表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/113

第90話 出頭

 二週間後、オゾマの出頭日がやってきた。ユージンたちは今か今かと待ちわびたが、物見にやった男が青い顔をして帰ってきた。


「オゾマのやつ、軍隊を連れてきやがった。自分の納得しない判決が出たら武力行使に出る気だ。流血沙汰は避けられないかもしれない」


「我々も武装して控えていよう。奴らが武力行使に出たら女王陛下をお守りしながら反撃に出る。これが戦のはじまりかもしれない」


 オゾマとその弟ティトが手勢を率いてあらわれる。


「ずいぶんと物騒な出頭ですな」


 ジェイエンの言葉にオゾマが反論する。


「私もそこそこ高い身分についていましてね。出かけるときには常に供の者たちが付いて回るのです」


 ティトが前に出てきた。


「俺たちも女王陛下に忠誠を誓った臣下だ。陛下からの出頭命令とあれば従う。だが、兄者に国母暗殺という事実無根の嫌疑がかかっている。これは何者かの陰謀だ。もし兄者に不当な濡れ衣が着せられるようなら、そのときは」


「おい」


 オゾマがそこで弟を止める。


「申し訳ありません、ジェイエン様。弟は少々血の気が多くて」


「槍を持って女王陛下を脅し、無罪を勝ち取ろうという魂胆ですか?」


「いいえ。真実を捻じ曲げ、不当な判決が出た場合、私の身体の安全を確保するための武力です。決して女王陛下に危害を加えるためのものではありません。真実に基づいた正当な判決であれば受け入れます」


「こんな大勢の武装した者たちをここから先に入れることはできません。これ以上部隊を進めると女王陛下に槍を向けたものとみなします」


「なんだと?」


 ティトが掴みかからんばかりの勢いで言うのをオゾマがなだめる。


「数人の護衛を除いて他の部下はここにとどめおきます。それでよろしいですね?」


 オゾマとティトと護衛を務める数人の騎士だけが建物内に案内された。


 屋敷の奥の部屋で裁判がはじまる。中央に女王が座る。議事進行を務めるのはその手前に座ったジェイエンだ。オゾマとムスタクが引き立てられてくる。


「オゾマが国母様の暗殺を首謀し、ムスタクが毒を盛った下手人だとして告発されております」


 オゾマが無実を訴える。


「女王陛下、そのような事実は決してありません。これは何者かの陰謀です」


 ユージンがジェイエンに耳打ちする。「来られました」扉が開き、タナティアの諸侯たちが部屋に入ってきた。オゾマは驚く。ジェイエンがにやりと笑って言う。


「どうしました? 公正明大な裁きのため、諸侯に見届け人になってもらうのです。諸侯は近くに騎士を配置しています。もしあなた方の外の手勢が不穏な動きをすれば、女王陛下をお守りするため、諸侯の騎士が正義を果たすでしょう」


 ジェイエンはオゾマが手勢を引き連れてくる可能性を想定しており、諸侯に声を掛けていたのだった。この不意打ちに、オゾマとティトは動揺した。


 一触即発の張りつめた空気が充満していた。一歩間違えばここは血の海になる。異様な重圧の中、ジェイエンが審理を進める。


「ムスタクよ、何があったか真実を証言せよ」


 ムスタクが淡々と証言する。


「娘が誘拐され人質に取られました。誘拐した男はオゾマ様の指図で動いていると言っていました。その男に娘を殺すと脅され、国母様の葡萄酒に毒を入れるように言われました。……そして私はその通り毒を葡萄酒に入れました」


 それは誰がどう聞いてもオゾマが黒幕であることを示唆するものだった。


 ジェンエンは計算していた。オゾマたちが暴挙に出たらどうなるか。数の上ではこちらが有利だ。オゾマは死に、自分が摂政になるだろう。夥しい血が流れるだろうがかまわない。ジェイエンは女王のほうを向き、オゾマの処罰をうながす。


「陛下、ムスタクの今の証言は自分が重い罪になるものであり、出鱈目でこのようなことを申す者はおりますまい。極めて信憑性が高いと考えます。今の証言から真実は明らかです。オゾマ殿になにを訊いても否定されるだけで時間の無駄でしょう。すぐに裁きを下されては?」


 ティトは剣の柄を握った。オゾマの手勢が外で待機している。合図ひとつでなだれ込んでくるだろう。ユージンも剣の柄を握り、敵味方の配置を確認する。重苦しい緊張がその場を覆った。


 女王が口を開く。


「うむ。だがその前にもうひとり証言をする者がいる」


「は?」


 ジェイエンが怪訝な顔をする。


「その者をこれへ」


 アウラが命じると、衛兵が扉を開け、一人の女性が中に入ってくる。


 ジェイエンはじめその場の皆が目を疑った。


 法廷に姿をあらわしたのは、ほかならぬ国母ノイエダだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ