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ハッピーエンドの世界線~悪役令嬢処刑後のとある国の議事録~  作者: コカマキリ
二章 ヴァンパイア

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30/43

30話

2章完結です! 3章の構想あるにはあるのですが・・・。まだ書くかどうかは未定です。機会があればあの丘の上のカフェに遊びにくる王子(第一部の登場人物)が主人公の物語になるかもです。いったん完結とさせていただきますm(__)m




今思い返してみると、やはりマリアさんが来た理由は決戦前に師匠もといシェーンさんの顔を見に来ていたのかもしれない。


いがいにも最後別れ際に見送りに行くと今までおれが見たことのないような儚げな表情でただひと言だけポツリとこばした。


「行ってくる。」

「・・・。頑張って来て下さい。」


「当然だ。」


そう返事をしたあと彼女はすぐに姿を消していた。おれは玄関に一人残された。


物語の中のヒロインはこんなにも不安そうな顔をするのだろうか。今までいろんな作品を見てきた。心情表現が卓越した作品には心動かされ、何度こう思っただろうか。


報われなかった場合は。頑張ったね。

本当にその努力をファンの一人として最後まで応援していたよ。


これから先だってずっと忘れないから。だとか。君の健気に頑張っていた姿をみんなが知っているよとかも。


良くも悪くもそんな感覚に襲われている。だけどどんな作品だって。映像だって。ページを閉じれば、電源を落とせばそこにはいつもの日常が広がっていて。


だけどもし、そんな登場人物たちと関わってしまったら。どこか一線を引かれていた障壁がない。


さらにおれはこの物語がどうなってしまうのかの結末を知らない。乙女ゲームの世界観の小説の完全に裏側になるからだ。


本編を知っていたからとなにかが変わるわけではない。


だからこそときどき本当に心配になる。今そこで話していたひとが一日後、あるいは次の瞬間亡くなってしまっているのかもしれないのだから。


その事実があまりにも切なくて。ただなにかがあったわけでもないのにおれの目から涙がこぼれた。そっと閉じられた戸がまだわずかに開いていたので閉めなおす。


袖でぼやけた視界をぬぐう。なんでおれが泣いているんだ。まだこれからじゃないか。


「慣れないことはするものではないな。」


気がつけば隣の壁に寄りかかっている寝間着姿のシェーンさんがいた。どこか宙を見ているような瞳は灰色のようだった。いつもの危険そうな紫色の魔性の瞳が少しだけかげっているように感じた。


やれやれわざとらしく肩をすくめ彼女は疲れたもうしばらく寝るといってふたたび寝室へと戻った。


ドアを閉めるときに右側の髪がぴょこんとひと房ゆれているのが見えた。どうしてか無性にくしで髪をとかしてあげたい。


シェーンさんの髪サラサラなんだよな。


昨日になにかがあった時のシェーンさんはぼんやりしていることが多いのだ。そのときには本当にたまにだがおれが髪をとかしてあげたりする。


なんせお風呂入ったあと虚無になってて濡れ髪のまま寝ようとするのだ。おれは悪いくせだなと思いつつ、つい世話をやいてしまう。


大丈夫です。シェーンさん。そんなときもありますよ。ごゆっくりなさって下さい。


残念ながら言葉をかける隙がなかったけれど。おれは心のなかでそう言った。


シェーンさんお疲れ気味だったなあ。おれはうるさくしたら悪いので外で報告書をまとめたりと手短に仕事をすませ、買い物をすませ夕飯の支度に早めに取り掛かった。



*****


目が覚めるともうすっかり日が落ちていた。眠りすぎてしまったせいか頭が痛んだ。血流が悪くなっているせいに違いない。


台所からいい匂いがただよってくる。どうやらあいつが夕飯を作ってくれているらしい。


クウウっと小さくお腹が鳴った。お腹がすいている。でも食欲がない。


ベットにうつ伏せになって寝たふりを続けていた。


コンコンコンっと3回ノックが聞こえた。そんなに優しく扉をたたきおって。あいつに暴力なんて無理だろうな。(ちなみに彼の趣味はシャドーボクシングです)


「シェーンさん起きてますか?入りますよ?」

「・・・。」


すぐには返事をしたくなかった。だが1,2分後にもとやつは扉の前にいる。


仕方ない。


「好きにしろ。」


ガチャリ。扉が開きやつが近づいてくる。足音がベットの前までやってきた。


物好きなやつめ。さっさと私なんかおいて外へ飲みにでも出て若い娘と遊びにでも行けばよいものを。


なぜ私に構うのだ? その疑問が常にあたまを掠める。


「お隣に失礼しても?」

「いいぞ。」


ボフンっとクッションが揺らされ私は抗議のため顔を上げた。


「お、お前には配慮というやつはないのか?っておい何をするか!」


ひょいと身体を移動させれ枕ごとやつの太ももにのせられた。


うん? これはどういう状況なのだ?


膝枕ではない。枕越しだからな。では一体!?


キュポンッ。キャップの開く音と同時にふわりと私が好きな香りに優しく包まれた。


「どうですか? お気に召してくれたら良かったのですが。」


ふぁうあ!? 突然サプライズされて動揺してしまう。この私がこんなこと如きで動揺するわけがないだろう!?


こ、こいつやりおる!


柔らかな手つきで頭皮までもがほぐされていく。なんて手慣れているのだ。至福へのいざないに抗えない。


枕の少し横においてある瓶のラベルに目がいった。これはヘアオイルマッサージというやつだ。こんなにも気持ち良かったとは思わなんだ。


ラベルの文字がふと気になった。


Corculum(*愛しい人という意味)という文字が見えた。ゴシゴシっと目をこすりもう一度目を凝らして確かめる。


な、なんだと! コイツ他の女と・・・。(現在二人は付き合っておりません)


いや。先ほど新品の瓶をあけるコルクの音がした。


昨日あんなことがあったから! とてもとても気になってしまうがこのやり取りの意味を! 


いや違うこれは何かの間違いだ! そくざに否定した。


だってな! 昨日身籠ったヴァンパイアの暴走を抑えるためにコイツが下した判断が異常すぎたせいでな!


ついついこっぱずかしいことを考えてしまっているだけなんだ!


さっきから心の声が語尾に!マークがついてしまうことに腹が立つ!!


もし心の声に♡マークが語尾につくようになったら私は羞恥心に耐えられずに世界を私ごと滅ぼしにかかるだろう。


そう忘れもしないあの時・・・。やつはこう言ったんだ。


*****


万全を誇っていた屋敷の防御結界がいくつかの爆発音とともに破られた。


魔力を暴走させ正気を失っている私の古き友人ヴァイオレットの生気を失った目が私たちを倒すべき敵と認識する。


飛び掛かってきざまに私とマリア、そして途方にくれている彼女の夫がそれぞれ応戦の姿勢をみせる。


「やはりこうなりましたか。」


ひとり何かをさとったようなアホを除き私たちは気を引き締めていた。


「なるべくお前には手を上げたくなかったのだがな。引っ込んでいろ。ダーク・ハイエルフのひよっこ。お前の手には余るだろう。ここは私が・・・。」


吸血鬼ヴァンパイアの習性ならではですね。魔力の暴走と自律神経の過度な乱れにより彼女の意識は今昏睡状態にあるわけです。」


「言っている場合か!」


そういって飛び掛かってくるようにステップをしフェイントを入れつつ魔力弾での奇襲をマリアさんとシェーンさんが即座に反応しおれと隣の男をかばった。


ニヤリと黒い靄につつまれた彼女の向こう側から紅く光る瞳がこちらを見ていた。


や、やられる。シェーンさんの隣にいて初めて死の恐怖を感じた。


唐突に走馬灯が始まってしまう。なんだかんだでお近づきになれてたシェーンさんとの関係。


魔國を各地旅してまわって集めた魔導書を持ち帰ったときに喜んでくれるに違いない至高の魔術師の友人の顔。


今では婚約者と仲つまじく暮らしているという幼馴染の顔。


そして今世と前世の両親の顔。


最後に頭に残っていたのはあの広い草原で、青空を涼しげに見上げて朗らかに笑うシェーンさんの笑顔だった。


「君をとめると約束したからな。」


そういって近接戦闘も得意とするシェーンさんの防衛ラインと圧倒的な魔力探知能力と抜群の魔法センスのマリアさんの2人の間を出し抜いてきた彼女を男はとめていた。彼の魔力が一時的に暴走している。


きっとこれは彼の奥の手で。だがその後ろにいるおれにも分かるくらいには明らかに劣勢であった。きっと追撃をされればひとたまりもないのだろう。


だが妙に間があった。もしかすると彼女も後ろのモブのおれの事はともかく最愛のひとを傷つけたくないので抗っているのかもしれない。


後ろから彼女に攻撃しようとシェーンさんたちが目にも止まらぬ速さで攻撃をしてきていた。


一瞬の間、なぜか彼は助けを求めるようにおれを見ていた。おれはただ間に合うことを祈って見つめ返した。


きっと思考を読み取る高等魔術でも使ったのだろう。


彼はシェーンさんたちから庇うようにただ今にも攻撃して来ようとしている彼女を抱きしめた。


その後はおれは攻撃の余波で吹き飛び気絶していたので詳細は分からない。


ただ、目が覚めるとシェーンさんの古きご友人の暴走状態は止まっており、自我を取り戻していた。お腹のお子さんもご無事だそうだ。


少し落ち着いてからシェーンさんはおれにこう質問してきた。


「なぜ私たちの習性を暴くことができたのだ? 誰にも出来なかった偉業なんだぞ?」


「ペンは剣よりも強しだそうです。こういうことは理屈じゃない。おれの直感がただそう言ってたんですよ。2人の関係性を理解した上で。」


「は・・・。何をいうかと思えば。やはり人間は面白いな。ふふっ。普通はそんな考え思いつかないぞ。あまりにも馬鹿らしい。」


「おれ。シェーンさんが困ったときは彼のように側にいたいです。」


「うん・・・。そうか。お前がいかにも言いそうだな。お前らしいよ。」


困り眉顔になってしまったシェーンさんも可愛かった。



*****


どうやら頭皮マッサージも全て終わったらしい。


至福の余韻が抜けず私は呆けた顔をしていたようだ。ハッ。まずい。まずいぞ。やつに見られてないな? ないよな? 


「・・・。」


多分大丈夫だろ。よーし。


「もう終わりか?」

「はい。全て完了ですよ。」


「最高だったぞ。感謝する。」

「喜んでいただけたようで良かった。」


ふふっ。こいつ根が優しいんだろうな。


クルリと背中をまわすとリベルと視線があった。それは唐突に心の声がこぼれおちた瞬間だった。


「お前私のことをどう思ってる?」

「え!?」


「すまな、」

「いいえ。後には引かせませんよ。おれはやるときにはやる男です。」


「いや。もうしゃべるな。」

「却下です。シェーンさん。あなたが好きだ。おれと結婚してください。」


「私は結婚はしないぞ。そんなに面白いものでもなかったからな。」

「そんな・・・。」


「だが、お前が望むなら・・・。一緒に墓まではいってあげるとでもしようか。」

「それでいいです! むしろ望むところ!」


これは墓の下までもっていく秘密だが、マリア(この物語のヒロイン役)が無事あの例の化け物を討伐したという朗報が届くまで実に一週間もの間、心の声の語尾に♡マークがついていたという。


誰がとは言わない。だって秘密なのだから。


































































読んでくれてありがとう♪ こんなにも更新遅い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございます。また私の作品を読みに来て下さると作者冥利につきます。頑張ってまた新たな作品を作っていけたらなと思います。お次の作品はグロ展開マックスのファンタジーにしたいです。

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