表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された魔女の私、奴隷の堕天使を買ったら無双し放題だった  作者: 紫煌 みこと
第2章 堕天使の復讐 女神へのざまぁ
20/20

第20話「2人が選び取ったもの」


 リタが、ものすごい大きさの魔力を溜め込んだ。

 魔法を研究し続けてきた私でも、その魔法の正体はわからなかった。人間がかかわれない、天で生まれた者によるエネルギー源なのだろう。


 リタがそれを放った瞬間、神玉の間に凄まじい衝撃波が起こった。


「きゃあっ」


 どういう威力なのよ!! 今までの雷魔法とかと段違いなんだけど!!

 被害までは受けていないけれど、他の天使たちも圧力でふっ飛ばされてるよ!


「これで終わりにする」


 リタは片手で、地上にいる際に何度も使った雷の槍を生み出した。

 それを握り、衝撃波の中心に、自ら突っ込んだ。


「リタ!!」


 大丈夫なの!? 自爆とかしないでよ!?


「よし、俺らも続くぜ!」


 起き上がった天使たちが、遠くから遠距離の魔法を連発している。

 ――こんな総攻撃を喰らって、女神はどうなったのか……





「……決着がついたぞ、ミラル」


 やがて砂埃の中から、リタが姿を現す。

 床に倒れ伏していたのは――ぐったりとした女神レナスだった。




「なぜじゃ……なぜ突然、お主らは人が変わったようにわらわを……」


 レナスは腕を立てて必死に体を起こしながら、周囲の全員を睨む。


「卑怯じゃぞ、一対多数で。これは一方的な虐げじゃ! 全員許さぬぞ、わらわに何か不満でもあるのか!!」

「不満しかねぇぞ!」


 天使たちが口々に言いだす。


「いつも気が変わったらすぐに命令を変えやがって!」

「私たち天使がどれくらい苦労してきたと思ってるの!」

「人が変わってなんかいねぇ……俺たちは普段から苛立ってたんだ!」

「地上にいる人たちの切実な祈り、ちゃんとまともに聞いてるの?」


 周囲のあちこちから文句が飛び交ってる。レナスってば、神の威厳が吹き飛んで泣きそうになってるじゃん。


「わ……わらわは嫌われてたのか……? それでも、こんな酷いことはないのじゃ……」


 ……なんだか少し可哀そうになってくる。

 あぁもう、子どもみたいな見た目しているのが悪いのよ!!


 するとリタが突然、レナスの肩をポンと叩いた。


「同情を誘うような真似はよせ」

「……なんじゃと?」

「俺を天界から堕とした時だって、お前は俺に裏切られるのが怖いって、偽りの怯えを見せていただろ」


 ……そういえば、女神は故意にリタを天界から堕としたのか。

 それでやっぱり回収するなんて、何度思い返しても理不尽すぎるし!


 天使たちが顔を見合わせている。

 レナスは、青ざめた様子でリタを見上げた。


「なっ、余計なことを――」

「……許される行為をしていると思うな」

「私も……あなたのせいで、人々の思いも無視され続けてるんだし」

「……くぅぅ!!」


 レナスは大声を上げて飛び起きた。

 リタ含め、他の天使たちはレナスから距離を取る。


「もう嫌じゃ! こんなところでやってられるか! わらわはもう……神なんかやってられえええん!!」


 突然叫び出したんだけど、この女神……。

 そう思った瞬間、レナスは神玉の間を思いっきり出ていき、廊下を走り出した。


 そして宮殿から飛び出すと、どこかへ飛んで行ってしまった。





「レナス……どっかいった……」

「もうあいつ、神やる気なさそうだよな……」


 しばらく、神玉の間に沈黙が走った。

 ……これ、どう反応したらいいやつだろうか。


 いや、私たちは神を倒すって決めてたのだ!

 リタを屁理屈と共に追い出して、その後も大勢を困らしていた元凶。反省の色すらも見られなかった。

 そんな奴がいなくなった! ひとまず喜ぶべきでしょ!


「みんな、暴君の神をぶっ飛ばしたし!!」


 私が叫んだ瞬間――天使たちが歓声を上げ始めた。


「うわああああああ!! レナスがいなくなった!!」

「俺たちやっと自由だああ」

「新しい上位天使が神になって、活気のある天界を築くべきだわ!!」


 彼らは感激の色を見せている。今までレナスの時代が何年続いていたのかはわからないが、厳しい支配を受けてきていたように見える。


 横を見ると、リタが静かに胸を撫でおろしていた。


「よかったよ、リタ! あいつざまぁみやがれって感じじゃん!」

「……そうだな」

「私さ、こんな場所に来ちゃったの感動なんだけど! リタはいつもここで暮らしていたんでしょ? いいなぁ~」


 私は宮殿の外に出て、広々とした空を見上げた。

 ……自分の足が、雲の上に乗っていることが驚きだ。青く澄んだ空の向こうには、星々が光る宇宙が広がっているのだろう。


「ほんと、何だったんだろあの神……。なんであんなのが神になってたの?」


 すると、傍にいた女性の天使が丁寧に答えてくれた。


「……数十年前に、前代の神様が彼女をひいきして、女神様になったのです。レナス様は神の座に座られた瞬間から、調子に乗り始め――」

「……あっ、最悪なパターンじゃんそれ」

「はい。私たちも彼女を恐れて手出しはできませんでしたが……みんなでかかるとこう、わりと呆気ないものなのですね」


 女性が微笑んでいる。

 すると廊下の方から、メゾンが歩いてきた。


「うっひゃあああ! マジかよ、さっきレナス様が出ていってたけど……本気でやっちまったのか!?」


 しかし、メゾンはどこか嬉しそうな様子だった。


「いや、俺はいいけどよ。人間を連れてきて罰されるの、嫌だっらからな」

「……えっ。メゾンさん、あなたがこの人間を連れてきたのですか?」

「ちょ、ちょっと! いいじゃんか、この子が俺らを救ってくれたんだしさぁ! あ、そうだ!」


 メゾンはリタを指さして言う。


「お前さ、天使に戻らねぇのか?」

「……?」

「ほら、レナス様がいなくなったからさ。奥を見ろよ」


 言われた通りに、私たちは神玉の間へと戻った。

 レナスが座っていたソファーの後ろに、地上が映っている水晶だとか、大きな宝石だとかが大量に置かれている。


「うわああ……! なにこれ最高! 研究に使っていいかな!」

「持って帰っちゃダメ」


 ちえっ。天界には干渉禁止か。


「これ、全部神具なんだけど。どれだったっけか……」

「これじゃなかったっけ?」

「いや、それは違う。多分こっちのやつよ」


 天使たちが道具を漁り出す。そして、白い宝石のようなものを取り出した。

 するとリタは、その石に見覚えがあるようだ。


「それは……俺が落とされたときにレナスが掲げていたものだ」

「あったあった! これ使うとさ、お前はきっと天使に戻れるぜ。お前のパワーすげぇからな。俺たち上位天使と混ざって仕事しようよな」

「……それはいいな」


 よかった。リタが嬉しそうな顔をしている。

 私はずっと、彼がこういう表情を浮かべることを願っていた。


「リタのやつ、前まではずっと無口だったから、こんな積極的な奴とは思ってなかったぜ……。えっと、人間のお嬢ちゃん!」

「……えっ、あ、私か」

「あんたは、えっと……」


 するとメゾンは、笑顔で私にこう続けて言った。



「……人間だから、地上に戻さねぇとだな。よし、俺が送ってってやるよ!」

「……あっ」



 その言葉で私は、現実を思い出した。



 ……そういえばそうだった。

 リタは天の国に帰れたし、私たちはここで終わりなんだ。

 仮でも一時でもない、本当のお別れ。私とリタは無関係になってしまう。リタは真っ白な天使になって、きっとこの人たちと一緒に、新たな天界を育てていくのだろう。


「……」


 リタは黙っている。

 ……そうね。最初は私、リタを天界に返すつもりでいたんだもの。当たり前だよね。




 でも……


(……なんで直前になって、寂しくなってくるんだろう……?)



 潔くさよならをするつもりだったのに。

 これも好きって感情から生まれている矛盾なのだろうか。

 だとしたら……この胸の思いは、すっごく迷惑だ。迷惑だけど……どこかむずがゆくて、暖かい。


「ねぇ、最後のわがまま言わせてよ」

「……え? なんだ?」


 全員が私を見つめる中で――私は、最大限の声を張り上げる。


「私っ――リタと離れたくない!!」





 その場に静寂が訪れる。


 腕がわなわなと震えてる。私、言っちゃったよ。胸の中に秘めていた、本当はずっと秘めていた思い――


 メゾンたちは顔を見合わせて、困ったような表情を浮かべていた。


「……いくら何でも、人間をこのまま天界に置いておくのはなぁ……。お嬢ちゃんの家族だって、心配しちゃうぜ?」

「いや、その必要はない」


 その会話に割り込んできたのは、今まで黙っていたリタだった。


「俺もひとつ、気が変わったことを言いたいのだが」

「……なんだ?」

「俺は――天界に戻らない。天使になんて、もはや戻る必要はなくなった」

「……は?」




 ……えっ?


 私は声に出さず、思わず目を丸くしてリタを見つめてしまった。

 他の天使たちも驚いているけれど――この場で一番びっくりしているのは、おそらく私だろう。

 天使に戻らないって……どういうこと? 堕天使のままでいるの?


 リタは私に歩み寄って、そっと私の肩に手を置いてきた。

 髪についた紫色の花が、ひらひらと風に吹かれて揺れている。


「おい……どういうことだよリタ」

「……案外、地上での景色が気に入っちまったからな。それに俺――ミラルが主人だから。勝手に離れられないんだ」


 リタが頭をかきながら、首をすくめている。


「あぁでも、手配書が残っている地上はまずいか?」

「……あれはレナス様の魔力を借りて作ったものだから、全部消えているはず……」

「そうか。だったらさほど問題はないな。俺を狙ってくる山賊みたいのはいるかもしれないが、その時その時で俺がフッ飛ばせばいい」


 ……まさか。

 リタ、私と一緒に地上に残るって言ってるの?


「俺はミラルが研究しているのを護衛するんだ。ロストみたいに邪魔してくる奴が出たりしないように。俺にとって一番は、お前の幸せだ」

「……」

「構わないか、ミラル」


 一片の曇りもない金色の瞳で、私のことを見つめてくる。

 ――こんなの、答えはひとつしかない。


「もちろんよ」


 私は力強い声で、そう頷いた。





「よし……」

「お、おい。何を勝手に話をつけてるんだお前ら?」


 背後から、メゾンが困惑した様子で私たちを見つめてきている。

 リタは彼らに背を向けて、胸の中にそっと私の体を抱き寄せてきた。


「わっ……」

「よし。逃げるか」

「え?」


 するとリタは突然――私の手を引き、自分の背中に乗せた。


「えっ!? え!?」


 何するの何するの!!

 理解が追いつかないでいると、リタが紫紺の翼を広々と開いた。


「天界から飛んで地上に降りる」

「えっ!! でも、上位天使じゃないと出入りはできないんじゃ……」

「……待って、やべぇ」


 口を開いたのは、顔を真っ青にしたメゾンだった。


「……俺、使ったゲートを開いたままだ」

「……よし。他の天使よりも先にゲートへ着けばいいな。行くぞっ!」

「待ってよ、リタっ――って、きゃあああああああ!!」



 次の瞬間、私が叫び終わるよりも早く、リタは神玉の間から飛び立っていた。

 今までの最高スピードで飛行し、あっという間に宮殿を飛び出していく。


「あいつら……逃げる気だぞ!! 追えええええ!!」


 メゾンが叫び、他の天使たちが追いかけてくる。

 それでもリタは一切気にすることなく、雲の上の青空を風のように飛んでいく。


「わああっ! メゾンよりも速いって!!」

「しっかり掴まってろよな」

「ちょっ……ねぇっ……!!」


 本当にしっかり掴まってないと、向かい風で簡単に飛ばされてしまいそうだ。

 私は必死に、リタの背中にしがみつく。



 (それでも――)


 私は彼に乗りながら思った。

 ――こんな日常が、まだまだきっと続いていくんだなって。

 好きって気持ちを互いに打ち明けられたからこその結果なのだと、私は今、すごくよかったっと思っている。



 でも、それはそれとして……


「速すぎるのよおおおお!! もともと高所恐怖症だったんだから!! やめてよおおおおお!!」

「待てごらあああ」


 天使たちが追いかけて、雲の上が賑わう。

 私を乗せたリタは、白く輝く流れ星のように、遥か空を飛んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ