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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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私がやれること【完】

 私は改めて、海に近寄った。

 濡れるのも厭わず、スネくらいの高さまでそのまま海に入っていく。

 後ろから、今にもダンさんに止められそうな気配がして、そのギリギリで立ち止まる。


 背中に心配されている圧を感じるけれど、私は立膝をついた。

 視線が低くなった事で、太ももの中間くらいから腰あたりまで波が押し寄せてくる。海が荒れているから浅瀬でも海面の高さの変動が激しい。

 近くに来るとより精霊達の怒りを感じる。

(上手くいくかはわからないけれど、やれるだけの事はやろう)


 ここまで来れば、波の影響を受けず、ずっと海に触れていられる。それを確認してから私は両手を組み、目を閉じて、祈り込めて魔力を流し始めた。


 体の中の膨大な魔力が少しずつ外へ広がっていくのがわかる。

 (でもまだ足りない……)

 私は、『どうか穏やかになりますように』と願いを込めて更に魔力を流す。

 魔力は広がっていく感覚と共に、その魔力と戯れる精霊があちらこちらにいるのが感じられた。

 ある者はツンツン指で触ってみたり、ペロリと味見をしてみたり、遊び道具のように飛び跳ねたり、ものすごく喜んでくれたり、穴を開けてイタズラする子もいたりと様々だ。


 沢山食べる子がいたらそこは重点的魔力を集めたりと、全ての精霊達が満足するまで私は祈り、魔力を捧げ続けた。


 どれくらいだったのだろう?

 精霊達の怒りが感じられなくなった時に、広げて保っていた魔力を自分から切り離した。

 遊んでいた魔力が急に無くなれば寂しい思いをするかもしれない。私と切り離す事で追加の供給は出来ないけれど、残った魔力がゆっくりと減っていく方が精霊達の気分を害さないだろうと思う。


 私は、手を離し、ゆっくりと目を開けた。

 そこには、青々とした穏やかな海が広がり、波も荒れていなかった。夕焼けがとても綺麗で眩しい。風も心地良かった。


 私は目を細めつつ、満足して、ゆっくりと立ち上がる。

 思った以上に魔力を消費したのか、体は重い……けれど心はとても充実感で溢れていた。


 私にもやれることがある。


 嬉しくなり、振り返ろうとしたら、急に眩暈が襲ってきた。


 あっマズイ……。


 そう思った時には体が傾いていた。

 それを後ろから力強く支えてくれる。

 きっとダンさんだろう。

 心配かけないように、大丈夫だと言ったのにこんな有様……ごめんなさい。後で叱られよう……。

 そう思いながらも、急激に増減した魔力と、大きなことをやり遂げた達成感、支えられている安心感で、意識を保っていられず、手放してしまった。


 ◇◇◇


 目を覚ましたら、自室のベッドの上で寝ていた。

 意識を失う前はあんなに体が怠かったのに、今は魔力が回復したのか、体が軽かった。なんというか内側から別の何かに支えられている様な感覚?

 むず痒いが懐かしい気もして思わずほころんだ。


「フィリア〜心配したんだから!!」


 思考に耽っていたら、いきなりバネッサに抱きしめられた。

 いつの間に?


 ちょっと驚いたが、これはバネッサの平常運転だ。

 私は、すぐに人と距離を取りがちなので、寧ろこれくらい積極的なバネッサはありがたい。

 それに心配をかけてしまったみたいだから素直に受け入れた。


「ごめんなさい。心配かけて」

「ううん。メ……じゃ無かったダンから話は聞いたよ?

 無茶しちゃって!! このこの!!」


 バネッサに顔をムニムニされて、怒られている。

 ちょっと痛いけれど甘んじてされるがままでいた。


「ダンさんにも謝らないと……。

 でも……やって良かったと思ってる。

 私、出来る事が増えたんだ」

「フィリアが出来ることが増えて笑顔なのは嬉しいんだけど、無理はしないでね」


 拗ねた様に怒るバネッサを見ながら、私は素直に反省する。


「うん。気をつける」

「でもフィリアのお陰で、もう港の規制は解除されて、みんな漁に出てるよ!!」

「良かった!!」


 港は既に通常通りに営業出来ているみたいだ。

 安堵しつつ、私はバネッサの耳を近づき、内緒話をした。


「えっとね? 私も魔法使いになっちゃった」

「!? ホント!?

 あんな魔法できるからそうじゃないかと思っていたけど……。

 よく決心したわ〜!! ……確かに魔力の流れは良くなってるわ!! ふふふ。お仲間ね!!」

「うん!! これからもよろしくね!!」


 そう言って私はバネッサに負けずにギュッと抱きしめ返した。



 バネッサの話では、アーレン王国の結界も無事解決できたと、知らせがあったとか。

 魔法使いになった事は、お世話になった人達に知らせようと思ったけれど、私が王位魔法使いになったのは内緒にしておこうと思う。

 王位魔法使いと知られたら、アーレン王国で、また揉め事になるのは目に見えていた。そんな事は望んでいない。

 私は、トライア地区でのんびり魔道具を作ったり、薬草を育てながら生活していくと決めたのだ!!

 前世の子供達とも、ゆっくり話がしたい。

 それが私の幸せだ。



 勿論、必要であれば、力の出し惜しみはしない。

 全力でやり切ろうと思う!!

 子供達に恥じない私でいたい!! 

 それが、『私がやれること』である。



            半端者の私がやれること 完


第二部も完結です。

長い間、ありがとうございました。

ここまでお付き合い頂き感謝の極みです。


宜しければ評価、ブックマーク、いいね等よろしくお願いします!


本編はこれで終わりですが、フィリア視点では書けなかった部分を番外編として書く予定です!

ちょっとお時間をいただくかもしれませんが、良ければお待ちくださいませ!

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