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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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プライド sideレルート

昨日も更新しています。


今日で半端者〜はちょうど一年になりました。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

物語はもう少し続きます。

最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 実験棟の一室で、最新防御壁の前に、オルドとメイスが立っていた。

 セキュリティ責任者は自信ありげに防御壁の横に立ち、俺たちは少し離れてみていた。


「やれ」

「えっ? 俺ですか?」


 オルドの命令に、メイスが気の抜けた返事をした。

 てっきりオルドがすると思っていたメイスとこちら側は、困惑顔だ。


「メイスでも、あれくらいなら突破も出来るだろう?

 まずは壊さず、痕跡も残さずに突破しろ。その後、粉々に壊せ」

「えっ? そのやり方だと、めちゃくちゃ俺が感じ悪くないですか? 俺は鬼畜じゃないですよ?」

「研究者側が何度も因縁をつけてくるのは面倒だから、相手の自信を喪失するくらいじゃないと意味がないだろう?」

「それは可哀想だと……あっはい。賜りました」


 オルドより良心のありそうなメイスだったが、オルドのえも言えぬ圧に負けて了承すると、あっさり防御壁を突破した。

 そして振り返り、セキュリティ責任者に向かって、すまなそうに会釈した後、手が触れただけで破壊もしたのだ。


 徹底的に、と言うのは、こう言う事なのだろう。

 本当にあっさり通過して、特に苦労もせずに渾身の防御壁が破壊されたので、セキュリティ部門の責任者が灰のようになっていたのは痛々しかった。


「あっと? すみません?」


 頬をポリポリかきながらメイスは気まずそうにしていた。


「もうこれで気が済んだだろう?」


 冷淡で有無を言わせない圧力の籠った声でオルドが言い放った言葉に、研究者達は反感を覚えた。


 なら『俺のセキュリティも』と、研究者達が名乗りを挙げたのは言うまでもない。

 もちろん俺もその1人だ。

 研究者として、例え敗北と分かっていても、立ち向かうべきものだと思う。そこから何かを得ることもあるかもしれない。

 研究者としての変なプライドもあった。

 これも実験だ!!

 と言い聞かせ、研究室独自のセキュリティを皆が持ち寄ってきた。


 結果は惨敗だ。

 壊さず突破出来ないセキュリティはあったが、壊せば全てのセキュリティが、いとも簡単に突破してしまったのである。


「これが、魔法使いという人達だよ。まぁここまで出来るのは一部の高位魔法使いだろうが……。

 ……魔法使いを嫌いにならないでくれるとありがたい」


 ラルフ総長の言葉には重みがあった。

 力のない笑みに、諦めが混じっている様にも思える。

 オーディナリーと魔法使いは相容れないと、我々が思っているのではないかと、何処か寂しそうだ。

 実際、同じ人間なのに、大きな壁が目の前にあるように感じてしまっていた。

 オーディナリーと魔法使いの黒歴史は、誰もが学ぶ事であり、それを繰り返さない為の教訓でもある。

 魔法使いを恐れるが故の奴隷制度は100年ほど前まであった制度だが、実際を知る者はトライア地区に殆どいない。

 ここにいる人達も歴史では学ぶが、実際に目の当たりにすると魔法使いが畏怖の存在だったのは、理解できた。

 恐怖から、どうにかしようと思ってしまうのは、弱さ故か……。

 確かに、これは、私たちオーディナリーが何十年、何千年かかっても、対等になるのは難しそうだ。

 恐れるが故の奴隷支配だったのは容易に感じた。

 それを目の当たりにした瞬間だった。


 これはごく一部しか知らないが、ラルフ総長もアーレン王国から来た魔法使いだ。

 魔法使いなのに、魔道具研究者。

 ただ、私達の前ではこれ程圧倒的な魔法は、使った事はない。

 今思えば怖がられるのを恐れたのかもしれない。

 ラルフ総長は、元々、世間話はしない人だが、アーレン王国にいた時の話は、更に避けている様に思う。

 魔道具は、魔法使いを苦しめた奴隷の腕輪も魔道具の一種な為、魔法使いの中でも忌避している人たちは多いという。

 魔法使いは長寿だと言うし、オーディナリーよりも実際に体験した禍根の強い人達がまだ多くいる筈だ。

 他の魔法使いから、魔道具を研究するなんて異端者と言われていたのではないだろうか?

 そんな気がする。

 それでも総長は、ある想いから、魔道具研究に邁進していた。

 多くの研究者に教えを説いていたのも、その魔道具を完成させる為の打算もあったのだと思う。

 それを知っていた私達は、総長の恩に報いようと研究に励んだ。ある程度、結果は出てが、まだ完成には至らず歯痒い思いをしたものだ。

 それをつい最近、完成した、願いが成就されると聞いた時は皆喜んだのだ。

 ただ、それに1番寄与したのが、そこにいるオルドである事は、癪であるが。うん。物凄く気に食わないが。


 オルドは、魔法使いとしても、魔道具師としても天才的な力を持っている。

 それは覆らない事実だ。

 事実だったとしても、それを受け入れられるかは、また別の話である。

 天才的でも、研究に真摯に向き合ってない姿が嫌いだ。

 惰性でやっている奴に負けたくない。


 途方もない高い壁なのは分かっているが、それでも乗り越えてみたい。そう思ってしまうのは、俺がまだ若い証拠なのだろう。

明日も投稿予定です。

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