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この異世界でかりそめの君と〜最悪の悪魔になった幼馴染を元に戻すため、僕は彼女と世界を壊す旅に出る〜  作者: 鳴尾リョウ


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第1話 悪魔封印

 きっと魔が差したんだろう。僕はこれから悪魔に魂を売ることにした。


 背負っているシズクの体が冷たくなっていく。傷が深く、血が止まらない。不安で押しつぶされそうになるが、それをかき消すように僕は必死に足を動かす。悪魔が封印されているという大樹までの道は、木の根や石が多く走りにくい。「大丈夫。きっと、大丈夫だ」と自分に言い聞かせる。


 森の中はいつもの穏やかな様子とは異なり、緊張感が漂い、まるで僕を拒絶している気がした。目的地の大樹までたどり着いたが、聞いていた通り、内部に入るには入口の結界を破壊する必要がある。


 僕は大樹の傍らに供えられている、石で作られた怪しげな玉に手をかざし、意識を手のひらに集中させ、力を込める。すると、手のひらに電気が流れたような痛みを感じた後、大樹の幹に大きな穴が空き、内部への入り口が現れた。


 こんな力、必要ないと思っていたのに皮肉なもんだ。何かを守るのではなく、壊す力。それでも、シズクを助けるためなら利用してやる。


 中に入ると大きな空洞になっており、外側から見るより広く感じた。呼吸すると、そこに留まっていた時間が体の中に入ってくるようで、何だか息苦しい。薄暗い幹の中心には、異質さを感じさせる巨大な結晶が供えられていた。


 鮮血の様な巨大な炎。まるで自分を閉じ込めている大樹を、内部から焼き尽くしてやろうとしているような。目の前にある結晶は、僕にそんな恐ろしさを感じさせた。


 間違いない、これだ。これに悪魔は封印されている。言い伝えでは、悪魔の封印を解いた者は一つだけ願いを叶えてもらえるはずだ。もちろん、そんなことは誰も信じていなかったが。千年以上昔に世界を滅ぼしかけた悪魔が、封印間際、苦し紛れに口にした出まかせだというのが現代では有力とされている。


 しかし、今の僕はそんな馬鹿みたいな話でもすがらざるをえないのだ。悪魔が人間の願いを叶えるはずがない。それに封印が解けたら、もう一度世界を滅ぼそうとするに違いない。そんなことはわかっている。でも、もうこれしか方法はない。


 背負っていたシズクを離れた場所に優しく下ろし、僕は結晶に手をあてる。手のひらに力を込め始めると、痛みと共に結晶が赤く光り始めた。しかし、壊れる様子はない。頼む。頼む。大事な人なんだ。たとえ世界を滅ぼすことになっても、もう一度君と話がしたい。だから、


「壊れろ!」


 その言葉に呼応したように、空間に響き渡る音を立てて結晶は壊れた。すると、辺りの空気がいっそう重々しくなった気がした。


「……封印が解けたのか。貴様か、我を解放した馬鹿者は」


 壊れた結晶の辺りから、姿は見えないが声が聞こえる。


「そうだ、僕がお前を解放した。だから、願いを叶えてもらう」


 そう答えると、高らかな笑い声の後、


「願いを叶えるだと。ははは。まさか本気にする馬鹿者がいるとはな。いいだろう、言ってみろ」


 やはり、悪魔が願いを叶えるはずがないのか。でも後には引けない。


「シズクを助けてくれ」


「シズク? ああ、そこに倒れている娘か。もう死ぬぞ?」


 声の主は愉快そうに言う。その声に怒りを感じるが他に方法が思いつかない。


「だからお前に頼んでるんだ」


「確かに、我ならその娘を助けることができる。その代わり、他の全てを滅ぼすことになるが、それでもいいのか?」


 いいわけないだろ。この世界ではたくさんの人々が、それぞれの暮らしを全力で守っている。家族、友人、恋人。人によって大切なものは違うが、そのどれもが尊い。そんなかけがえのないものを壊していいはずがない。それでも僕は断言する。


「かまわない。彼女ともう一度話すことが出来るなら、僕は世界の敵になる」


 声の主は再び大声で笑った。


「馬鹿は馬鹿でも大馬鹿者だったか。……気に入った、その願いを叶えよう」


 その言葉と共に辺りが閃光で見えなくなった。何が起こるんだ。一瞬の後、周りを見回すと特に変化がない。どういうことだ。何も変わっていないじゃないか。……いや、倒れていたシズクがいない。


「ここだ」


 背筋が冷えて、後ろを振り返るとそこに彼女は立っていた。


「傷が治ってる! 良かった、本当に。……シズク?」


 違う。シズクじゃない。美しい銀髪を含め、外見は同じでも明らかに違う。だって、彼女はこんなに邪悪な笑い方はしない。


「……お前は誰だ」


 彼女は僕を馬鹿にするように、必要以上に仰々しい態度で自己紹介をした。


「挨拶がまだだったな。我はダリア。貴様と共に世界を滅ぼす悪魔だよ」



読んでいただきありがとうございます!


こちらの作品も掲載しておりますので、読みやすい小説をお探しの方はぜひ!

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