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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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既視感

 扉の開く音がして、そちらを見ると、レルート教官ではない人物がそこにいた。

 何と言うか特徴のない、小説で言うならモブ中のモブ!という出で立ちにも関わらず、何故か人目を引く彼に目が離せなかった。

 私がこんなに人を凝視するのは珍しいなと思っていたら、その人物と目が合う。

 うん。やっぱりチグハグな感じだ。

 モブっぽいのにオーラが凄い。

 それにどこかで会っているような? そんな既視感。

 トライア地区に来て、こういう場面に出くわす事が増えた。

 何でだ??

 いろんなことを考えていると、彼の後ろから待っていた人物が顔を出した。


「待たせたな。フィリア。

 ……コイツはオルド。

 今回の研究をコイツも見たいって言ってるんだけどいいか?」

「レルート教官が構わないなら、私は構いません」


 私も見せていただく立場だ。

 レルート教官が良ければ、私は構わないと思い、そう言ったのだが、私の言葉にレルート教官は、オルドさんの方を見る。

 何か言いたそうなレルート教官に、オルドさんは意に介すこともなく、こちらを見ていた。


「それは良かった。じゃぁ大丈夫だね。邪魔はしないからよろしくね。フィリアちゃん」


 まだ、レルート教官は何か言いたげだったが、オルドさんは、レルート教官が持っていた白衣とネームプレートのような物を奪いこちらに来た。

 白衣を渡される。

 この白衣は最低限の防護が施された最新の魔道具らしく、必ず最後まで着ているように念を押される。


「それとこれは、研究室に入るための入棟許可証。サティカに入れるから、ちょっと失礼するね」

「オルド」


 オルドさんが、私の右手を取ろうとして、レルート教官に呼び止められた。

 オルドさんの手が止まり、レルート教官を見る。

 何かしら見つめ合っていた2人だったけれど、折れたのはオルドさんのようだ。


「……そうだな。

 フィリアちゃん。初対面の人にサティカを触らせたらダメだよ? 

 サティカのセキュリティは、確立されていて、他の人が触っても、どうこう出来ることの方が少ないけれど、絶対に大丈夫という事はないんだ。私が危ない人なら危険な行為だよ?」

「あ……。そうですね。個人情報のかたまりですものね。

 何と言うか、オルドさんには以前会った事のある様な気がして、考え込んでました。

 会った事はない? ですよね?」


「……。うーん? この顔見た事ないでしょ?」

「思い出してはいるのですが、今の所、思い出せないです。すみません」

「なら、そう言う事」


 はぐらかされた様な気もするけれど、今は時間もないので、私は、サティカに触れた。入棟許可証をどうすればいいのかと思っていたけれど、近くに寄せるだけで、許可証はサティカに吸い込まれていった。

 サティカから『許可証を結合しますか?』の問いにYESボタンを押すと、サティカが一瞬輝き、元に戻った。多分これで良いのだろう。


 ◇◇◇


 レルート教官の研究室は、執務室、実験室1と2、応接室、仮眠室から構成されていた。

 実験室はこぢんまりしていて、1人で使うには使い勝手は良さそうだった。

 レルート教官の性格を表す様に、物の住所が決まっていて、物の多さから、パズルを組み合わせたかの様に余白が無かった。

 少しでもずれていたり、一つでも備品がなくなれば、すぐにわかる様な配置は、こちらが触らない様に細心の注意を払わないといけない気分にさせられた。

 どこにも触れられない様なキッチリとした研究室に、私は縮こまる思いだ。

 小心者、人見知り、真面目とよく言われた私は、整理整頓が得意と思われていたが、全く苦手なのだ。

 なので、レルート教官の几帳面な性格は羨ましい限りだ。


「楽にして、って言われても、難しいよな?

 3人も入る設計の部屋じゃないし、実際誰も入れた事はないからね。

 物は多いけど、簡単な保護魔道具は作動させているから、少々ぶつけても移動したり壊れないから安心してくれていいよ?」


 そうは言ってくれたが、貴重な材料や道具もあると思うので、一層気をつけようと思うのだった。

 中央にテーブルがあり、椅子が一つ。

 テーブルに、レルート教官は三つの大きな箱を並べた。

 多分これが測定器なる魔道具なのだろう。


「フィリアは椅子に座って」

「いえ。私は立っていますので大丈夫です」


 レルート教官は、私に椅子を勧めてくれた。

 けれど、どう考えても、この中で1番下っぱの私が座るのはおかしいと、遠慮した。


「私は測定に集中したいから、書記がいた方が効率が良いんだ。

 フィリアの字は綺麗だから、お願いしたい」

「それは勿論手伝わせていただきます!」


 座った方が字は綺麗に書けると思うが、別に座らなくても字は書けると思っていたら、オルドさんからも座る様に促された。


「なら座った方がいい。俺に遠慮しているなら、俺は座るつもりがないから大丈夫だ。

 実験を見ていたいから、見える位置に常に移動する。座って固定すると見ずらいからな。レルートも測定中は、動き回るだろうから椅子は邪魔なんだよ。

 な? フィリアが座るのが、この狭い空間の有効利用って訳」

「そう言う事でしたら」


 私は椅子に座わらせてもらう。



 1番目のサンプルだけ、私のために丁寧に測定する内容と理由について説明してくれていたが、二つ目からは完全に書記状態。ひたすら表に数字を書き込んでいった。


 何せサンプルが多いので、スピード重視なのだろう。

 レルート教官の手が見えないくらい早かった。

 ただ、レルート教官はとても楽しそうに作業されているので実験が好きなのだろうと思う。

 サンプルは、間違いがない様に2度測定されたが、時折レルート教官の予想と違う結果が出た物があったのか、多く測定するものもあった。



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