第10話 高雄山の秘密(3)
長らく更新できず、申し訳ありませんでした!
今回の話は過去編で、いつもと少しタッチを変えて書いてみました!
読んで頂ければ幸いです!( ´ ▽ ` )ノ
10話
日本は、ユーラシア大陸の東端に位置する島国である。大陸から日本側に伸びるようにして朝鮮半島が位置しており、その向こうに面積、人口、経済面共に大国としての要素を有する中華人民共和国が存在した。
中国は、20世紀後半から目覚ましい経済成長を遂げ、21世紀の前半には大国として名を馳せるようになる。
しかしその英華の裏には、中国共産党の一党支配の下、徹底的に社会主義体制が敷かれ、あらゆる生活の不自由に苦しむ国民があった。
益々力を増してゆく中国は、東南アジア周辺海域や、日本海付近に軍事的圧力を加え、次第に「世界の警察」と謳われた世界最大の軍事力を有するアメリカと、摩擦を生じるようになり、世界の安定は崩れつつあった。
しかし中国共産党と、アメリカ政府の綿密な政治的対話と軍事的不干渉地域を設けることにより、なんとか世界規模の軍事衝突は避けられていた。
そんな中、中国人民解放軍は中国共産党の圧政から国民を解放するというスローガンの下、突如クーデターを起こした。中国共産党の党員は、クーデター首謀組織である人民解放軍と対峙することなく直ぐさま中国国内から逃亡し、軍事政権が発足。「大中華帝国」が建国された。皇紀2731年のことであった。
その大中華帝国を統べるのは、元中国人民開放軍の総参謀長であった、梁 鉄林である。
その圧倒的な知略と、カリスマ性から、「北京の鬼」と称されて各国の軍関係者から恐れられていた。
梁 鉄林率いる大中華帝国は、これまでの中華人民共和国の政策とはうって変わって、アメリカや世界世論に対して強行な政策を行った。
クーデターが起こって間もない大中華帝国の経済、政治は、大きく混乱していた。また、国民も突如誕生したこの新国に、期待と共に不安も抱きつつあった。そのため、新政府は、安定した資源生産能力を確保し、また国民の支持を確かなものとする為、アジア各地の資源産出地域の平定を目指して、皇紀2732〜2735年の間に、中比戦争、中国・インドネシア戦争、中国・マレーシア戦争、中新戦争、中国・パプアニューギニア戦争を次々に開戦。各戦圧倒し、東南アジアの大部分を掌握した。
皇紀2737年には、日本政府に「沖縄返還条約」を強大な軍事力を背景に強引に押し付け、沖縄を併合。
アジアでの大中華帝国の蛮行に対処すべくアメリカは輸出規制などの処置を行ったが、大中華帝国本土、また東南アジアでの食料・資源産出量は膨大なもので、大きな成果を出す事ができなかった。
また、アメリカは慢性的な経済不況により衰退しており、皇紀2710年代には既にアメリカ軍の軍事力は、中国軍の軍事力を下回っていたため、アメリカ政府・軍部は他国の軍事衝突に関与する事を極端に拒んでいた。
皇紀2740年、大中華帝国の暴走に対処すべく、アメリカ、EU、日本、韓国、オーストラリア、カナダ、イギリス等の国々で組織された連合軍が発足。世界規模の軍事衝突は避けられない事態となる。
皇紀2741年、大中華帝国のインド侵攻を皮切りに、第三次世界大戦は勃発した。
連合軍は東戦線では韓国・北朝鮮国境で大中華帝国軍と対峙。戦局は硬直状態であった。
またインド戦線で大中華帝国軍と対峙した連合軍は、東戦線に戦力を割かれていたという事もあり、敗退。
そして、連合軍が退却し、脆弱な現地の守備隊のみとなったインド、バングラデシュ、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアは、次々と大中華帝国に占領された。
拡大し続ける大中華帝国であったが、東戦線を抑えられた大中華帝国は、マレー半島から中国本土へ続くて大資源地帯である東南アジアからの海上資源輸送がうまくいかず、また、連合軍の工作員が各地鉄道を次々に破壊し、帝国軍は次第に弱体化してゆく。
皇紀2743年夏、台湾沖海戦で敗れた大中華帝国軍は、東南アジアでの制海権、制空権を失い、現地軍は各個撃破された。
そうして世界は安定をとりもどしつつあるように見えた。
しかし、大中華帝国の兵器製造課は通常爆弾などの製造を全て中止し、残された資源の大半を充てて、新型特殊弾頭を搭載した大陸間ミサイルを大量製造した。その数は54000基に及んだ。
連合軍は大中華帝国軍の衰退を見切ると、一気に反抗戦を展開。補給線が断たれていた東南アジア一帯を僅か2ヶ月で奪回し、破竹の勢いで進撃を続けていた。
そして、2744年春遂に北京は連合軍に完全に包囲された。
[北京 大中華帝国大総統邸宅]
北京の紫禁城近くに構える大総統邸宅は、その荘厳で穏やかな雰囲気とは裏腹に、邸内は騒然としていた。
「大総統様、廊坊を連合軍に抑えられ、天津への補給路が絶たれました!至急対策会議を開きます!」
「大総統様、承徳を守備していた第二軍から、先程玉砕の連絡がありました!至急対策を‼︎」
時の大総統、梁 鉄林は決断を迫られていた。既に各資源地帯は連合軍に抑えられ、また、首都である北京は廊坊と承徳の陥落により完全に包囲されるという絶望的な状況に追い込まれている。
驚異的な速度で成長を続けた大中華帝国も、現在ではついに北京を残すのみとなった。
残されたのは、僅かな側近と近衛師団、また、54000基にも及ぶ大陸間弾道ミサイルであった。
豪華な装飾で飾られた机で腕を組み、神妙な面持ちで深く考えこんでいた大総統は、ゆっくりと口を開き、側近に話す。
「ついに、決断の時はきたようだな。皆、これまでよくやってくれた」
「はっ!ありがとうございます」
「ついに、北京のみとなってしまった。わしの壮大な計画も、完全に破綻してしまった。一体、何が間違っていたのだろうか。いや、わしの計画は間違っていなかった筈だ。大中華帝国が世界を統一し、中華の華々しい文化の下、世界各地の民たちが希望を持って生活できる理想郷。そう、世界を理想郷につくりあげたかったのだ。間違っていたものは何であったのか。それは、わしの計画を肯定しなかった、世界世論が間違っていたのだ。大中華帝国は、間も無く滅亡するであろう。そうだな…最後に一花上げようではないか」
「……‼︎大、大総統様!それは、つまり……」
「ん?何か意見か?」
「いえ、あれは抑止力という意味合いが強いのであってですね……実用となると……」
「うるさい‼︎わしの意見に逆らうのか?わしは大総統なんだ‼︎最終決定権はわしにある!おい!そこの近衛、その無礼者を牢にいれておけ‼︎」
「大総統様‼︎ご無礼申し訳ありませんでした!それだけは勘弁を!」
「早く連れて行け!」
『バタン』
側近の一人が近衛兵に連れて行かれ、部屋の空気は一気に凍りついた。残された側近達は皆、顔を青くさせている。
「おい、早く準備にかかれ」
「はっ‼︎」
……
……
……
翌日早朝、大中華帝国は約54000基の新型特殊ミサイルを世界各地に発射。そのミサイルは、通常の核爆弾のおよそ1500倍の威力を有しており、地形はおろか、大陸の形も変えてしまう程であった。また、人体に多大な影響を及ぼす有害物質を広範囲に放散し、生き残ったのは、事態をいち早く察知し、超高深度シェルターに退避した者達と、爆発をしのぎ、かつ、その有害物質に対して「特殊な抗体」を発現させた、僅か7300万人であった。
世界を滅亡寸前まで破壊し尽くした大中華帝国であったが、大中華帝国のミサイル発射を確認したアメリカが、自国にミサイルが着弾する前に、残存していた核兵器を大中華帝国各地に発射し、間も無く大中華帝国は滅びた。世紀の大悪党、梁 鉄林もまた、この世を去ったのである。
そして残されたのは、酷く荒廃した土地と、飢えに苦しむ7300万人の人々であった。




