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新国-神国-のフラリッシュ  作者: 楠林 シン
-第3章-一年生編
24/28

第23話 通常日課初日(5)

だんだん投稿時間が遅くなってますね…

すみません(>人<;)


今回のお話で通常日課初日のシリーズは終わりです!

夕食後、千早と友穂は実科の補習を受けに体育館へ向かい、残りの4人は部屋で自習をしていた。実質、一人はノートを開いたまま幸せそうに寝ているので、自習をしているのは3人なのだが……


さっきまで少し窮屈に感じていたこの部屋も、4人だと少し寂しく感じる。鉛筆のカリカリという音と千紘の寝音だけが、ただ空虚に部屋に響いた。


頭を使ったからかな?すこし暑いかも……


シーナは扉の対面にある小さな窓を開けると、冷たくて心地の良い夜風が流れ込んできた。シーナは黄昏れながら再び机に向かう。


「ロゼー!問6の答えってどうなった?」


シーナは問題だったパサート語の勉強をしていた。秀才のロゼとヒナが同じ小隊にいるので、とても心強い。


「そこは、Er wer damals reich, aber er hatte keine Freunde.ですわ!」


「あっ!あってた、ありがとう!それにしても、なんでこの教科書はわざわざこんな例文にしたんだろうね。『彼は当時裕福だったが、友人は居なかった』だって!可笑しくてしょうがないよ!」


シーナは少しおかしな教科書の例文に、笑いを抑えられないでいた。


「そうですわね!わざわざこんなに暗いお話にしなくてもよいですのに!」


ロゼもツボにハマったのか、クスクスと笑っている。静かだった部屋に、再び明るい笑い声が飛び交う。


「それにしても、シーナさんは飲み込みが早いですわね!もう過去人称変化もマスターしたのですね!」


「いやいや、ロゼとヒナの教え方が上手だからだよ〜!」


シーナはロゼの褒め言葉に手を横に振りながら返答する。内心、勉強のできるロゼに褒められて嬉しかった。


一時はどうなるかと思ったけど、何とか今日授業でやった範囲までは大丈夫かな!


ある程度勉強に目処が付いたところで、再び雑談が始まった。


シーナは以前から気になっていた事を、ロゼに尋ねてみる。


「ロゼっていつも上品な言葉使いだけど、もしかしてお父さんはどこかの会社の社長さんだったりするの?」


金髪で白い肌をした美しい容姿、華やかな言葉使い、トップクラスの成績と、ロゼはまるで小説に出てくるかのような典型的な才色兼備で、立派なお屋敷に住んでいても何ら違和感はない。そんなロゼのミステリアスな部分が以前からシーナは気になっていたのだ。ヒナも詳しい事が気になるのか、耳を傾けている。


ロゼは唐突なシーナの質問に面食らったのか、左手を口元に当てて笑いながら答える。


「オホホホホ!そんな事はありませんわ!私の父上は軍人ですわよ!」


えぇ!そうなんだ……てっきり大企業の社長とかかと……


シーナはその想像がただの幻想であった事に少し気を落としていた。


しかし、ロゼの話しには続きがあった。


「最初は普通の言葉使いでしたわ……でも、事ある毎に爺やが『いけませんぞ、お嬢様』って……聞き飽きるほど言われましたわ!そうするうちに気がついたらこの言葉使いになっていましたわ!」


…………爺や⁈…………お嬢様⁉︎


シーナとヒナの思考が交差する。


もしかして、ロゼのお父様は陸軍の高官の方なのかな……⁉︎爺やだし、お嬢様だしっ‼︎


シーナとヒナの期待が再燃する。ロゼを見つめるその目の輝きは一層増し、シーナとヒナは身を乗り出して、最後の質問を投げかける。


「「それで、ロゼのお父様は結局……」」



-ガチャ、ギギー-


シーナが核心に触れる質問を投げかけたその時、補習で疲れ果てた千早たちが帰ってきた。


「あ、お帰りなさい千早さん、友穂さん!お疲れでしたわね!」


ロゼはそう言いながら立ち上がり、千早たちの冷たい飲み物の用意を始めた。


それで結局……お父様は軍隊で何の仕事をしているんだろう……


そうしてこの話はうやむやに終わってしまったのであった。悶々とするシーナとヒナは、最終的に一つの答えにたどり着く。


まあ、核心部分について知ってしまったら、ロゼと普通に接する事が出来なくなってしまっていたかもしれないし、きっとこれで良かったんだよね!


そう自分に言い聞かせて納得するシーナとヒナであった。


……


9時半の消灯時間はとうに過ぎ、時計の針は11時を指していた。皆はそれぞれのベッドで横になり熟睡している。きっと、初めてのフル授業で疲れていたのだろう。


そんな中、シーナはデスクライトでぼんやりと照らされた机に向かって一人座っていた。外で鳴いている虫の、ジー、ジーという声が異様に大きく感じられる。


「お母さん、もう寝てる時間かな……」


そう言いながら、シーナはさっき酒保で買っておいた絵葉書を取り出し、ペンを握る。


ーーーーーーーーーー

お母さんへ


お母さん、元気ですか?私は元気です。

憧れの士官学校に入学して、早くも2週間が経ちました。教官の方々も皆親切で、とても居心地の良い学校です。


お友達もたくさんできました。みんなちょっと変わっているけれど、とても優しくて良い友達です。


そして、私は念願だった飛行兵科に入る事ができました!まだ飛行機に乗ってはいないけど、実物の戦闘機を見せてもらった時はその迫力に感動しました。


今はまだまだ新米だけど、きっと立派な飛行機乗りになって、お母さんを驚かせてみせます。


体に気をつけて、毎日を過ごして下さい。夏には沢山のお土産を持って帰ります。


シーナより

ーーーーーーーーーー


シーナは絵葉書を書きながら、これまでの事を振り返る。まだ家を出てから2週間しか経っていないのに、随分と長い時間が経ち、沢山の事があったように感じる。お母さんとも随分会っていない気がする。そう考えていると、急になんだか寂しくなった。


不意に流れそうになる涙をぐっと堪えながら、梯子を登り寝床につく。


シーナはその絵葉書をベッドに取り付けられた戸棚に大切そうにしまい、眠りについた。






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