シュタイナー伯爵 ロンサール侯爵夫人 4
強かな女性、ロンサール侯爵夫人です。
頭が切れて、必要とあれば息子さえ罠に嵌める。それも、本人の行動によって結果が出るという類の、用意周到さ。
あまり、敵には回したくないタイプの女性ですね~。
「父上に愛情があっても、その方針にも、侯爵家に莫大な利益を齎すはずの婚約にも反対。ご自分で全てを掌握したいのかと思えば、それも違う。だとすると、残るは、私の婚約自体、つまり婚約者に不満がある、と考えるのは、さほど不自然ではないと思いますが」
侯爵夫人は、沈黙する。アマンダに不満を持ったことなど、一度もない。独特の感性と発想には、いつも感心させられたし、女性特有の陰湿さを、全く持たない彼女と話をするのは心地よかったから、つい否定したが、こんな流れになるのなら嫌いだと言うべきだった。
答えない母に、最後の質問をする。
「ああ、もう一つ可能性がありましたね。母上と伯爵夫人が謀ったのか、それとも」
意味ありげに言葉を切って、続ける。
「彼女と三人で決めたことと考えることもできますね」
「彼女を貶めるのはおやめなさい」
「では、本当のことを話してください」
この息子を誤魔化せるなら、どんな口実でも使うつもりだったが、アマンダに濡れ衣を着せることはできなかった。セルマンが本気でそう思っていないことはわかってはいたが、流石に肯定する気にはなれない。
誰が知るわけでもなくても、それをしてしまったら、一生後ろめたさにつき纏われる。自分に嘘を吐き通すことのできる人間など、どこにも存在しないのだから。
「黙っているからには、理由があると考えたことは?」
「ありますよ。必要とあれば、その理由とやらも知りたいくらいです」
ロンサール侯爵夫人は、いつになく、疲れたようなため息を吐いた。
「わたくしが侯爵と結婚する時の契約は、子供を二人産むこと。それも、一人は後継ぎとなる健康な男の子であること」
「契約ですか」
「約束、と銘打った契約ね。当然でしょう?それと、後からもう一つ付け加えた条件があるわ。それは、ロンサール侯爵家、カーライル伯爵家に関する全ての権利は、わたくしたちの子供が受け継ぐこと」
「・・・・・・まあ、ごく一般的ですね」
上流階級の婚姻は、家の存続と発展を条件に結ばれる。婚約が打診された時点で、それを念頭に置いて交渉、折り合いをつけて成立するのが普通だ。
父母のように後継ぎ同士であれば、家の後継をどうするか、親戚から養子をとるか、二人の子供にするかの二択になり、子供に継がせることは珍しくはない。セルマンには二人の弟がいるので、約束は履行されたとみてよいだろう。
ただし、弟たちは、カーライル伯爵家の当主となるには、些か役者不足の感が否めないうえに、二人の実力は団栗の背比べ。そのため、現状では完全に独立させるのは得策ではないと見て、適当な貴族家に婿入りし、いずれは宮廷の上級文官として出仕、というのが当初の予定で、今回の婚約解消により、それは決定となった。
だから、セルマンは、母の言葉をさほど深く考えずに肯定したのだ―――――次の発言が理解できるまでは。
「そうね。だから、全ての権利を継ぐのは、貴方しかいないのよ」
結構な爆弾宣言をくらったセルマン。
一瞬、意味が解らず、言葉がゲシュタルト崩壊状態です。
真実まで、あと一歩。 頑張れ!
彼は、作者の中では結構不憫キャラなので、つい応援してしまいます (;^_^A
そろそろ伏線回収です。よろしかったら、ご感想くださいませ。




