001 プロローグ
この小説は
・小麦粉
・水
・塩
・つゆ
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やあ、諸君。俺の名前は稲庭犬人、いやぁ俺の親もなかなかにありえない名前付けるよね、犬人て。せめて狼人間ぐらいのグレードにならんかったのかと。
まあそれより聞いて欲しいんだよ。俺はね、うどんを捏ねてたんだよ。なんで捏ねてたんだって? 対戦ゲームで負けた相手から『ゲーム下手すぎ。うどんでも捏ねてろ』って言われてさ、言い返してやろうと思ってうどんを捏ねてたんだ。『うどん捏ねたら上手くなったわー!!』って煽り返そうかと思ってさ。そしたらさ…………。
――――完成したんだよ、ダンジョンが。
うん。間違いなく途中まではうどんを捏ねてたんだ、それは間違いないんだ。でも完成間近のうどんがさ、急にぐにょぐにょ動き始めてさ、出来ちゃったんだよね、ダンジョンが。なってんだよね、俺んちがさ。ダンジョンにさ。
近年、世界中で突如として発生して、ここ日本でも大問題になってたダンジョン発生とかいう非日常。そんなの俺には関係ねえな~と思って、社会人生活をダラダラと過ごしてたのにさ、ダンジョンの方からきちゃったよね、俺のところに。
そろそろ現実逃避をやめて、ステータスを確認するべき時だとは思ってる。でもね、受け入れたくないんだよな、この現実を。だって俺の家がダンジョン化したんですよ? いいから早く確認しろって? はい、じゃあ……。
「ステータス、オープン……」
これね、厨二病になったわけじゃないんですよ。ある日を境に全世界の人達がね、これでステータスを確認出来るようになっちゃったんですよ。まあこれが原因でステータス差別がどうとかこうとかありますけど、今はそれどころじゃない。すげー嫌な予感するから、早く見せて。
◆◆ステータス◆◆
【名前】稲庭 犬人
【レベル】1 【性別】男性
【職業】かけ出汁うどんマイスター
【EXP】0/10 【MP】10/10
【STR】5 【VIT】5
【AGI】5 【TEC】5
【MAG】1 【MND】6
【ダンジョンマスター】
・うどんジョン
┣UMP:0
┗全1階層
【ユニークスキル】
・うどんマスタリー
・ダンジョン管理
◆◆◆◆◆
うおぁーー…………。なってる、なってるよ、ダンジョンマスター…………!!
この世界に存在するダンジョンの中で、人間が管理出来てるダンジョンは確認されてるのはたったの3つ。今ね、4つになりました。
それよりね、言いたいことが沢山あるんだよ。
「なんなんだよ、職業……。かけ出汁うどんマイスターって……」
なんなんすかこの職業? 駆け出しと、かけうどんと、出汁をかけてみました~ってか。やかましいわ。全国のうどん職人に謝れバカタレが。俺がかけ出汁うどんマイスターなら、全国のうどん職人様はうどんの創造神だろうが。
「バカタレがよ……」
『――初回作成ボーナスで、バカタレを作成しました。摂取することで精神が少し下がりますが、他全てのステータスを永続的に向上させます。バカほど美味しいうどんつゆが作れるタレです』
「ほわああああああああああああああああああ」
あああああああ、びっくりしたぁあああああああああああ!! 急に天の声みたいなの聞こえてきたーー!! ふっざけんな、なんだこのバカみたいなアイテム!? 初回作成ボーナスって、いやいやいやいや、こんなのが初回作成ボーナス……!!
「バカタレがよお!!!」
『バカタレの作成に必要なUMPが足りません』
だーー!! バカタレがよぉ!! なんだよもうーー!!
このダンジョンマスターってところにあった、UMPってなんなんだよって思ったら、うどんマイレージポイントかよ!! 知らねえよ、バーカバーカ!! バカタレー!!
「…………これ、美味いのかな」
いや、マジで腹減ったんだよな。本当はうどん食うはずだったのにさ、うどんはぐにょぐにょ~って動き出して家に食われ……まあその、吸い込まれちゃって。そしたら、こんなんなっちゃって。
つまるところ、飯を食ってないんですね。打ってた麺はなくなったんで、うどん食えないんですけど、でもせっかくだからうどん食いたいじゃないですか。
「乾麺のうどん、あったよな……? 茹でるか……」
はい、そんなわけで乾麺のうどんを茹でて、うどん作ります。せっかく捏ねてたのに……手捏ねの自家製麺がよぉ……。はぁ~…………。
「……………これ、美味いのかな」
駄目だ、マジでずーっと気になるこの『バカタレ』って初回作成ボーナスアイテム!! 食ったら精神が下がるけど、他の能力は上がるんだろ? 人より精神のステータス、ああMNDってやつね。それが一般人の平均の5より高いし、下がったところでなんの影響もなさそうだし! 食っちゃお!!
「うっし、食っちゃお!! いただきまーす!!」
バカタレと、罵ってやってください。しかしね、美味そうなうどんを前にして出来ますか? 我慢。出来ませんよね、我慢!! 俺はね、うどんが好きなんだよ!!
「あ、バカ……。うめぇ……」
『MND、1減少。その他のステータスが全て1上昇しました』
すげえ。うどん食っただけで、常人の1.2倍のステータスを手に入れられたってことですよ? なんですかこれ、ドーピングアイテムっすか?
「さながらドーピングアイテムだぁ……」
『アイテムジャンルは【うドーピン具アイテム】となっています。摂取することで、さまざまな能力を向上、またはスキルを獲得することが出来ます』
「名前がいちいちやかましいわ」
やべえ……。俺、サラリーマンやめようかな……。
なんにも面白いことのない人生、ダンジョンなんて関係ない平凡な人生、それで墓までまっしぐら……そう思ってたのに、急に面白そうなイベントが転がり込んできた。
本来なら『俺の家、ダンジョンになっちゃったんですよぉ~。役所の偉い人ぉ~なんとかしてくださぁ~い』って、役所に転がり込むべき……。
でも、それで良いのか? 本当に?
自宅がダンジョンになったなんて報告例はこの世に存在しない。そもそも、自宅がダンジョン化したからって、役所からなんか補償されたりすると思うか? 役所に家を差し押さえられて、事情聴取されて、テキトーにプレハブ小屋みたいなところに隔離されて、つまんねー人生に逆戻りで墓直行じゃね?
――――ゴトッ…………。
「うっ……!?」
うわ、なんだ……? 今なんか、どんぶりが勝手に動いたような……?
『ピュ……』
「なんだ、こいつ……!?」
な、なんだ!? なんだなんだ、なんだこいつーッ!?
『フロアボス、うどんぶりスライムです。うどんジョンの標準的なボスとなっています」
「は? は? ここは我が城ぞ? 俺んちぞ? 許されるはずがないだろ、家賃払え馬鹿野郎!!」
『家賃を払う能力はありませんが、撃破することでうどんマイレージポイントを100獲得出来ます』
「知らねえよ!!」
やべ、マジかよ。有益じゃん……倒そ……っては、普通ならんのよ!! なんこいつ、え? こわ……こわ……!? メッチャ怖いんですけど。これが、モンスターってやつ!?
でもなんか、ひっくり返しちゃったうどんみたいな見た目しててさ、うにょうにょ動いてんの。ごめん、謝って? 食べ物を粗末にしたような見た目のそのスタイル、なんか不快なの。今すぐ謝って??
『ピュ!!』
「うわあなんか吐いてきた!! なにこれなにこれ!?」
謝るどころか、ツバ吐いてきやがったぞこいつ!?
『しこしこ太麺ミサイルです』
「そう言うのをきいてんじゃねえんだよバーカ!! えええええ壁に穴空いてるじゃん!?」
『鉄製の防具でも貫通する威力と思われます』
嘘じゃん……。あんなの当たったら、死んじゃうよぉ……!! いや、だったら!!
「お前が先に死ね馬鹿野郎!! 包丁くらえこの野郎!!」
『ギュビッ……』
う、なんだろうこの、ぶにょっとしたゼラチンを刺したような感覚……。キ、キモ……!!
『フロアボス、うどんぶりスライムを撃破。UMPを100獲得しました』
「や、やったか!?」
『はい。やっております。フロアボスを撃破したため、このフロアは安全地帯となりました。再度アクティブダンジョン化するには、ダンジョン管理スキルからアクティブ化をおこなってください』
ああ~良かった、これで一安心……。安全地帯になったし……。
でも……これで、うどんマイレージポイント……だっけ? UMP……100、溜まったんだよな? 何に使えるんだ?
「UMP、でいい? 何に使えるんだよ。というかお前誰だよ、天の声……」
『ダンジョン管理サポートシステム、ナビちゃんとお呼びください。UMPはダンジョンの拡張、うドーピン具の生成に使用することが可能です』
「うおっ……」
えーっと、階層拡張に1000ポイント? うドーピン具は……パワフルなるとが500ポイント、バキバキかまぼこが500……あ、ここらへん全部500ポイントだ。 え? 100ポイントじゃ、何も出来なくね……? これ、うどんぶりスライムをもっと倒さないと、全然貯まんねえじゃん!!
でもでもでもでも、でもだよ? でも、なんだよ!?
「……これ、食べ続ければステータスを無限に盛れるんじゃ……?」
…………おい!! おい、ここは答えてくれないのかよナビちゃん!! あれか? その辺は手探りで頑張ってね~ってやつか? この野郎……!!
「やってやろうじゃねえかこの野郎~!! 自宅をダンジョンにしやがって、そもそもうどんマスタリーもなんなんだこれはよぉ!!」
『ユニークスキル・うどんマスタリー。全てが『う、ど、ん』だけで構成されたものが、非常に得意になり、好きになる効果を持ちます』
「くそっ、うどんしかねえだろ、バカが……!!」
仕方ねえ、とりあえず考えるのは一旦やめて、気分転換に軽くジョギングしてこよう……。会社をやめるとか、うどんがどうとかは、走りながら考える。とにかく今は、無性に走りたい気分なんだ。家は一応安全地帯になったんだし、安心して出かけてこよう……。
でも…………なんだか、人生がメチャクチャ楽しくなってきた、そんな気がする!!




