パンを受け取ると僕たちはそそくさと店を出た。


「はあ、びっくりした」


「何をそんなに慌てている。もう少しパンを食いたかったのに」


 僕の様子もどこ吹く風という態度のダリアに、思わずパンの袋を持っていた手に力が入る。


「あのねえ、誰のせいだと思ってるんだ! 商品はお金を払ってから受け取る。当たり前だろ!」


「ふん、そんなことは知るか!」


 興奮してきた僕はさらに言葉を続けようとしたが、僕たちの話を聞いていたフィルが間に入ってきた。


「けんかしないで!」


 今にも泣きだしそうな顔をしながら、必死に訴えるフィルを見て、僕たちは冷静になった。


「ごめんね、もうけんかしないよ。ダリアも、今度からは先にお金を払ってくれればそれでいいから」


 ダリアは何か言いたげだったが、結局、「わかった」とだけ返事をした。


 その後、フィルがおなかが空いていると思い、僕たちは木でできた長椅子に腰掛けて、パンを食べた。ジャムパンを口に運ぶフィルは、元気を取り戻してくれたらしい。


 僕は持っていた揚げパンを半分にちぎり、ダリアに渡した。一瞬驚いたようだったが、無言で受け取り、すぐに口に入れる。


 食べ終わったところで、だんだん雨が降り始めた。


 急いで宿に帰ろうとしていると、正面に数人、身なりが良くない男たちが立っていた。



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