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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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偉業

津波の描写があります。

被害はありませんが、苦手な方はご注意下さいませ。

 ペティに戻って来てからは、避難してきた人達のお手伝いをした。ペティにも子供達の遊戯室や、教会の講堂等で避難民を受け入れしている。

 トライア地区は数十年程前に大きな津波があり、その時から、年に一度ほど避難訓練をしているみたいだ。

 どの人達がどこの避難所に行くかは予め希望を取り、振り分けられているらしい。

 避難民の受け入れ準備もそれぞれ当番が割り振られていて、皆テキパキとしていた。

 私も何か手伝える事はないかと、デールさんに聞いて、その後は、避難して来た人達を誘導したり忙しくしていた。

 漸く、ペティで受け入れる避難民の受け入れが完了して、夕食の準備まで一息ついたのだ。


 今は自室に戻ってきている。

 特に何かする気も起きず、窓際にある椅子に座る。

 海側の窓を見ると、沖合に今までなかった2本の塔があった。バネッサの凄さに驚いく。魔道具師としても優秀なのに魔法使いとしてもなんて……。

 たった数時間で、あの様な作業ができるのは、魔法使いならではだ。それ程、魔法使いの力は偉大なのである。


 ……。


 まず塔に目がいったが、その後ろから大きな波が見えた。

 あれが津波なのだろう。肉眼で見える程に津波が迫って来ていた。

 ペティは高台にある為、その波は目線よりも低い位置にあるけれど、眼下に望む港から見れば恐怖に陥いるだろう高さだった。


 それに、物凄い速さでこちらに向かって来ていた。ほんの少し前まで、漸く目を凝らして見える程度だったのに、今は2本の塔に迫っていた。居ても立っても居られなくて、部屋を飛び出し、外に向かう。

 バネッサなら、間に合わなくても転移で逃げられるだろうけど、ペティに戻って来てない事で不安がよぎる。

 あっ!そう言えば耳のピアスは通信魔道具だった!!

 全く使う事がなかったのですっかり忘れていた。

 私は走りながらも、ピアスに触れ、バネッサの事を思った。

「ん? フィリア??」


 なんとも気の抜けた返事がバネッサからあった。

 特に鬼気迫っている様子はなくのほほんとしている。


「フィリアと通信なんて初めてね!

 ってかなにかあった!?」


 寧ろ私の心配をされてしまった。


「えっと、私は大丈夫。

 津波が見えてバネッサの事が心配で…」

「そかそか! 心配かけてごめんね!

 フィリアも音声通信できるのをすっかり忘れてたわ。

 でも大丈夫!!

 人使いの荒いレルートの魔道具もちゃんと設置し終わったよ!

 後は、もし港に津波が来た時の対処のために、海岸沿いの灯台で待機してるの」


 バネッサの返答に安堵しつつも、警戒体制のためか、バネッサの周りから飛び交う声は緊迫しているようだ。


「任務の邪魔してごめんね」

「ううん。ふふふ。私、フィリアに心配されちゃった」

 私の心配はなぜかバネッサには嬉しいらしい。


 バネッサと話している間に、外に出た。その時には正にバネッサが設置した塔を津波が飲み込もうとしていた所だった。バネッサがあの場所にいない事に安堵し、私は邪魔をしてはいけないとバネッサとの通信を早々に切る。

 網の高さは3メートル程に作ったので、塔の高さはそれ以上だ。津波はそれの倍以上あったので少なく見積もっても10メートル以上の大津波だった。

 対比ができた事で、津波の大きさを実感する。

 予想以上の、津波の大きさに驚き恐怖を覚えた。


 津波が塔を飲み込むと、波は3分の2程の高さに低くなり、心なしか津波の勢いは弱くなった気がする。


 急拵えの魔道具としては、良い成果が出たのではないかと安堵しつつも、津波の脅威は完全に去った訳ではなかった。


 まだ足りないと思っていたら、次に眩いばかりの閃光が、港から放たれ津波を横断する。

 一つ一つの閃光では少ししか削れていない。

 けれど、その閃光は、何度も繰り返され、津波の勢いは削ぎ落とされていった。

 それに、外に出てから気づいた事だけど、吸い込まれる様に海の方へ風が吹いていた。常に一定方向に風が吹くのも珍しい。これもレルート教官の作戦の一つなのかもしれない。


 そうこうしているうちに、こちらに押し寄せて来ていた波は消えた。

 魔法に頼らず(今回は時間がなくてバネッサが設置したけれど、時間があれば、魔法使いでなくても設置が可能だ)とも、魔道具で困難を乗り越えた瞬間だった。

 これは新たな一歩、歴史的にも意味を持つだろう。

 大規模災害でも魔法使いに頼らない自分の領地は自分で守る世界だ。


 ただ全てが丸く収まった訳ではなさそうだ。

 こちらに向かって来ていた波は無くなったけれど、海はあちこちで波を立て荒々しかった。

 暫くは、荒れる。津波の力に、魔道具の力をぶつけたのだ。仕方のない事だ。

 港町が、津波に飲み込まれなかったのだから、御の字のはずだ。


 ……。


 本当にそうなのだろうか?

 海に詳しくは無いけれど、強制的に自然の摂理を捻じ曲げたので、海が騒ついているのを感じていた。

 海が怒っているようにも思う。

 普通の海の荒れとは違い、これが収まるのは相当時間がかかりそうだ。

 それまでは、漁に出ることは叶わないだろう。


 トライア地区は魔道具を特産としているけれど、そこには人々の生活があり、港からの物資や漁に出る人もいる。

 漁師さんは生活が成り立たなくなるし、物資の不足は大問題になる。


 そう思ったら、私の心は決まっていた。

津波は第二、第三波が来る時もあります。

一つの波が去ったからと言って油断しないようにしましょう。

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