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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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断罪? オリバー編 sideバネッサ

少しいつもより長いです。

 私は、お爺ちゃんとの話を終えて、オリバーに向かい合った。

 リヒト曰く、オリバーは前世の父親らしい。

 リヒト……前世の弟である正輝は、お母さんの死後、父方の祖父母に預けられたので、正輝も父親とは偶にしか顔を合わせる事は無かったみたいだけれど、それでもオリバーに会ってすぐ気づいたらしい。

 私は母方の祖父母に引き取られた為、父方とは疎遠だった。


 なので私はと言うと……前世も今世でも会うのは初めての様なものだ。

 勿論、前世の赤ちゃんの時も含めれば、そうではないけれど、今世はともかく前世の物心つく前の記憶はない。ノーカンだ。

 そんな私が、何かを気づくはずもなく。

 こうやって面と向かって会ったとしても、何もシンパシーは感じない。

 今世は勿論、他人なのだけど、前世の繋がりも感じない。前世の父親と言われても、そうなんですね?

 としか思わなかった。


 リヒトから、前世も今世も、オリバーという男は、なんでも、そつ無くこなす器用な人だと聞いていた。

 前世は特に手抜きも上手く、周りに任せられることは部下に任せて、重い決断をするのは上司に任せて楽をしていた。

 そう言う人は、人たらしで、顔を作るのが上手いとおもうのだが、今のオリバーの方はそうではないらしい。


 最初は苛立っている様に見えたが、そうではない。

 隠そうとしてはいるが、顔は青白くなっているし、体の硬直が見られる。緊張しているのは、すぐにわかった。

 そんなに私と話したくない? 最初は早く逃げたそうにしていたし。

 予想とはちがう反応に戸惑いつつも、リヒトから私が前世の娘なのは予め知っているはずだ。

 なら、遠慮はいらないだろう。

 私はずっと聞きたい事を訊ねた。


「私のことはどう思っているのですか?」


 特に詰問したわけではないのに、私の言葉にオリバーは、ぴくりと体を揺らした。何故かすごく怯えられていた。


「どう……とは?

 俺が、どうこう言える立場じゃ無いのはわかっているつもりだ。だから、どう思うとかそう言ったものは無い」


 引き結んだ青白い表情で、選ぶ様に紡いだ言葉は私の聞きたいものではなかった。


「好きの反対は、無関心という言葉をご存知ですか?」


 私の少し低めの震えを隠す様に言った言葉に、自分自身が驚いた。

 声が震えるなんて……私としたことが、自分で言ったことにショックを受けるなんて情けない。

 この人にまだ父親として何かを期待しているなんて。


 私の言葉を聞いて、彼は焦った様に話し始めた。


「信じてもらえないかもしれないが、無関心でいたつもりはない。ただ、どんな顔をして会えばいいかわからなかっただけだ。それで君を傷つけていたのならば、それは申し訳ないことだと思っている。会う勇気がなかったんだ。すまない」


 もっと、冷徹な、「お前なんて知らない」と言う様な反応が返ってくるかと思ったが、違って驚いた。ずっと私に無関心だと思っていたがそうではないらしい。


 今の彼の反応で分かったことがある。

 彼は、思っていたよりも私の事を気にかけてくれていたのだと、表情と反応で察した。

 ただ、前世で父親とは物心ついてからは一度も会ったことはない。

 子供の頃は、もしかしたら祖父母に遠慮していたのかもと思っていたが、社会人になっても交流はなかった。

 子供の頃、こちらからの連絡手段は、何一つ無かった。父親から会いにきてくれなければ私からは難しかったのだ。

 社会人になり、然るべきところに頼れば出来ないことは無かっただろうけど、その頃の私は父親を見つけて会うという優先順位は低かった。自分もまだ若かったのもある。他にやりたいことが、いっぱいだった。

 そうこうしているうちに死んじゃって、今世の父親は手がかかるので、すっかり忘れていたくらい。

 リヒトも私が気を使わない様に最近までオリバーの存在を話してくれていなかったのだから、私も相手から見れば薄情なのだろう。

 でも、こんな機会はきっともうないと思うので聞きたいことを聞いてやる。


「謝罪が聞きたい訳ではありません。子供に会うためにどんな勇気が必要だったのですか?」

「情けない親だとは思うだろうが、……俺は子供が怖かったんだ」


 オリバーは、蒼白になり震える声で懺悔する様に話し始めた。

 前世、器用に世間を渡ってきた事。

 嫌な事柄があればそれを回避する処世術に長けていた事。

 出る杭は打たれるので、そうならない様に、成績は中の上、世渡り上手で、受験も就職も上手くいき、社会に出てからも、苦手な事からは、上手く逃げて思い通りに、生きてたこと。

 自分の思い通りに動いてくれる奥さんを貰い、そこまで苦労せずに、人生送っていた事。

 母さんをそんな風に思っていたことに腹を立てたが、それを話す声が震えて、時折詰まっていたので、今は懺悔しているのだろうと予想はついた。この人も反省はしているのだろう。


 人生楽勝だと思っていた時に、初めて自分の思い通りにいかない事が、子育てだった事。

 赤ちゃんは、諭しても、怒っても、宥めても、同情を引かせても、思い通りにいかない。何かあればとりあえず泣く。赤ちゃんはまだ意思の疎通が未熟なのだから当たり前だけど。

 今まで上手くいっていた処世術が上手くいかない。

 それが、オリバーにとっては恐怖でしかなかったらしい。

 特に私は主張が激しく、初めての子だったのもあってお母さんも手を焼いていた。


 それで、子育てから逃げた。

 今までも嫌な事があれば逃げればよかったから。それで上手くいっていたから。その分仕事を頑張ればいいと、逃げる様に仕事に打ち込んだらしい。

 逃げても楓が育ててくれると思った。と、実際に楓は試行錯誤しながら育ててくれていた。

 楓が体調を、崩した時も、心配はしたが子育ての代わりは出来ないと、子供への恐怖からどうする事も出来なかったと。

 まさか、風邪をこじらせて楓が亡くなるなんて思わなかったと。

 ポツポツと、いつの間にか涙を流すオリバーの話を私達は静かに聞いた。


 なんて自分勝手な人だと思ったけれど、本当に子供への恐怖があったのだと、目の前のオリバーの表情を見るとそう感じざるを得なかった。


 そう言えば、男性の産後うつという言葉も聞いた事あったなぁと思った。それなのかもしれない。

 もっと、あーだこーだと怒りたかったが、目の前の項垂れるオリバーを見て追い討ちをかける気はならなかった。


「そう。それで今は罪滅ぼしとしてフィリアの護衛をしてるの?」

「罪滅ぼしになるかはわからないが、彼女の望む人生をサポート出来たらと思っていた。

 ただ、余りにも、フィリアは自分に制約をかけていたのは分かっていたから、それが不憫に思えたんだ。

 こちらに来れば何か変わるのではないかと、これも自分勝手な事かもしれないが……」

「本当に勝手だよね」

「リヒト……」


 今まで、リヒトは口を挟まずにずっと聞いていたが、堪らず言ったという表情だ。


「姉さんももっと怒っていいと思うよ。

 姉さんはずっとほっとかれたんだから。

 そう言いながら、フィリアには自分勝手に、近づいてきてさ。フィリアの望む様にと言いながら、無理に国外に連れ出して……。

 まぁそれは俺も姉さんに会ってもらいたかったから、口出ししなかったからコイツと同罪だろうけど。

 コイツ……俺になら、殺されてもいいと思って主従契約を結んできたんだよ?

 そういう方向にわざと持っていったんだぜ?

 俺が契約しなければ、フィリアにそれをさせそうだったんだ。

 人の生殺与奪なんて重いだけだろ? 

 ずっと死ぬまで繋がりも持たなきゃならないし。

 迷惑だったよ。

 結局、自分の思う通りに人を動かしてさ。

 俺は認めてないからな」


 リヒトにとってオリバーとの主従関係は重荷以外の何者でも無かったみたいだ。


 神殿で、穏やかに暮らしていたフィリアを無理に連れ出したのは私達だ。それぞれの思惑が重なって実現したもの。

 オリバーは、フィリアに前を向いて欲しくて。

 私は、前世のお母さんに会いたくて。

 リヒトはその両方からだろう。


「それは……悪かったと思っている。最近気づいたんだ。

 自分が良かれと思っても、違う場合もある。

 先回りする事もダメな事だって。

 今度こそ、フィリアを守りたいと思っていたけれど……。

 また俺は失敗したんだな」


 そうオリバーは自嘲していた。

 項垂れる姿は、叱られた子供の様だった。

 正直に言えば、会うまでは少し怖かった。子供にとって親はとても大きな存在だ。

 会った事も無かったので、余計に大きな存在になっていたのだと思う。

 更にオリバーはアーレン王国では影の実力者と呼ばれる位、掌握していた。どんな凄い人が来るのだろう。私は言いたい事を言えるのだろうかと心配したが、そんなことは無かった。

 オリバーは権力も実力も持ち合わせているのに、今は、とても小さく見えた。

 父親って凄い存在では無く、小さいものなんだな。と思ってしまった。

 私もそう思えるくらい大人になり、精神的にも親に頼る必要がなくなったということだろう。

 失礼かもしれないが、何だか、可哀想な人に見えてしまった。

 色々怒って、謝らせてやろうと意気込んでいたが毒気を抜かれた。私にもう、怒りは無かった。


 後は、フィリアの判断に任せようと思った。

 私たちもこの人に振り回されたけれど、1番振り回されたのはフィリアだ。


「気を回して先回りするのは、美徳と言われるけれど、私は話し合いの方が大事だと思う。

 今の話、母さんにもして、今度は逃げずに話し合ってほしい」


「……分かった」


「まぁ、全部がダメじゃ無かったよ。

 正直、前世の養育費は助かった」


 私の銀行口座に、養育費は、必ず振り込まれていた。それに、養育費の後見人は祖父母では無く、人権派で有名な弁護士が代理人になっていた。祖父母ですら好きに引き出しが出来なかったので、私は高校も大学も行く事ができた。そうでなければ祖母に使わせてもらえなかっただろう。何だかんだと取り上げられていたはずだ。

 勿論養育費だけでは足りずに、バイトをしながらの学生生活だったけれど、それでも養育費がなければ大学は諦めていたかもしれない。

 大学でも仲間に恵まれて、事件で亡くなるまでは充実した人生だった。家族には恵まれなかったけれど、仲間には恵まれたお陰で今の私がある。

 今までの全て、いい事も悪い事も、今の私を作ってくれていると思うので、過去を否定ばかりしたくない。もう私に関しては過去はこれきりにしようと思った。


「お金なんて……」


 リヒトはまだ、何か言い足りなかっただろうが、今はフィリアを、優先したい。


「そうだね。側から見たらお金だけ渡して……とは思うけど、今オリバーの本音も包み隠さず聞けたしね。

 納得はしてないけれど、聞きたいことは聞けて私はスッキリした。思っていたよりも子供の事も気にしていたみたいだし?

 あとはフィリアの判断に任せるよ」


 こうして、フィリアに前世のことを話す事に決めたのだった。



 ……この3人なら必要ないだろうが、念の為、今世の姿で前世の自分の事をフィリアに言うのは、誓約魔法で禁止した。

 一度決めた事は、やっちゃうのが私のポリシーです!

 皆、苦笑いだったが、大人しく誓約に同意してくれた。


産後うつは実は男性にもあります。

今まで挫折を殆ど味わった事が無く、完璧主義な人に陥りやすいそうです。

子育ては、失敗の連続です。そこから少しずつ上手くなっていく。失敗続きで子供が大きくなると解決したって事も……。

子育てに正解はないです。親子の性格、関係性で同じ子育てしててもダメな時もある。

本当に子育ては難しい。

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