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舞台裏
夕方の喫茶店。かすかな光のもれるカーテンの端から、外を覗いた。二車線の車道を挟んだ向こう側に若い男女が何か思いつめた様子で話し込んでいる。
「もうすぐ入ってくるよ」
膝立ちしていたソファーから降り、カウンターに腰かけている男に言う。男は立ち上がり、汚れ一つない黒いエプロンを着ながら店の照明を少し入れる。
「大学生くらいの男女だよ。恋人同士っていう雰囲気もないけれど、距離は近づいてる感じ」
青年は無邪気に話しながら、カップの置かれたカウンターにつく。カウンターに入った男は「君の憶測は大体外れるからなあ」と悪戯っぽく笑う。
「この前も、カップルだって言ってた二人組はいとこ同士だったでしょ」
「いとこは難しいよ。それよりさ、今回こそはミステリアスな雰囲気でいたいんだ。何かを知っているような、隠しているような、そんな感じ」
「まあ、やってみればいいんじゃない」
男はエプロンの紐を結びなおしながら、扉の方を気にする。外からは若い男女の声が近づいてくる。男と青年は目を合わせ、それぞれの役に入り込む。男はカップを拭き、青年は思案顔を作ってみる。
ドアにとりつけてある鈴が音をたてて、店内の静かさを破る。




