22話
登場人物紹介
□主人公の名前:リベル
■吸血鬼のお姉さま:シェーンさん。(主人公の名前をど忘れしている)
□パトラお姉さま:元エジプト女王クレオパトラ
☆北風さん:今話だけのモブ。ナレーション担当
吸血鬼お姉さんとの旅でここまでぶっ飛んだセリフをまさかこの自称常識人のおれが口にするとは思わなかった。
「ち、血がたりない・・・です・・・。」
「しっかりするんだ! なnnnnnn。(名前なんだっけ?)あいぼうよ!」
ゆさゆさっと肩をガッチリほーるどされゆらされている。おれの生気を失った顔がちゅうをだらりと揺らす。北風がおれたちの身体を必死に冷やそうと躍動していたが、そんなやつにおれたちは構っている余裕などなかった。
「い、命を助けてくださり感謝しま・・・す・・・。」
おれが倒れている地面の横でパトラお姉さま(*クレオパトラ。正真正銘の元エジプト女王)が感謝の言葉を口にしていた。
良かった。本当に良かった。このおれでも誰かの命を助けることができたんだ。チート能力もなにももたない、単なる一般人であったこのおれが。
彼らは満身創痍であり、なにかと説明に不便しそうなので、この状況を擬人化した北風・通称ウウィンドゥさまが貴様らに現状を教えてあげようではないか。風きる音がビュービューうるさいって? そこのお前ちょっと黙っとれ。あとにやけてるんじゃない。その顔やめないとな? ポテトチップスを口の中に突き刺すぞ!?
ふむよろしい。さて気を取り直して。うむ。そうじゃな。まず。ここは魔国東部のへき地、ヴァッキンガルムズ地方の集団墓地。どこぞからか移動してきた吸血鬼とお供の従者(?)の人間がこの地で倒れていたリッチーのクレオパトラを発見し、救護し今へといたる。
ビュウウウウウウウウ・・・・・。ご、ごほん。すまぬな。今のは聞かなかったことに。さてもう一度擬人化して、ナレーションをせねば。おれ様のモブキャラとして地位が危ぶまれる。
そうリッチーあのリッチーだ。
☆2.5倍速で見てね☆
>>>リッチー:自ら望んで多大な労力の果てにこの「すでに死んでいるためこれ以上死なない」形態に変異、墳墓など住居の奥で寿命を超越して生前の目的を継続していたり、していなかったり。 他のアンデットの種族とは完全に別次元の存在であり、強力な個体が多いとされる。見た目は限りなく人間に近く強力な個体ほど見分けがつきにくくときには、鑑定の魔法さえもあざむくことがある。もはや身体の全てを精密検査せねば正体を見破ることはできないとの仮説が論文で発表されている<<<
その中でも別格といってもよいほど、膨大な魔力量と力が溢れていた彼女は、従者と思わしき狼男をアンデット化し自分の配下とすることにしたようだ。
彼女の術式は地形が変わってしまうほどだった。空気が波打ち視界がゆれる。まるで古の魔術師が破戒僧ゴーレムを作り出したかのような、最近首都で流行り出した音楽家のド派手な演出のような・・・
え? 例えがくどすぎるじゃと? お前たちは今話だけのナレーション担当の北風を擬人化しただけの我になにを求めているのじゃ?
ふむ。なるほど。ふむ。そうじゃな。なんじゃ素直ではないか。うむ。その謝意をくみ取ってやらんでもない。うむ。
さて、どのあたりまで話したんじゃったか・・・。そうそう。狼男がリッチーにより復活させられ、そこに旅人2人(吸血鬼、人間)が通りかかった。ここからで良かったきがするのう。
さてさて。ここに集いしこの4人。いったいどんな物語が始まるじゃろうて。
*****
ビュウウウウウウウウ・・・・・。
す、すまぬ。もう擬人化解いて帰ろうとしてたんじゃがな。まだひと仕事説明が残っていたのじゃった。そこの岩の上まで女吸血鬼におぶられ寝かされた人間の男。あやつの血を原料に魔力回復ポーション・闇印が吸血鬼の秘術によって作られた。その流れのまま力尽き死にそうになっていたリッチーの命(?)を助けてやったというのがこの1時間以内にわしの担当区域・北風の真下で起こっていたことじゃな。
現状報告終わり! 話が長い眠いっていったやつがいたな? 今度目つぶしにチリごみ芥を貴様の目の中に突風巻き起こしてぶちこんでやるわ! フハハハハハハハハハハ!
さらばじゃ!
*****
*物語はもとの世界へと戻る。
シェーンさんはなにかとお人よしである。行き倒れのお姉さんを助けてあげるなんて。まったく見ず知らずの赤の他人に。
「シェーンさん・・・。おれ血が無さ過ぎて死にそうです。」
「死なん。死ぬわけがないだろう。たわけ。」
「いや。おれの血使って良いと言いましたが、ここまで大量に使うだなんて思わんかったというか。少しは遠慮して欲しかったというか。なんでそんなに人に親切にするんですか。」
「なにか不満げだな。まさかとは思うが、やきもちか?」
「違いますよ。ただ・・・。」
「あいつは見ず知らずの女ではないぞ。ほら数日前、温泉街でであったお前が絡まれていた女だよ。」
「・・・。え?」
「たしか彼女はクレオパトラと名乗っていたな?」
なんで彼女がここにいるのだ? さきほどおれたちは墓地にいた。そこに倒れていたのはリッチーと聞いていた。なにやら闇魔法の結界やらなにやらで確かにひとが倒れているのは分かるのだが、どんなひとで誰なのかが分からない。まさか彼女だったとは。
認識疎外だとでも言うのだろうか? ひとは良く分からないもにに恐怖しがちである。それを見越して魔術がかけられているのだとしたら・・・。いや。今そのことについて考えるのは良そう。なんせおれは魔術について専門家ではない。それに考えたってたいして分からない。
「彼女リッチーだったのですか?」
「ああそうだ。」
「知りませんでした。つい見た目で判断をしてしまいまして。人間だとばかり思い込んでいました。」
「いや。それもあながち間違いではない。彼女はリッチーだが、限りなく人間に近い存在だ。魔力量などの能力面では正真正銘の化け物だがな。まあ私の方が強いが。」
こくこく。これ見よがしに頷いてみせたらドヤ顔をし始めた。はい可愛い。
「ひとつ私からも聞いて良いか?」
さきほどとは打って変わって透き通った青空をおれの隣で仰向けになり寝転んで彼女はいう。そっとおれの頬をとがった爪でそっとなぞる。
ゾクゾク・・・。いや。ドキドキしますからちょっとやめてください。
「あの女のことをどう思っていた?」
貧血で首を動かすのもしんどいので、彼女の顔をうかがうことができない。ここは正直にいうしかないだろうな。
「きれいな方だなと・・・。でもそれだけですよ。」
「・・・。だろうな。フッ。本当にリベルお前は正直者すぎるよ。いいさ。たまには私も真実を口にしてやろう。彼女と君はくっついてもおかしくなかったのだ。私に合わなければな。」
シェーンさんはいったいなにを言っているのだろう。
「占いによれば、リベル君は私があいに行かなかった場合でもここ、魔國に来ていた。そして彼女と会うはずだった。そしてその未来では彼女と結ばれていたんだ。」
いや占いすごいな。ひとの未来をそこまで精確に予測できるのか。それはもはや未来予知の次元。
「残念だったな。私が相手で。」
ニヤニヤとおれのとこを見てからかうように笑う。風が草原を波たたせ、横たわる石に体温を奪われ少し肌寒くなる。
そんな状況でさえ、おれの意識はシェーンさんにだけ向けられていた。
「いえ。そんなことはないですよ。シェーンさん。あなたと旅にでて後悔したことなんてないですから。むしろおれを選んでくれてありがとう。ただ感謝を感じてます。」
急にらしくなくシェーンさんがデレるもんだから、おれはついついこっぱずかしい言葉を口にだしてしまっていた。
そらを駆ける渡り鳥がアホ―、アホーと泣いていたのがなぜか許せなかった。
読んでくれてありがとう♪




