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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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相談

フィリア視点の話に戻ります。

何話かフィリアが迷走します。イライラさせてしまうかも。うんちくが続きます。

 メイソンさんの話を聞いて私は迷っていた。ケイティさんに魔力移行の相談をする事を……。

 人生で自分の今後に関わる重大な秘密を自ら打ち明けた事はないと思う。ルイス王子の時は、あれは不可抗力で自分から打ち明けた訳ではないし、オリバーは勝手に推測して確信を得ているだけだ。私は自分から話した訳ではない。前世もそうだ。何か悩みがあっても、自分で調べて、あらゆる角度から検証して自分で選んできた。失敗した事もあったが、自分の選択だったので諦めもついた。頼れる人なんていなかったから……。

 

 ……違う。今ならわかる。私が人を信用出来なかったからだと思う。人を信用するのが怖いのだ。前世の幼少期の体験から、信用して裏切られた時の絶望感を想像すると足がすくむ。それなら最初から傷つきたくない。人と距離を置き、1人で決めてきた。

 けれど、今回のメイソンさんの試練の扉が開いてからエイムの士気は更に上がってきている。今まではそこまで身が入っていなかった人達も、真剣に前向きに訓練に参加する様になっている。ただ、皆浮き足立っているので、こういう時は事故が起こりやすい。エイムの管理を任されたバッカスさんが、メイソンさんが戻ってくるまでの間は基礎訓練のみで、模擬戦を見送っているため、私の出番はほぼない。

 私は余った時間、これからどうすべきなのか考えていた。……多分、私が魔力移行をしなければ、ほとんどの人は試練まで辿り着けないと思う。それが今までの現実だ。


 皆が、試練を受けれる様に、私が皆に同意のないまま魔力移行をするのは本当にいい事なのだろうかと思い始めた。私が魔力移行をするのを相手に同意のないままする事は、試練への扉から帰って来れないリスクを増やしてしまうのではないか。

 私は小心者だ。同意を得ていない今、1人でも帰って来ない人がいたらきっと私は立ち直れないだろう。そう思うと私は怖くなったのだ。魔力移行をする事が怖い。

 とりあえず、今はバッカスさんの魔力移行もやめている。


でも、あんなに士気が上がり、みんなが希望を見出しているのに……私には皆の希望を叶える事が出来るのに、魔力移行をしなくていいのか? それで本当に良いのか?

 私の頭の中でぐるぐると纏まらない意見が巡っていた。


きっと私1人ではずっと同じ思考がぐるぐる周り、結局前に進めない。誰かに相談するべきなのはわかっているけど……。




私は迷いに迷ってまずオリバーに相談した。オリバーは聡いので私の秘密もわかっていると思ったから。 

面会室で、私はオリバーに秘密を打ち明けた。

オリバーは難しい顔をして、


「今の私はお側でお守りする事ができません。

護衛騎士としてはエイムの人達に対して薄情かもしれませんが、フィリア様がそこまでする必要はないと思っております。フィリア様の秘密を多数の人に晒す必要はないものです。

……ただ、フィリア様がそこまで悩むと言う事は、魔力移行をしたいのではありませんか?

同意のない事がネックになっているだけで……」


オリバーに言われて、すとんと納得した。神殿に入ってもう1年以上立つ。距離を空けつつ接していたが、エイムの人達に何かしてあげたいと思うほど情が出来ていたのだと思う。毎日会っていると、距離を空けていても全く喋らないと言う事はない。それぞれの人となりが分かってきてるくらいには知っているのだ。


「ちょっと嫉妬しますね。フィリア様が神殿に入られて1年以上経ちました。もしフィリア様が、秘密を打ち明けると言うなら私も神殿に入らせてもらえませんか?

フィリア様なら出来るでしょう?」


オリバーはとても良い笑みを浮かべている。サーラ様にした様に魔力柱を凍結保存して一時的に魔力レベルを半端者まで下げ、扉を登録をして入ると言う事であれば理論上は可能であろうか……。確かに出来なくはないが、1人でもそんな事をすれば、この居住区のセキュリティレベルがグンと下がってしまう。それは避けたい。


 過激派の人達は半端者を魔法使いとは認めてない。オーディナリーと同じと思っている人達が多い。それなのに神殿で守られているのは気に食わない人達が沢山いるのだ。セキュリティレベルを下げる訳にはいかない。

それに私の魔力レベルを誤魔化しているのもバレてしまう可能性もある。それでは本末転倒だ。


「オリバー。それはセキュリティ的にダメな事はわかるでしょ?」


「えぇそうですね。ですが、フィリア様が秘密を多数の方に打ち明けると言うのならそれくらいして頂かないと、私も含めご家族にも心配をかけてしまう事をお忘れなく」


確かに、私の魔力移行を打ちあける人が多くなればなるほどリスクは増える。喋らないと言う秘密保持契約をしても簡単ではないが抜け道あるのだから……。


あぁこれはダメだ。初めての相談。私の気持ちははっきりしたが、余計に話がややこしくなってしまった。


「はい」


私は心配かけない様にオリバーに頷いた。


「それでも、こうやって相談して頂けて嬉しいですよ。あなたはいつも1人で決めてしまうから……。私はリヒト様よりフィリア様の専属護衛の任を解かれていませんので、いつでもお呼びください。私の最優先はフィリア様ですから、すぐに馳せ参じます。相談でなくても何でも構いませんよ。

魔力移行に関しては、何か別の方法で魔力移行を出来ないか、これから考えてみましょう」


オリバーは何故かとても嬉しそうな笑みを浮かべて話していた。こっちは真剣なのに、何故喜んでいるのか。


 今日のオリバーは、護衛騎士として来てくれてるので言葉がかたい。けれど、護衛騎士は相談相手になるのかしら? それは護衛騎士の領分なの? けれど、また相談してもいいと言われて少し心が軽くなった。


 別の方法……。それは考えていなかった。

目の前の事ばかりで、視野が狭くなっていたと思う。

勇気を出して人に相談する事はいい事だとこの時思った。

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