34話
本当は連日投稿しようとしてたんですけど、なかなか仕上がり未熟で・・・ 書き直してました
「さあ、お集まりの皆さま、本日の主役はこの2人!! 正面から堂々と入場してきたのが、このスタジアム史上最強の男、【サタン・ゴールデュングス】、そしてその相方の【レイン】ひと月前に突如現れた超新星! 亜人のいっけんひ弱な瘦せ腕から放たれる剣筋は彗星のほうき星のごとく人々を魅了するーーーーー!!!」
うおおおおおおおおお! 我らがヒーローーーーー!! ヴィバ・マイ・ヒーローーーーー!
客席から空間が割れんばかりの歓声が溢れかえる。
「そして迎え撃つは各予選を突破してきた強豪コンビ、覆面のタイガー! 疾風剣のディスティン! 彼らは剣奴ではないもののこのスタジアムの絶対王者に挑戦するため・・・。何か月もの特訓と命をかけこの舞台へとたっています! さあ次こそは挑戦者たちの熱い想いが絶対王者を打ち崩すのか!? いやはや果たして王者は貫禄をもって露払いし、その地位を死守するのか? 毎度目が離せない注目のバトルです!!!」
「悪いがそろそろ引き釣り降ろさせてもらうぞ。」
「ああ。悪く思うなよ。おれたちはあんたに勝つのをずっと夢見てきたんだ。あの日・・・。あんたがこのスタジアムに降り立ったそうあの日から!」
「そうか。それは光栄だ。2人ともかなりの手練れだな。こちらも最初から全力を出さねば失礼だな。いくぞ。レイン。」
「GDJPFOKPkE??@Vmmm, עִבְרִית ʿĪvrīt,do ut des OTAS.!!!」
なにを言っているか分からないが・・・。やる気は十分なようである。このスタジアムの戦闘形式が2対2で良かった。
コイツとは殺し合わずにすむ。それだけでも嬉しかったというのに・・・。コイツときたらチラリと顔だけ振り返りおれの顔を見上げていた。ぶつかる視線に敵意はなく瞳にうつるのは信頼感のみ。
ああ。今日おれは死ぬわけにはいかないな。また明日同じ日を送りたい。よく分からないコイツのことをもっと知りたい。
以前相方だったキティや他の女たちとは違ってなぜこんなにも特別に思うのだろう。
気持ちの準備はすでにできていた。だが悲しいことに目の前の敵に注意力が向けられていたのが不幸の始まりだった。
スタジアムの灯りを霞ませるかのような閃光が瓶の中の液体が揺れたその瞬間、レインの顔やかすめて地面へと叩きつけられた。瓶の割れた鋭い音と同時に火炎と瓶の凶器と化した破片が無慈悲にも相棒を襲った。
「ふ、伏せろおおおおおお! こっちへ来い!! レインーーーー!!!」
どこから投擲されたのかなにが起きているのか、一瞬思考が乱れレインはとっさに反応できず肩と頬を切り刻まれてしまう。
「す、すまないレイン。かばえなかった。重傷だな。肩以外に怪我はないか。」
「T…III王,卍XMM///<<I>>,Φαιστός」
言葉が通じないのがもどかしい。命がかかっているかもしれないというのに。だが呼吸はまだしているし、脈は正常だ。
素早く抱き寄せた身体からどんどんと力が抜けていく。最後に脱力する瞬間、彼女の瞳が矢のようにおれを見据えた。しだいに目が虚ろになり気が遠くなっていく。
「お、おい!? 意識をしっかりするんだ! 死ぬぞ?」
「・・・。」
「なにが起きたんだ?」
「さあ、知らねえがおれたちもヤバそうだな。兄弟。」
「ああ。逃げるぞ。これは試合どころじゃねえ。」
チッ。このクソが。おれたちがこの日をどれほど・・・。レインというガキとサタンをみた。やつは女を安全な場所に避難しようとしているが。
熱波が周囲の空気を焼き付け続け、徐々にその熱がスタジアムの石を焦がし蜘蛛の巣状へと広がっていく。
どこにも安全な場所なんてねえ。
「おい? サタンさんよお? いいか? 戦争孤児だったおれの話を聞け。火災にあったらまずはどれだけ被害をうけたか確認するんだ。見えないところに傷があり、下手に動かしたら死ぬかもしれねえ。」
この男がおれを買うのか? いや、やつはレインが助かる情報をくれている。いったんあの事は忘れるしかない。
視界が炎に染まっていく。観客席にも火災は広がっているのだろう。まったく笑えるほどの阿鼻叫喚の四面楚歌だ。どうせ今日死ぬ覚悟もできていないような有象無象どもである。
「今一番気を付けなければいけねえのは、煙だ。サタンお前さんならなんなく耐えれるかもしれねえが。そこの亜人の嬢ちゃんには身体に毒だ。早急に今の状況から抜け出す必要があるのだが。どうしたものか。なにかいい考えはないか?」
「一つだけある。このスタジアムを空間ごと切り裂く。」
「な、なんと豪胆な。」
「こんな強固な建物を壊すっているのか? さ、さすがに冗談だよな?」
剣をかまえた。このおれが破壊不可能なことがあるとでも?
スウウ。。。ああ。ここまで集中したのは久しぶりだ。身体の筋肉の筋のあらゆるところからメキメキと音がする。
【静寂一閃《天音消刃》】
今にも必殺の剣が空間を切り裂く直前の瞬間、γ(ガンマ)の顔、そしてキティの顔が思い浮かんだ。
ー頼んだ、サタン…あいつの命がかかっているんだ
おれはいったいどうしたらよい?
衛兵の救助は間に合わない。スタジアムに張り巡らされている結界が悪さをし火が周るのが予想以上に早い。レインと有象無象の命など天秤にかけるまでもない。それだけは確かなのだが。
【縮閃刃《微周閃》】
ただ言い訳するように5mとおれたちだけの周囲の空間だけを切り裂いた。
クッ。だがこれだと。
「技の威力を抑えてくれたようだな? あとどれだけこの安全地は持ちそうなんだ?」
「マジで殺気がヤバいって! おれたちまで巻きこむなよ! この英雄が!」
「持ってあと10秒だろう・・・。時間がない。それよりもだ。クソっ。踏んだり蹴ったりだな。」
逃げ惑う観客の中にただ者ではない視線を感じとる。いや、あの方がなぜここに?
世間では悪名高いこの国の裏切り者の騎士団長様ではないか。彼のことは個人的には嫌いではない。
きっと何かしらの覚悟があって生きることを…敵側につくことを選んだのだと。
「つって。それどころじゃねえ。」
「ど、どうするんですか?兄貴?」
「ヤベえよみんな死じまうよ!」
「誰が兄貴だっっっ!!」
あ〜もう。うっとうしい。それどころじゃねえつうの!
「おれは、あんたに従う!なんでもする! だから助けてくれ!」
あらんかぎりの声で叫んだ。だから…。ここにいる人を助けてくれ。おれには壊すことしかできねえ。
だけど…。それだけじゃダメなんだ。レインが不幸になってしまう。もしこの世に神がいて、そのお導きでおれが未来を変えるチャンスを頂けたのだとしたら今ここで捨てるわけにはいかない。おれの直感がこの機会を逃すなと悲鳴をあげている。
「頼む! こいつらを見捨てないでくれ!」
腹のそこから喉が痙攣するほどの声を絞りだした。どうか、聞こえていてくれ。ああ。もうダメだ。炎がまわってきた。もうなにもかもおしまいなんだ。
一瞬やつと目が合った気がした。口を動かしなにか言っている気がする。いや待てやつはなにをしようとしている? 手になにか持っているようだ。あれは本なのか? そう思っているうちにおれたちは炎の波に飲まれていった。
【魔消の章・断切の呪手】
やつが石壁に触れると同時に強固な結界が一瞬にしてとけ、おれたちを覆っていた地獄の業火が天へと駆けていき、盛大な火柱がたった。
間一髪間に合ったようだ。全身が焼けただれるのを覚悟していたが、どうやら全員無事であるらしい。
10mもある石壁をやつは片腕を庇いながら飛び降りてきた。どうやら今の魔術の施行で腕がねじ曲がったらしい。指があらぬ方向に曲がり、爪は割れ出血し、二の腕からは肉を突き破り骨が飛び出している。
これだけの衝撃を片腕でさばいたのだ。おそらく犠牲になったのは利き腕の方だろう。
「助けてくれて感謝する。こいつらを救ってくれた恩は一生忘れねえ。」
「ではひとつ頼まれてくれるか。あるひとを探しているんだ。手伝ってくれ。」
立っているのもしんどそうな男はおれに下手くそな笑顔で言ってきやがった。
「仰せのままに騎士団長さま。」
「サタンだったな? 良い名前だ。おれのことは最後の者と。そう呼んでくれ。おれとともに来いサタン。」
そっと左手を差し出して跪いていたおれを立たせてくれた。
ああ。心配いらないよ。おれは両利きなんだと、下手くそな冗談を言いながら。
「こ、コイツらは・・・。」
「君たちもサタンについて来ると良い。騎士団は4名今日をもって君たちを歓迎する。」
4名・・・。レインもいいのか。本当にあなたってひとは。頭が上がらないな。
うひょ~。おれたち大出世! バカ2人がおれの背中に飛びついてきたので突き飛ばしてやった。
読んでくれてありがとう♪




