35話
お久しぶりの投稿できました
石壁で張り巡らされたここを出る日が来るとは。しかも正面の入り口から堂々と。まったく人生とは数奇なものである。
おれはこれから仕えることになった彼を背中越しに眺めた。まったくあの後は大変な騒ぎだった。逃げ惑う群衆の避難の先導や、立場がある人物に怪我をさせてしまってまで庇わせてしまったことへの責任問題。
それはなかなか看板選手の放出を後押ししたものの、お騒がせだと言うのには違いなかった。
「犯人は確保した。サタンあの女性に見覚えはあるか? 供述をうけたのである程度の事態は把握できていると思っているが。君の口から聴かせて欲しい。」
「はい。おそらく彼女は噓をつかないでしょう。プライドの高い女性ですからね。ただ私怨による犯行で間違いないかと。」
「そうか。君も大変だったのだな。サタン。」
「いえ。ただこういう所にいる身分ですとお客からの要求は場合によっては身請けから命を差し出せというものまで文字通り何でもありですから。」
「兄貴・・・。」
「なにも言うな。おれたちが口をだす問題じゃないだろう。」
そう。おれは剣奴をしながらある高貴な女性に夜の相手として望まれていた。なにも珍しいことなどではない。一夜限りの相手もいれば通うものもいる。
おれはそれなりにスタジアムの運営側からも気に入られていたこともあり、特別措置として相棒が女性の場合はそういう事として舞台での戦闘以外のサービスは免除される。
それに反発を覚えた単独犯からの攻撃であったのが今回の事件の全貌という訳であるのだが。
「女の嫉妬って怖いよなあ。」
「ええ。ミルシカ島の美女はとんでもない美貌を誇っているというくらいみんなそろって良い女なのだがこういわれているそうです。情熱ゆえに愛ゆえに琴線に触れてしまったものは皆刺される・・・。と。」
お前らチンピラみたいな雰囲気なのに騎士の恰好はわりかしに合うな。おれも人のこと言えないが。大概だと思うぞ。
「・・・。」
何もしゃべらず彼女はただ後ろをついて来ていた。だからこそ気づけばおれは彼女のことが心配でつい目で追って探してしまうのかもしれない。
通りはまだ夜明けにはほど遠く街灯が点々と列をなして地面を照らしている。建物の狭間は真っ暗であり、皆があの騒ぎの後だというのに寝静まっているのだろう。
突然ジ・ジ・ジと異音がはしり街灯がぽつぽつと消え始め暗闇が近づいてくる。
「どうやら新たなお客様が来たらしいな。」
騎士団長さまが剣の柄に手を携えた。
「ご安心ください。やつらに敵意はありませんよ。」
「そのようだ。だが油断するわけにはいかない。何者だ!?」
「久しぶりだね。サタン? おやまた強くなったようだね。ボクは嬉しいよ。」
ねっとりとした猫なで声が耳を逆なでする。
「ふん。いつまで上からものを言うんだ。キティ。思ったより再会が遅くなったな?」
「誰がキティだ? ボクの名前は相棒だ。何度同じことを言わすんだい!」
「おいおいおいおい。待てよ。兄貴。まさかその人は!」
「マジかよ。新旧相棒そろうとか激アツなんですけど!」
お前ら息ぴったりだな。さては仲良しか。
「最近ここらでも派手に暴れているらしいな。闇組織が次々に潰されているそうじゃないか。」
「流石に情報通だねえ。しっかり情勢は把握している抜け目の無さは変わりないじゃん!?」
「それはおれがいてもいい話だろうな?場合によっては手加減できないぞ?」
「気安く触るな。ほら睨まれているぞ。」
「ふーん。なんだか珍しいやつがいるじゃん? まさか生き残りがいるなんてねえ。ねえ騎士団長!? 貴重な情報教えてあげるからさあ。私のことと今この場での会話は見逃してくれないかな? どうしてもっていうんなら相手になるけど、ボクこう見えてけっこう強いんだよねえ。ついでに言うと闇組織を派手に潰して回っているのはボクじゃないよ。」
それにと彼女は言葉を続けた。
「おまえひとの言葉が話せないだろう? みんなも不思議に思っていただろう。長い時を生きてきた私だから分かる。お前は・・・。亜人なんかではない。魔族だ。人間とはことなる存在だよ。要は精霊のようなものだ。」
「なんだって魔族だと!? 実在したのか?」
「だとしたらどうしてこんなとこにいるんだよ? 発見して聖都教会に情報知らせるだけで一生遊んで暮らせる懸賞金が手に入る。ここ1000年だれも見たことがないというのにだ。」
ああ。そうだなと魔女は怪しく笑った。その笑顔は美しく月明かりの下輝いており、つい男性陣は見惚れてしまった。
むむむぅ・・・。
サタンはレインにローキックをされ悶絶してしまった。だが彼の名誉のため誰も突っ込まなかった。
「団長おれは・・・。これからどうすれば良い?」
一瞬みんながレインの正体に浮かれてなごんだ空気が引き締まる。この国の治安方権の頂点。それに位置する彼のひと言でこの場は天国にも地獄にもなり得る。
「・・・。」
彼はすぐには話さなかった。その沈黙には重みがあり、誰も口を挟めそうもなかった。
「ひとまず話は持ち替えらせてもらおうか。ハハッ。心配するな。仲間には悪いようにはしない。それが我が騎士団のルールだ。」
「団長・・・。感謝する。」
「団長流石です。」
「団長勉強になります。」
げしっと頭をつかまれヘッドロックをされる2人。
「すみません兄貴!おれたちずっと武者修行ばっかりしてたから、こういうとき何いったらいいか分からなくて!」
「すみません、タイガーが! おれからも謝らせて下さい!」
「いや、お前もな!」
「お前も同じレベルだろうが。頑張ろうな。」
2人からすかさずツッコミをされてしまうディスティンであった。
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