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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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結界

 どうやら、アーレン王国でも、トライア地区でも大変な事が起こっているらしい。


 まず最初に、私が聞いても良い話なのか尋ねたが、皆に二つ返事で了承された。


「問題は二つある。一つはアーレン王国の結界だ。

 かなり不安定だから、俺が対処する必要がある」


 口を開いたのはオリバーだ。

 一つ目の問題はアーレン王国の結界らしい。

 オリバーが、結界を再編している途中で問題が起きたとか。

 オリバーは、王族の負担を減らすために、結界の再構築しているのは聞いていた。ある程度成果も出ていて、王族の負担が減ったと言う話は、オリバーからの報告で聞いていたけれど、問題が起こったらしい。


「無理をするからだ。アリシアと結界を切り離す事すら困難な筈なのに、更に記憶までも結界から切り離そうするから……。俺はアリシアが自由になればそれで良かった。

 契約上もそうだったろう?

 昔の記憶など、アリシアにとって負担にしかならない」


 ラルフさんが、少し怒った口調で窘めていた。

 どうやら、オリバーは、王国とは別で、ラルフさんからの依頼で、お母様と結界の結びを断ち切り、お母様がアーレン王国の結界から自由になれるように、結界の再構築をしていたみたいだ。

(オリバーって本当凄い人だよね。何で出会いはあの姿って思う。私の護衛騎士をしていたなんて、信じられないくらいアーレン王国に必要な人だ)


 確かにお母様の性格からすると、結界の外に行く事は悲願だとも言える。

 侯爵家の図書室に、外国の本が少なかったのは、アーレン王国が閉鎖的であるだけじゃなく、国外に行けないお母様への配慮があったのだと思う。

 お母様は、外の世界の事をあまり話さなかったが、時折見せる顔には外国への憧れを抱いている感じがした。

 お母様は、自由を好む人だ。完全にアウトドア派。

 ラルフさんは、仕方がなかったとは言え、お母様を結界に縛ってしまったことを、後悔していたのだろう。

 それでオリバーに依頼した。けれどオリバーは、ラルフさんが望んだ以上に、お母様の昔の記憶までも結界から切り離したようだ。


 お母様と結界の結びつきを切り離すだけでも大変なのに、それで結界に大きな負担が掛かり、不安定になっているとの事だ。

 あの大きな地震は結界の歪みによる影響の一つだった。


「確かに依頼は、アリシア殿と結界の結びつきを断ち切り、行動制限を解除する事だった。

 アリシア殿とフィリア様を再会出来るようにしたかったのだろう?」


 えっ? 私の為? 驚いてラルフさんを見るとバツの悪そうな顔で、居心地が悪そうに目を逸らされた。

 どうやら本当のようだ。

 ラルフさんは、いきなり謝罪してきたり、行動の読めない人だったけれど、血のつながらない私に対しても、とても配慮してくれているのはすごく感じていた。

 お母様の為でもあるだろうけど、私の事を思っての事だと分かり心が温かくなる。


「別に……その為だけじゃないさ。

 元々、アリシアは自由に世界中を旅する人だった。

 ずっと、俺はアリシアと結界を断ち切る術を探していたんだ……。オリバーにその力があると思ったから、依頼しただけだ。俺は力不足だったから……」


 自嘲するように言うラルフさんであったけれど、オリバー曰く、ラルフさんの研究成果があったから、こんな短期間に結界の解析が出来たのだと話してくれた。


「依頼内容は分かっていたが、ちょっと考えが変わってね?

 アリシア殿が、国外へ出国すれば、いずれラルフ殿との思い出の場所に触れることもあるだろう?

 ラルフ殿とアリシア殿の思い出を知る人物もいる筈だ。

 結界に残るアリシア殿の記憶が、アリシア殿の中で呼び起こされると、結界が不安定になるだろう? 

 今切り離した所で最終結果は変わらない」


 結局歪みが出るのなら一気にやって仕舞えばいいと言うのがオリバーの考えだった。

 ただ、予想以上に強固になっていたので、歪みが大きくなったとか。

 ここは時間が止まっているとは言え、オリバーは早く対処したいのか、言葉が少し早口だ。余裕のないオリバーは珍しい。結構無理をしたのだと思う。


 オリバーの心境の変化は何があったのだろう?

 それも気になるが、自分の感情を表に出さず、いつもどんな無理難題も飄々としていたオリバーが、焦るほどの危機が迫っているのは誰もが見過ごす事はできない。

 でも今は2人の言い合いはとても大事だと思うので、他の皆んなは静かに2人を見守っていた。


「そうだとしたら、記憶は切り離して消し去って仕舞えば良かった。そうは思わなかったのか? 

 無くした記憶はアリシアのこれからの人生には必要がない。

 俺との記憶を知っている人は殆どいないんだ。

 バネッサには悪いが……。そこは俺が一生かけてバネッサに償っていく。アリシアだって記憶がない方が困らないさ」


 ラルフさんは、オリバーのやり方に納得していなかった。

 どんどん語気が強まっていく。

 ただ、バネッサの名前を出した時は、トーンが下がる。

 バネッサから母親を取り上げたのは、心苦しいのだろう。


「確かに、結界からその部分を切り離すよりも消し去る方が簡単だった。だが……アリシア殿が記憶を無くしたままでいいと思っているかは別だ。アリシア殿には知る権利がある」

「いいに決まってるだろう!?

 俺との記憶が思い出されれば、アリシアは俺とダグラスとの間で、板挟みになる。今更、20年前の過去を知ったところで、誰も得をしない」

「ラルフ殿は思い出してくれれば嬉しいだろう?」

「そんな訳ないだろう?

 俺の望みは、アリシアが自由に暮らせる権利だ。

 俺の事は忘れたままでよかった!!」


 ラルフさんは声をあげて怒っていた。自分の事よりもお母様が大事なのはありありと出ていた。

 自分の事は忘れられてもいいと。

 バネッサは横でそれを聞いていたけれど、ちょっと複雑な顔はしたが同意しているようだ。

 多分親子でこの事について、話し合っていたのだろう。


「ラルフ殿はそう思っていても、アリシア殿は違うようだったよ」


 その言葉に、ラルフさんの顔から血の気が引いた。

 お母様のラルフさんとの記憶は、お母様に既に戻っていて、オリバーは話をしていたようだ。


「……アリシアはなんて……?」


 恐る恐る聞くラルフさんは、死の宣告でも受けるようだった。


「『言いたい事は沢山ある。首を洗って待っとけ』と言っていたよ」


 その言葉にラルフさんは崩れ落ちた。


ラルフのお話はここまでです。

これ以上書くと脱線してしまうので……。

ラルフとアリシアのその後が気になる方は、『チート魔術師の赴くままに』の20年後の番外編をお読みいただければと思います。

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