38.感じた違和感〜side王太子リード〜
私は、薬草を採りに行った日の帰り際にマリリンの作った物を仮販売だが、日時が決まったのでマリリンに伝え予定を確認した。
マリリンは、私の言葉を聞くなり凄く嬉しそうに目を輝かせて笑顔でお礼を言ってきた。
予定も問題ないとの事で、仮販売する日取りは予定通り三週間と決まった。
私は、あれほどまでにマリリンの嬉しそうに喜んでいる顔を見られるのならば、私のできる事は何でもしてやりたいと思った。
マリリンの、喜ぶ事であれば他の誰でもない私が全て叶えてやりたいと思っているのだ。
私は、これまでに何度も周りから壁を固めてきた。
これからも、マリリンの周りは固めていくつもりでいた。
仮販売までの間は、マリリンは準備に集中したいという事で、手紙のやり取りはしていたが会うことはなかった。
三週間経ち、仮販売の当日になった。
その日、私はルカを。
マリリンは、待女のカミラを。
それぞれ連れてきた。
王都の仮販売をする為の場所へと向かった。
その場所へ到着すると、早速マリリンとカミラが手際よく準備を始めた。
販売用の屋台には、人の目を引くようにと可愛らしい装飾をして工夫を施していた。
(マリリンは、そういった発想のセンスもあるのだな…)
私は、マリリンを見てそんな事を思っていた。
そして、準備も整い商品の販売を開始した。
開始と共に、人が集まった。
マリリンは、お客に対して親身に話を聞き対応をしていた。
男性客だろうが、女性客だろうが関係なく優しく親身に対応していたマリリンは、とても輝いて見えた。
(将来、王太子妃になっても何の問題もないな…平民達にもあの様に、心から親身になり対応している姿は見惚れてしまう程だ…)
リードは、そんな事を考えていた。
順調に、人が集まり気づけば販売していた物は全て完売していた。
私は、安価で販売しているとはいえ、初めてでこの様な成功を成せたのだから、ストラム公爵家の収益は少ないとしても信頼性は今後高くなるのは間違いないだろうと考えた。
今日、販売していた物は全て完売したので屋台の片付けを始めた。
始めて少し経った時の事だった。
見知らぬ一人の女性が、何やらルカに話かけていてルカの腕に自分の手を乗せていた。
私は、何たる品のない者だと思い横から話に入った。
すると、あろう事かその女性は私にまで上目遣いをして、私の腕にまで手を添えてきたのであった。
私は、嫌悪感が募り怒りさえ覚えた。
女性の手を離そうとした時、マリリンがこちらを見ているのに気がついたのだ。
マリリンのこちらを見る目は、不信感が溢れている様な、軽蔑する様な目で見ていた。
私は、とても焦った。
私は、マリリンの元へと直ぐに行こうと思った瞬間…
マリリンへ、走っていた子供がぶつかったのだ。
そして、ぶつかった拍子に子供が持っていた飲み物がマリリンの洋服へとこぼれたのだ…
子供の母親らしき人物もすぐにやってきて、マリリンへ謝っていた。
しかし…マリリンは怒ることもなく優しく微笑み対応していたのだ。
私は、天使を見ているのではないかと思った。
その後、母子がマリリンへとお礼を言いと帰っていた様だった。
私は、直ぐにでもマリリンの元へ行こうとその場にいた女性へと言った。
「いい加減…その手を離してくれないか?馴れ馴れしい女性は好まない…早く店にでも帰るといい…」
私は、酷く冷たい視線を彼女に浴びせながら言った。
すると、彼女は少しビクつき足早にその場から立ち去ったのだった。
私は、彼女が立ち去ると直ぐにマリリンの元へと向かい、心配で声をかけ手を差し伸べようとした…
その時…
マリリンは、私の手を避ける様に身体の向きを変えて大丈夫だからと…カミラに着替えを手伝って貰うと言い馬車の方へと向かったのだ。
向かう途中で、ルカに声をかけていた。
どうやら、アリスに渡すものをルカに託した様だった。
話の最後に、ルカが何かマリリンを見て言いたそうにしていたが、留まったみたいだった。
(マリリンは、今どんな表情をしていたんだ?やはり、先程の事で私を軽蔑したのか…)
私は、そんな事を考えていた。
その後、マリリンの着替えが終わり片付けを終えて馬車へと乗り込み、ストラム公爵邸へと向かった。
帰りの馬車の中でも、特に私とマリリンは目を合わすこともなければ話す事も、ほとんどなかったのだった。
結局、その状態のままストラム公爵邸へと到着した。
マリリンとカミラをストラム公爵邸で降ろし、私とルカは王宮へと馬車を向かわせた。
馬車の中で、私はマリリンに微かに感じた違和感の事が気になって仕方がなく考え込んでいたのだった…




