表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新国-神国-のフラリッシュ  作者: 楠林 シン
-第2章-入学編
10/28

第9話 高雄山の秘密(2)

次話投稿大変遅くなりまして申し訳ありません(>人<;)


大規模なスランプに陥っていました…


今回の話は短いですが、どうかお楽しみ下さい!


Twitter:@shinkoku0

「ゔぉっほん」

校長は大きく咳払いして、話を始めた。


「この話はな、毎年この学校に入学してきた新入生にしておるんじゃ。軍人たるもの、過去の惨劇と平和の大切さを知っておいた方が良いと思ってのう」


簡単に話をする経緯をこう説明し、校長は話を始めた。


校長の話は、1時間近くに及んだ。学生一同は初めはやや退屈そうな様子であったが、校長の話は耳を疑うような衝撃的な内容であり、そのうち皆は校長の話を息を飲んで聞いていた。草木のざわめきと、小鳥たちの囀りのみが響く山頂で。


話の終盤になると、幾人かの学生は瞳に涙を浮かべていた。大柄の男子学生も、拳を強く握りしめて、歯を食いしばっていた。


シーナ達の瞳にもまた、涙が浮かんでいた。シーナは父を戦争で失っていることもあり、その話は心の奥底に深く突き刺さった。

挿絵(By みてみん)


いつもはふざけてばかりの千紘も、真剣な面持ちで校長を見つめている。

校長の話は、敷島皇国建国以前。ヴィルト帝国が繁栄するよりも更に昔の話であった。


ーーーーーーーーーー

今から500年以上前、敷島皇国のあるこの東端の地には、日の出ずる国、「日本」と呼ばれる国があった。


2600年以上の長い歴史の中で培われた独特な文化を持ち、他国から観てもそれは特異なものに感じられた。


春には街々の通りに植えられた「桜」の木が満開になり、人々はその下で宴会を楽しむ。通りは桃色に覆われ、限りなく美しく、人々の賑やかな声が響き渡る。


桜の花は、2週間もしたら無残に散ってしまう。その儚い美しさを、人々は感傷、感慨、幸福といった感情を胸に、桜を眺めるのである。


「日本」には、八百万の神がいると云われる。それらの神は、全国各地に神社と呼ばれる建物に祀られていた。


その神社では、夏の盆といわれる季節に「祭」が開かれる。

いつもは人気も無く、静かで荘厳な雰囲気の神社も、祭の時期になると参道の路肩に露天が犇めくように立ち、たくさんの人が訪れ賑やかになる。


日が落ちて、露天の裸電球の灯や提灯の灯が燈ると、それらが年季の入った社屋をぼんやりと照らし出し、なんとも言えない美しい風景を作り出す。

人々はその神社に祀られた神々に、豊作や健康を祈念しながら楽しむのである。


秋になると、木々の葉は赤や黄に色づき、田舎ではたわわに実った稲の刈り込みが始まる。一面に広がる黄金色の絨毯。それを縫うように這う水路。ポツリポツリと建つ民屋。その風景は、日本人の誰もが心の中に抱く故郷そのものであった。


冬になると、北方の地域は白銀に覆われる。特に積雪の多い地域では、道路の側に数メートルにもなる雪壁ができる程で、その風景は雄大であった。


年が開けると、一年の感謝を捧げたり、新年の無事と平安を祈るため、初詣に出掛ける。雪の舞う中、白い吐息を吐きながら大勢の人々が神社に列をなす光景は、どこか幻想的に感じられた。


季節の移り変わりを大切にし、それらを自然のままに楽しむ。その様な生活がこの地にはあった。


しかしこの美しい生活は、長くは続かなかったのである。


〈イラスト:真香灯様〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ