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ハッピーエンドの世界線~悪役令嬢処刑後のとある国の議事録~  作者: コカマキリ
二章 ヴァンパイア

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29話

お待たせしました! またまた投稿期間あいてしまってすみません( ;∀;)

このしーんとした空間。そうここはシェーンさんの空間転移魔法陣の中である。高エネルギー反応・おそらく魔力が圧縮され鼓膜が震えている。キュイイイイイインッ 転移陣近くの両足の皮膚がピリピリする。


おれのまつ毛が若干焦げ臭くなってきた。まずい。燃えている。


「シェーンさん!? 早く転移陣を発動させて下さい! さもないと辺りいったいが消し飛びますよ。」


素人のおれでも分かるそのリスクをシェーンさんが背負うのはかなり珍しい。だが面白くなってきた。シェーンさんが命の危険にさらしてまでも苦戦する場所特定の魔法の認識疎外効果の結界を生み出す人物・・・。


なんか無性に会いたくなってきた。本当に顔だけでも見たいというか。まあ興味本位ってやつである。


周囲の客たちは迷惑千万かと思いきやげらげらと笑い転げながら店主と店員とともに避難している。おびただしく周囲に災害を起こす住人しかこの辺りは住んでいないというのは本当だったのか。


ほらそこにいるのがマッドサイエンティストみたいなダークエルフの兄妹だ。昨日このあたりを数100mほど先まで爆破した。


マリアさんの結界がなんとか持ちこたえ死者が出なかったというのも今回の騒動の喝采を受けている原因らしい。


「いよ! 結界の魔女とその同行者!」

「ヒュー・ヒュー・ヒュー!!」


(ワアアアアアアアアアと広がる歓声)


おれたちはたくさんの声援とともに、シェーンさんクラスの魔術の怪物が苦戦するレベルの古き良き友人へ会いにおれたちはいそいで旅立った。


あとには雷のような焦げた匂いが煙が立ち込めていた。悪魔のはらわた停の看板が静かに降ろされてしまった。


「おいおい。もうしめるのけ?」

「いや。ほらお前あれだよ。みんな気付かないふりしていたけどな? 今を生きる最強の死の女神と殿堂入りしている例の ”あの人”(シェーンさんのこと)が同じところにいるなんて機会滅多にないかっらな。」


「ああ分かった。記念碑立てるんだな?」

「そういうことですね!」


「店長ド派手に頼むぜ! 記念碑とかインテリア奮発してくれよな?」

「当たり前だろ! 任せろ! ところで諸君・・・。なにかいい案はないか。」


「新たな伝説始まりの地なんてどうですかい?」


「それいいと思いますよ! いよっさすがは地元のギャング!」


ヒューヒューヒューと黄色い声が上がり、周囲に魔法の閃光弾が入り乱れて平日昼間だというのにお祭り騒ぎになっていた。のりの良いダークエルフが【漆黒の魔法】でも使ったのだろう。暗闇がすきな魔國の民のにぎわいはよりましていった。


「ダサイッゼさん素敵ー!」

「よせやい。いやむしろもっと褒めてくれ。」


常連客は伝説的な魔法陣が入り乱れる空間や、まるで後光が席へとささるようライトアップされた店内の他に類を見ない装飾品の数々にたいそう喜び次から次へと注文が殺到していた。


中でも紫色炎がグラデーションを模して壁面へと波打つように一定のリズムを刻んで色をかなでている。盛り上がりハイタッチやベリーダンスをするひと波へ映し出され、店内にほどよい感じの落ち着きをもたらしていた。


物見客を引き付けるのは当然のように今日また一人と客が増え、売上が爆発に増え店長が嬉しい悲鳴をあげることになるのはまた数か月あとの話。


*****


転移先は防御結界が表面上層部が消し飛ばされてはいるものの、怪しげな歴史のありそうな洋館だった。外は意外ときれいに芝生が手入れされたおり、おれたちが転移したあとの街の人たちの盛り上がりなど知るよしもなく、いざ住人ととこのまま鉢合わせになりそうである。


ここはおれが昔いた世界でのヨーロッパにある孤独の城ブラン城のような古風な雰囲気がある。銀色の装飾品の数々とか、聖水が湧き出ているような噴水などまるで退治しに来てくれ勇者みたいな建物の造りをしている。


空はどんよりと曇っていて真っ昼間だというのに、道が陰っていた。


おれの隣を音もなく移動しているマリアさんとシェーンさん。姿かたちだけは絶世の美女である彼女たちであるが、おれは声を大にしてこう言いたい。


こいつら危険なので魔王と思わしきひとたち。命を守る行動をしてほしいと。しかし今回はみんな神妙な顔をしているものの、古き友に会いに行くとのことである。


きっと争いごとにはならないはずだ。


前をいくシェーンさんが空中に何やら手を掲げ、包囲網のような罠の魔術をむしり取った。手からはプラズマが散っている。


おれの視界外からの高速の石弓を手の平キャッチしてみせたのはとなりのマリアさんである。全然気配をなんて感じられないが、虚空を見返して彼女はフッと笑った。


手の平には光の縄を作り出し、どこへでもなく投げつけた。隠密魔法を使っていたおそらくはガーゴイルのような自動迎撃魔道具(超高性能)が何体か遠くの方で低い低音とともに爆ぜた。


なるほど。マリアさんは光魔法と闇魔法どちらも人類最高到達点レベルで使いこなせるらしい。


手から光の粒子を空を覆うように作り出し、広範囲攻撃【闇魔法:破壊デストロイ】の雨をいとも簡単に消滅させてみせた。


なんて恐ろしい子。


突然地面から奇襲をかけてきた巨大ゴーレム(おそらく高魔力耐性有り)のゴーレムの固く閉じられた振り下ろされた拳をシェーンさんがまるで赤子の手をひねるように己の拳をぶつけ合わせ砕いてみせた。


飛びかかる破片からおれとマリアさんをかばうように大きな黒い翼で覆った。


「さすがは師匠。」

「ふっ。腕は訛っていないようだな。マリア。」


「当然のこと。おややっと家主がお迎えのようですね。」


おれが2回ほどした瞬きをするその一瞬の間に突然目の前に男がいた。恐ろしいほどの美男子である。本当にエルフの寿命はどうなってやがるのだ。


「またもや手ひどく暴れてくれたな。死の女神よ。いや今は引退しているか。では私はなんと呼べばいいのだろうか。」


月色に輝く彼の長髪と特徴的な尖った耳。種族はダーク・ハイエルフといったところだろう。屋敷のセキュリティ一式を破壊されてたいそうご立腹かと思いきや、どうやら想定内のだったらしい。


しかし多少は腹が立っているのか視線は鋭いままである。


こんな禍々しいオーラを感じたら悪いことは言わない。逃げるべきである。


おれの隣のお連れさま方がそれ以上のオーラを出してさえいなければ。


「今はそうシェーン・・・。シェーンと名乗っている。しかし久しいな。お前も貫禄がついてきたな。」


「いつまでもそなたが最強だと思わないことだ。頂点にたつものはいずれ下から追い抜かれる宿命にある。その宿命からはシェーン・・・・。そなたも逃れられぬぞ。私を含め何人かがもうすぐそなたに追いつく。」


2人の間に火花が散るかと思いきやここまではいつものやり取りらしい。やれやれという風にマリアさんが肩をすくめてみせた。


「ところで、お前たちの間にもようやく子どもができたのか。」


「ああ。だからこそそなたにも声をかけたしだいだ。」


「・・・。」

「・・・。」


なにこの無言の時間。さっきからけっこう蚊帳のそとのおれははてとばかりに首をかしげた。


とりあえず中へというわけでおれたち3人は男に案内され屋敷の中へと入ることとなった。


よく分からない空間を何段階か通されながら、だ。この屋敷への入り口は外からは開かないらしい。


思い返してみれば黒い扉がまた一つまた一つと開かれ、そこを通る。いざ通ってみると不思議なもので、外からはまったく光を感じなかったのに通り抜けると廊下の明かりがついており壁の肖像画やしかの剝製などが見える。


通った通路になにがあったか記憶から消されて行く。何ともいえない不思議な感覚だった。


最後の扉をシェーンさんが開けることになったものの、なにか魔法阻害の仕掛けがされているのか、シェーンさんでさえ開けられなかった。


それをなんなく男は開いてみせる。それだけで彼が卓越した魔術師だということがわかる。


シェーンさんが珍しく悔しさに眉をひそめているのがとても印象的だった。どうやら彼女にも不可能なことはあるらしい。


ようやく応接間へとおれたちは通された。


魔法使いの館だから当然なのかもしれないが、どこからともなくカップが現れおれたちへとお茶が注がれる。


彼が手をかざす度に景色が変わる。まるでそこにさきほどまであった顔をしてそれらの物は我が物顔でただそこにある。


転移魔法なんて次元ではないのかもしれない。この屋敷は次元が歪んでいる。魔力をみる力が一般人のそれであるおれにでさえ分かる。隣に座っているはずのシェーンさんの気配が感じられない。


人気がないというべきか。目では見えているもののまるで暗闇の中の洞窟のようだ。まったくの手探りのような錯覚を覚えさえられている。


これがただの幻覚ならば、シェーンさんの顔がこんなにも悔しそうにはならないだろう。


おれはまた認識を改めることにした。この男はシェーンさん、そしてマリアさんに匹敵するほどの世界の脅威であると。


そしてそんな男が手を焼いているのが今の現状だということだ。いや・・・。おれごときでは何もできないのではないか?


まだだれも事態についても話そうとしない。シェーンさんとこのおとこ。いがいと仲は悪いのかもしれない。


おれは恐る恐る部屋の中を見渡す。スタンダードな洋風の内装で、高級感はあるものの落ち着いた雰囲気がる。だがおれの生存本能がいっている。この部屋、この屋敷、そしてこの目の前のおとこは大変危険な存在であると。


恐怖感はあるものの同時に安心感もある。それはもちろん隣にシェーンさんがいるというのが大きい。


だがそんな安然も数秒後にはすぐに崩れ去った。異様な金属を切り裂くような叫び声とともに。


壁が振動でビリビリと揺れ動き、のどの奥が恐怖のあまりキュッと縮まった。


どうやらシェーンさんとならびたつどのこの男にも手があまる脅威が屋敷の中にいるらしい。

























読んでくれてありがとう♪

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