再会
フィリア視点に戻ります。
ぼんやりと目が覚めた。
あれ? 何してたっけ?
……。あぁそうだった。私、落ちてきた本で頭ぶつけたんだった。
ぶつけた額を触ってみたが全く痛みはなかったので、誰かが治療してくれたのだろう。
後でお礼を言わないとと思いつつ、周りを見渡した。
簡易のベットとシーツ以外、真っ白な空間。
否応にもここが、どこか分かった。
「ブレン?」
「フィリア様、お久しぶりでございます」
何もないところからスッと現れたブレンは慇懃にお辞儀をした。ちょっと話し方にトゲがあるのは、最近話し相手になっていなかったからかもしれない。
「えっと? ひさしぶりでごめんね。
あっ! 地震は大丈夫だった?」
「知っての通り、ここは時が止まっていますから、何も問題ございません。今は起こってすぐの状況ですね。
地震自体は、それ程大きなものではなく、被害は今の所少ないかと思われます」
「そうなんだ。えっと?
何でここに私がいるのかな?」
「さるお方がここにフィリア様を運ばれました。
どうしても、お話ししたいと、いう方がいらっしゃいまして……」
「そうなんだ?」
「お呼びしてもよろしいですか?」
地震のことは気になるけれど、ブレンが態とその話を逸らして会うように促してきたので、そちらの方が急ぎの案件なのだろう。どうせここは時間が止まっているので、地震の方は急ぐ必要は多分ない。
「えっと? うん。分かった」
私は自分の服を確認して、人に会える服装に安堵し、通してもらうようにした。
現れたのは2人の成人した男女だった。
二十代後半くらいの2人は、黒髪に黒目、前世の日本人の特徴で、服装も前世の物だった。何よりその面影が……。
すぐに誰なのか分かった。とっても大きくなっていたけれど見間違える事は絶対にない。
「……実咲と正輝?」
思いの外震える声で問いかけたのは、ここにいるなんて信じられないと思ったからなのか……。
私の問いかけに、2人はハッとしたような顔をした後、くしゃりと顔を歪め駆け寄ってきた。
お互いそれが当然かの如く引き寄せられ、思わず抱きしめていた。
……どちらかと言えば抱きしめられていたに近い。
今世は平均よりも小さかった私に比べて、2人とも私よりも大きく、すっぽり抱きしめられていた。
子供の成長に対して嬉しさと、それを見守る事ができなかった寂しさと申し訳なさで、私の気持ちはめちゃくちゃだった。
思わずギュッと力を込めると、それに応えるように抱きしめ返してくれた。
……。どれくらいそうしていただろう。
「言葉は要らないような気もしたけど、やっぱり色々話したい。ちょっと座ってゆっくり話そう?」
そう言ったのは正輝だった。
私は抱きしめる手を緩める。いつの間にか、三人掛けのソファーが用意されていて、座るように促された。
けれど、その前に言わないといけないことがある。
「……ごめんなさい。貴方達を置いて私は死んでしまった」
色んなことを聞きたかったけれど、まずは謝罪だと思った。
私は頭を下げて、子供達の反応を待った。
「顔をあげて?
私達はお母さんに謝罪して欲しくてここに来たんじゃない。
ちょっと喝を入れにきたのよ?
覚悟して聞いてね?
とにかく話そう?」
実咲に促されて頭を上げる。
そこには困ったように微笑む実咲と正輝がいて、言葉とは裏腹に、とても喝を入れるような、厳しい表情は無く、穏やかだった。
再度促されて、ソファーに座る。
両隣に子供達が座った。
「あっ! 私の姿! えっとこんな姿だけど、私は佐藤楓で、貴方達の母親で……」
今の私はフィリアの姿だ。
今更ながら、前世の姿ではないので、ちゃんと伝わっているか心配で自己紹介をしようとしたが、実咲に手を握られ、落ち着くように手を撫でられた。
「落ち着いて? お母さん!
ちゃんと分かっているから大丈夫。
母さんはフィリアという人物に転生していて、見た目が変わったのは分かってるよ。
前世の私達より可愛くなっていていい感じじゃない!!」
最後はほっぺをツンツンされてしまった。




