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埋蔵金の行方(2)

一足早く八王子に帰る酒匂

風人は次の公演地である那須塩原へ向かおうとするが.....

「リョーコを離すなよ」

「はい」

レンタカーに乗り込んだ酒匂は鹿児島空港へ向かった。

「真木さんと真木さんのお母様はどうなさるんです?」

「飛行機のチケット、帰りの便を伸ばすことが出来たから、今から指宿に行って一泊。その前に曽木の滝で友達と落ち合うんだけどね。美女三人で砂蒸し温泉よ」

「仕事は大丈夫なんですか?」

「ここ何日かは仕事してたみたいなものだって、伊佐警察署の署長がうちの署長に連絡してくれてね。追加でお休み貰えたの」

「良かったですね」

「日花君はどうするのよ?」

「僕は今から姉と一緒に軽キャンパーで国道3号線を北に上がり、ゆっくり那須塩原へ向かいます」

「その前に、曽木の滝寄って行けば?」

真木はにこにこ笑いながら風人を誘った、

風人は一瞬考えたあと、

「そうですね。昨日はゆっくり見ることが出来なかったし、発電所遺構もまだ見てないですしね」

真木親子のレンタカーと風人の軽キャンパーは曽木の滝へ向かった。


リョーコを抱いた風人と、車いすの律子、それを押す真木が曽木の滝の遊歩道を歩き、岩盤をくり抜いたトンネルをくぐった。湿った古い土のにおいがした。

「この隧道跡は、昔の発電所に水を運ぶ水路だったそうですね」

「観光ガイドブックで読んだのだけど、隧道の向こう側から、思いがけず好きな人が現れたら恋が叶うんだって。素敵な男性現れないかしら」

「栄子、人生そんな都合よくないですよ。ちゃんと地道に出会いをもたないと」

「はーい、お母様」

 隧道の向こうから、髪の長い女性がこちらを向いて手を振っている。

どうやら、真木と知り合いのようだ。

その女性が近づいてきた。

大原響子だった。

「響子さん?」

風人の頬に朱が差した。

真木が待ち合わせしていた友人というのは、響子だったのだ。


「いやあ、一時はどうなる事かと思いましたよ」

須田が古い木造家屋の居間で、初老の男が大きな湯飲みで焼酎のお湯割りを飲んでいた。

畳の上に分厚い屋久杉のテーブルがあり、上を見上げれば黒い煤けた梁がむき出しで、とても古い建物だということがわかる。

初老の男は新納正彦だった。

「赤木の奴が財宝を掘り当てるって忠元会を作った時には正直焦ったな」

苦笑いを浮かべながら、新納正彦は湯飲みに注がれた焼酎のお湯割りを飲み干した。

「叔父さんは、あの集まりが埋蔵金をどのようにして探すのか、調べるために入会したんですもんね」

新納が飲み干した湯飲みに須田がお湯を注ぎ、そして焼酎を注いだ。お湯割りを作っている。

「出資金詐欺だとわかってホッとしたよ」

「機械とか使って本気で探されたら、面倒な事になるところでしたね」

「出資金の3百万円はちょっと痛かったぞ」

「嫌だなあ。ちゃんと補填したじゃないですか。あ、出資金がいくらか返ってきたら、その分徴収しますからね」

「ちっ」

新納は苦笑いを浮かべた。

「寺島さんの娘さんの口座に1億円、無事に振り込まれたんだな?」

「はい。取引先のアメリカの銀行から振り込みました。でも良かったんですか?結構な額ですよ」

「寺島家はその昔、新納家の家臣だったんだよ。その家臣の末裔が、新納の宝をわがものにせんとする悪漢を命をかけて退治し、娘の命を救おうとしたんだ。それに」

「それに?」

「あるかもしれないという軍資金が、実は嘘だったと。これ以上ないカモフラージュをしてくれた」

「金塊の三分の一は、まだ洞穴の中ですもんね。アメリカの銀行に預けているのは現金化した分で」

「俺の姉さん、お前の母親も亡くなって、新納の血を引くのは俺とお前だけになってしまったな。俺が死んだら、この埋蔵金はお前が全部管理するんだぞ」

「いやだなあ、今でも重圧に押しつぶられそうなのに」

と言いながら、須田は相変わらず飄々とした表情で笑っている。

「まあ、俺たちが背負った業だからな」

新納が笑った。

「業と言えば、あの腹話術師の青年も大きな豪を背負っているように見えました」


新納は湯飲みをテーブルの上に置くと、テーブルの横の畳の縁を押した。

ガコンと機械音がして、畳が床に落ち込み、RPGゲームのダンジョンのような階段の入り口が現れた。

かなり急な階段だ。

「さて、今日も巡視だ」

新納が階段を下っていく。

「こんなところ、誰も気付きませんって」

須田がしかめ面をして新納のあとをついて階段を下る。

新納と須田は長い階段を降り、地下に大きくあいた洞穴に着き、石を敷き詰めた洞穴にある黒く古い鉄格子をあけた。

そこにはおびただしい量の金塊が―――



人吉・伊佐編はこれにて終幕です。

風人は次の舞台となる那須塩原へ向かいます。

「那須塩原編」は春過ぎに連載いたしますので

よろしくお願いいたします。


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