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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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無自覚

「充実しているの? 良かった!!

 でも、でもね?

 なんか無理してない?」


 充実していると聞いてとても喜んだのに、今度は気遣わしげな表情になった実咲が言った言葉の意図が掴めなかった。困惑しながらも、特に普段通りだと伝える。

 寧ろ、トライア地区に来てやりたい事させてもらっている。

 申し訳ない程に甘やかされている。


「えぇっと無理はしてないわ」

「自分に制限をかけてない?」

「……特にかけてないけど?」


 私の返答に、実咲の眉間に皺がよる。

 せっかくの可愛い顔が台無しになっちゃうなと、呑気に考えていたら、グサリとくる質問が来た。


「自分に制限をかけている自覚すらないの?

 あぁ〜!! もう!! 単刀直入に言うわ!!

 ……結婚はしないの?」

「……結婚はしないかな。相手もいないし」


 前世のことを考えれば自ずと、結婚はしないと言う選択が出てきただけで、自分に制限をかけたつもりはない。

 元々、後ろ向きな性格で小心者、人見知りで目も合わせられないような人が結婚なんて上手くいくはずがない。

 結婚には相手が必要だ。こんな私と人生を共にするのは、相手に負担をかけるだけなのだ。

 そう前世で学んだのだ。コミュニケーションの欠如は、私の最大の難点なのだ。

 今はバネッサが、気にかけてくれて、あれこれしてくれているから順調にトライア地区に溶け込めている。私1人ならこんなに上手くいかなかっただろう。


 神殿に入ったのも、祈りを捧げる事で心が穏やかになったし、自分の選択だ。無理に入信させられた訳でもない。

 制限をしたつもりもない。

 今回は事情があって、トライア地区にお世話になっているけれど、あのまま神殿で祈りを捧げる人生も悪く無かったと思う。

 そう伝えたら更に、実咲の眉間に皺がよる。


「無自覚!! 無自覚なんだわ!!

 自分で勝手に制限をかけているのね!

 まぁ、この際、結婚はいいわ。

 私だって結婚はまだだし。それ以前に私も相手が……ごにょごにょ。

 えぇっと!! でもでも!! 

 結婚したくなったら、私たちに遠慮せずに結婚してよ? それは約束!

 出来たらフィリアの子供も見たいのよねぇ。

 フィリアの子供なら絶対可愛いもの!!」

「えぇっとその予定はないけれど、もしそんな機会があれば、そうするわ」

 ものすごい勢いで言われて、思わず首肯した。

 ここはイエスと言っておかないと、先に進まない圧力を物凄く感じたのだ。その圧力に負けてすぐさま返事をした。

 私の返事を聞いて実咲は満足そうだった。



「あとは、他にも制限している事あるでしょう?」


 何故かさっきの笑顔から一転、実咲が怒ったような顔に変わる。 

 実咲はさっきから表情がコロコロ変わる。

 どれも私を思っての事。ちょっと嬉しいし、表情の変化も可愛い。きっと魅力を感じる人は多いだろう。

 と、呑気に違うことを思っていたら、どんどん表情が怖くなってきたので慌てて弁明する。


「本当に制限なんてしてないわ。

……えぇっと何か、気に触るような事言ったのかな?」

 私が恐る恐る聞くと、

「えぇ!もちろん!怒っています」

「?」

「今の私達の話を聞いてた??

 私達は充実した人生を送っているの!!

 だから何も心配しなくて良いから、母さんは、フィリアとして第二の人生を謳歌して欲しいの!!」

「えぇっと。子供達が元気にやっているのをしれた事は私にとっては凄い嬉しい事だったわ。

 子供達には申し訳ないけれど、話を聞く前でも、謳歌とまではいかないけれど、やりたい事をさせてもらってるわ。

 2人がいいと言ってくれるなら、これからも魔道具に関わっていつか研究者になりたいと思っているの。

 けれど今の待遇でも、私には充分すぎるくらいなの。

 だからこれ以上、多くは望まないわ」


 前世の子供達2人が、充実した人生を送っている事は、とても嬉しいし、心配事が減ったのも事実だ。それは素直に嬉しい。

 今回の事で、魔道具により集中出来るし、魔道具に関われる事は、私にとっては僥倖だったしこれ以上望む事はない。


「ぬおぉぉぉ!! 魔道具も良いんだけどそうじゃないでしょう??」

「??」

「母さん。魔道具も好きだけれど、魔法も好きだよね?」

「!!」


 実咲は、どこまで今世の私の事を知っているのだろう。

 かなり驚いた。

 いや、まぁ。元来私はオタク……。

 小説もファンタジー大好き、ラノベばかり読んでましたよ。

 魔法ももちろん好物で……。ドッカーン!! と派手な魔法を使いたいと思う反面、小心者の私が、だいそれた事なんて出来るはずもなく。

 妄想を現実にする勇気は今はなかった。

 私が迷っていると、それを実咲は察したようだった。


「まぁ、いきなり色々言われても混乱するだろうから、話はここまで。

 お母さん! いい?

 もう一度言うけど、私達は充実した人生をおくっているの!

 何も心配しなくていいし、母さんが罪悪感を抱く必要は全くないから!!

 だからお母さんの好きなように生きてよ!!

 また、会いにくるから!!」


 好きなように生きる。と言うのは簡単なようで難しい。

 けれど子供達がそれを望むなら、子供に恥じない私になろうと思う。

 それはおいておいて、私が気になったのは別の事だった。

 実咲の言葉の端々から思わず期待していたこと。

 でも、私から望んではいけないと思っていた。

 思わず聞き返してしまう。


「また、会えるの?」


 私の声は震えていたと思う。

 もう2度と会えると思っていなかった子供達とこうして会えてのは、感謝しきれないほど嬉しい事だ。

 それが、また会えるなんて……。


 話を聞くと、ブレンを介して約束すれば、また会えるとの事だった。

「私が時々見張りに来るから、ちゃーんと人生楽しんでよね!!」

 捨て台詞のように実咲は宣言していた。

 正輝は苦笑気味だが、同意しているようだ。

 ……私も自分の思うように生きてみよう。

 2人に背中を思いっきり押されたような気がする。



 とにかく、これからも、2人を見守れる事に安堵しつつ、感謝を述べたのだった。


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