9ゆかりの状況(ゆかり視点)
そうしている間に私は刑務所に当分の間いることになった。
退屈。
誰と話すわけでもなく、テレビを見ることもない。スマホだってない。単純な作業が続くだけ。
私はまじめに作業していたのに、横からいちいち愚痴を言ってくる女がいた。
最初は私だって我慢していた。でもその女は「ここはこうでしょ? 毎回違うって指摘するの疲れたわ。いい加減にしてっ」って怒ってきて煩かったの。
で、私も我慢の限界がきて、ついその女に噛みついてしまったの。
慌てて周りが私を止めに入ってきた。
「私は悪くない! その女が全部悪い!」
そう言っても誰も私のことを聞き入れてくれなかったの。
そこから私は部屋で一人過ごすことになった。可笑しいよね。
みんな私だけに冷たい。
みんな嫌い。
私の言うことなんて聞いてもくれない。
退屈な毎日。そう思っていたの。
そんなある日、一通の手紙が私宛に届いた。
中身を見ると、週刊誌の記者で佐光基弘という人からだった。最初は無視しようと思ったの。どうせ冷やかし。
あることないこと週刊誌に書いて私を嫌な気分にさせるのが目的なんだろうって。
でも、手紙は雑談しか書いていなかった。気分はどうかって聞かれたし、朝晩が冷えるけど体調は悪くないかって。癖字で読み辛かったけれど、はじめて貰った手紙は私を気遣ってくれている。
嬉しかった。
他の人にとってはただの挨拶程度のことなんだと思う。でも私にはその気遣いさえも嬉しくて涙が出そうだった。
ずっと周りから嫌われ続けている私に優しいことを書いてくれる人がまだいるんだって思ったら涙が出た。
二通目も三通目も同じように私を気遣うようなことが書かれていた。取材するためだけに手紙を送ってきているのは理解している。
でも、今の私には、それだけでも心が満たされていくのがわかる。何度も、何度も、読み返すうちに返信してみようと思った。
そこから佐光さんとの手紙のやり取りが始まっていったの。
刑務所での退屈な毎日。
佐光さんとの手紙のやりとりだけが唯一の楽しい時間になった。半年を過ぎてはじめて事件のことを聞かれた。
半年の間に一杯手紙をやりとりした佐光さんなら少し書いてもいいかな。
でも……そんな考えのやつは嫌いだって言われたらどうしよう。
でも、彼は私の事が好きなんだもの。全部正直に書いても問題ないよね。
でも、ちょっとだけにしておこうかな。
なんて考えながら私は手紙を書いた。
……。
これでいいわ。こうして私は手紙に封をして職員の人に手紙を送ってもらうように頼んだ。
こんなところにいつまでもいたら彼も悲しむよね。早く帰りたいな。
――〇




