36話
やっと投稿できたε-(´∀`*)ホッ
門の前に立派に携えられている2体のガーゴイル像。それはとても荘厳な造りであったがなぜか王都の騎士の駐留所には必ず門に設置してあった。
誰も気に留めるひとはいない。ということはこの像は精巧な作りの石像だがそれほど高価なものではないということだろうか。
「なあ。団長。この像って何なんだ?」
「よし。では君たちのことを信頼してこの国の機密情報を一個教えてあげよう。」
「き、機密情報!?」
「お、おれたちにも良いんですかい?」
「無論そうだ。」
通りの花壇に水を配布している小さな女の子がいたが、団長が挨拶をすると背中をむけ無視をした。
「君たちも20年ほど前、”薄明の天才魔術師【ラマヌジョン】”がこの地に訪れて開催した奇跡の夜は有名だから聞いたことはあるだろう?」
「まあ有名っすからなねえ。」
「ずいぶんと前ですけどおれたちの親の昔話にはよく出てきたもんですぜ。」
「おれも話だけなら。」とサタン。
あの時がこの国の全盛期と聞きますねとタイガーがボソリと呟きみんなはうなずいた。
「彼がこの地に貢献したのはなにも宴会芸だけではなかった。当時私の母が皇后になった祝いとして幼なじみであった彼は”平和を象徴する国境への結界”と一緒にこの国の治安維持のために作ってくれたテレポートができる祝福をうけた石碑がまさにこれなんだ。」
「百聞は一見に如かず、だ。この効果は故人を対象としておらず、文字通り中の施設ごと入れ替えることができる。」
入り口に踏み入れた瞬間、質素な作りの部屋が団長の職務室へと移り変わった。
壁に掛かるは歴代騎士団長の絵画。天井は突き抜けており、螺旋階段は仮眠室や浴場、書庫などへ繋がっているらしい。天井が見渡せないからには亜空間で空間が拡張されているからだそうだ。
壁を埋め尽くすかのような本棚には、各国の軍事情報や治安維持のための必要情報がまとめられた資料がたくさん収納されていたが、散乱しているように見えるのはここを管理していたひとがいなくなってしまったことと関係があるのかもしれない。
「とりあえず、座ってくれ。これから君たちとの契約について話そうと思う。」
ではここに目を通してサインをと言いながら各自へと書類を渡した。
「おれたちバカだからわかんねえんだけどよ~。団長がおれたちになにかするとは思えねえんだよ。」
「ははは・・・。だがしかしこういうのは形式だけでもしっかりしとかないといけないよ。どんなに良好な関係が続いていたとしてもひとは時に残酷になり得るし、永遠の絆が保証されているというわけでもない。だから自分の身を守る術をつけるのだ。まだ君たちは若い。だからこそここは慎重にするべきところだと今回で学んでくれると嬉しい。」
もちろん騙すつもりはない。だがこれは私という人間を信用してもらうためでもあるのだと団長は語った。
「おれはあんたを絶対に裏切らない。」
サタンは淡白に忠誠の言葉を告げ書類にサインをし真っ先に提出した。もちろんレインのぶんもである。兄貴がそう言うならおれたちだってとすぐに続こうとする2人の言動がシンクロしていた。
「な、なんだよお前はよ!?」
「そっちこそな! マネするんじゃねえ!」
ここしばらく静かだった室内に笑いが溢れていた。どこか懐かしさすら感じる。彼女といたときは笑いあうことは多くはなかったはずなのに。ふいに図書棚をみてみた。
書類を整理している彼女の後ろ姿が思い浮かべた。おれの視線に気付きなんですか殿下とでもいいたげに振り返る。
ああ。いつの間に彼女は私の大切な存在になっていたんだな。私は愚かだったのだ。
3人の新しい団員たちは目を離したすきに室内を物色していたようだ。
「団長~! これ凄いっすね! ハンモックも仮眠室もあるんですかい?」
「おい!? レインそんなにハンモック揺らすなよ? サタンの兄貴がちょ? やめ、あああああああ!」
ひとが床に落ちてもん絶した気配がした。もうなにも言うまい。もともと鼻つまみものの集まりだ。だが私は育った境遇が違うとはいえそんな彼らの輪の中にいれてもらえる、それが嬉しかった。
「ゴホンッ。ところでそろそろ見回りに出かけるぞ。ついて来い。なにかと入り用だと思うから買い物と用事は今日中にあらかた片付けるように。明日からまた忙しくなるだろうからな。」
道にでるといつものように仕事が山のように降りかかってくる。ひったくり犯を懲らしめたり、我が子が行方不明というご家族から捜索願いをすがられたりとだ。
この国は平和へと向かっている。だがまだみんなが安心してくらすにはまだほど遠い。やるべきこと、なすべきことは嵐のように突然やってくる。
「dṭp̣…ṣḍf pከወዐዘየደገጠጰጸፀፈ ፐ&#”?」
なにかレインがサタンの袖をひき尋ねている。
だが残念ながらここにいるだれもが彼女の言っていることが分からない。引っ張ってつれていかれた先はどうやらアクセサリーの露店である。
女性はやはり装飾品が好きなのだなと思っていたがどうやら雲行きが怪しくなってきた。彼女がサタンに買ってもらうのだろうかと思っていたがどうやら違うらしい。
露店の店主とサタンにやり取りをしてもらいなんとかお目当ての装飾品をゲットした彼女。手のひらを上から下に落とすジェスチャーをしている。
おいおいこれはレインお前にはサイズが合わないだろ。もう買ってしまった指輪をみていたサタンはふいにレインに地面に押し倒された。サタンをかばうように私と兄弟たちも駆け寄った。
「なっ???」
誰もが反応できないその瞬間。胸ぐらを捕まれ彼の上体を起こして彼女はどこか恥ずかしげな顔をしながらサタンの親指に指輪をつけようとした。
つんつんと押したって指輪は指に収まらなかった。つける指が違うからだ。不思議そうに首を傾げた彼女。
ふと気になり彼女の手もとをみてみると確かに人類よりは親指が気持ちぶんだけ細かった。これは種族ゆえの特性か・・・。はたまた彼女の個性なのか。
「愛されてますねえ。兄貴。ごちそうさまです。」「ラブラブっすねえ~。」
「まったくだ。一時はなにか争いごとになったのかと。」
当の本人は顔を真っ赤にしてレインをそっと抱きしめだまって立ち上がり露店に向かった。
ペアのデザインを探していたようだがなかったので真っ青なラピスラズリのハチドリの装飾がきめ細かな装飾がなされている指輪を買い、戻ってくるなり彼女の手をとり片膝をついて彼女の顔を見上げた。
【こ、これはプロポーズ来た~~~~!】
不思議そうな顔をする彼女の薬指に優しく指輪をはめたサタンは、いつもの粗野な感じが噓になるほど、優し気な雰囲気を醸し出している。
「愛していますよ。レイン」
「???」
「き、気にすることはないぞ。サタン。多分ふられたわけではなさそうだ。」
「あ、兄貴。おれたち2人のこと応援してますから!」
「見込みは十二分にあるので!大丈夫なず!」
まったく街中でお騒がせな2人だ。やじうまたちの黄色い視線にさらされながら、おれたちは武器屋や洋服などの調達を終えた。
騎士団本部にたどり着いたころにはもう夕焼けがまどから差し込んでいた。
「今日はお疲れ様。明日からまた頼んだ。」
4人と別れたあと私はいつも通っていた、あの人がいるカフェへと足を運んだ。
「お客さんなにか良いことあったでしょ?」
そういって気づかってくれた彼女の笑顔は相変わらず素敵であった。だがなにか昔の感情のように感じてしまう。
「ええ。実は・・・。」
そういって新たな仲間ができたことを惚気てしまうのだった。
読んでくれてありがとう♪ 後日談ですが・・・。魔女に魔族が男に装飾品を送るのはどういう意味か尋ねる手紙を出したサタン。ボクにそんなつまらないこと聞かないでくれ。そもそも知らないしと1時間しゃっくりが止まらない呪いにかかる手紙が返されてしまったそうですよ。




