表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/159

オルドとメイス sideレルート

 コイツを研究室に入れるのは、気分の良いものではない。

 コイツとの数ヶ月前の出来事が身に染みている。

 と言うかコイツが嫌いだ。

 私は目で怒りを露わにしながらも、冷静に言葉を紡いだ。


「なぜ? オルド殿は、陰から護衛するはずでは?」


 今、目の前にいるコイツは研究者ではなく、フィリアの護衛だ。

 フィリアが入国する前の調整段階で、実際に交渉していた中心人物であり、フィリアに関するアーレン王国側の最高責任者。

 陰から見守るのは、フィリアが自由に、気兼ねなく過ごせるように配慮した為なので、今の見た目も、本来の姿ではない。

 本来の名はオリバーと言うらしいが、今の姿の際は、絶対にその名を口にするなと、誓約魔法までかけた徹底ぶり。よほどフィリアには知られたくないのだろう。


 嫌悪感を露わにしながらも、俺は数ヶ月前の出来事を思い出してしまった。


 ◇◇◇


 数ヶ月前、アーレン王国側から、1人の女性を保護して欲しいと依頼があった。

 アーレン王国とは協定を結んでおり、世話になっていることもあって、受け入れ態勢を整えるべく準備をしていた。

 事前交渉として、アーレン王国側は2人いた。

 オルドと、もう1人はオルドの部下のような立ち振る舞いだった。名前はメイソンと名乗ったが、メイスとトライア地区では名乗っている。

 オルドと同じ薄茶の目と髪、特徴が掴めない顔立ちだが、こちらも本来の姿ではないのだろう。

 オルドより一回りガタイがよく、こちらの方が護衛の様に思えた。実際2人が交代でフィリアの護衛にあたっているらしい。

 トライア地区は、サティカの普及と監視カメラの多さから犯罪に巻き込まれる可能性は低いが念には念をなのだろう。

 フィリアはこの地区で、要人扱いになるので護衛も同行を認められた。



 トライア地区のある会議室で事前調整は行われた。

 この会議室は、防音で外には決して音が漏れないばかりか、話した内容は、外には漏らすことのできない誓約魔法までかかっている。秘密事項を共有する上で必要な処置だった。

 事前調整には、こちらは関係部署の上層部の責任者達が10人ほどだった。もちろん私も含まれる。

 今回のフィリアの入国の依頼は、アーレン王国の前王弟からの要望だが、実務を取り仕切っていたのはオルドだ。

 なので共有したい者は全て出席するはずなのに、アーレン王国側は2人のみ。王弟は細かい内容には興味はないらしい。

 オルドは、かなり細かい取り決めをさせられたので、辟易した人物。

 総長も地区長も何故か、オルドが出す条件を殆どのんでいた。

 勿論こちらにも国益となる条件は提示していた。オルドが保有していた特許を譲り受けたり、魔法による都市開発の援助など、かなりの支援だった。1人の平民の身分の女性を受け入れるだけでこの報酬は寧ろ過大だと言える。神経質そうな護衛はいるが、許容範囲だと思われた。実際、後に研究が進んだ研究者も多くいた。


 が、揉めた点もある。最も納得いかなかったのは、護衛の2人は基本的に顔パスで許可も要らず何処にでも入れる、出入国も自由という点だ。

 こちらのセキュリティや秘匿権益まで脅かすのではないかと、皆反対したが、それをラルフ総長が肯定したのだ。


「コイツが本気になれば、どのセキュリティも突破するだろう。場合によっては、セキュリティを通るだけじゃなく破壊するかもしれないから損益の方が多い。それなら最初から許可しておいた方が無難だろう?」


 コイツにトライア地区の防御壁を突破出来ると言う事なのだろうか?

 確かにアーレン王国の高位の魔法使いは、人的域を遥かに超える能力を持っているが、こちらも何十年の積み重ねで防御壁を作り上げいるし、トライア地区発足以来、一度も壊された事はない。皆が総長言葉に懐疑的だった。


「ははっ。実際、既に何度もこの地区のセキュリティを突破して、私の個人研究室まで来ているのだよ。

 高位魔法使いとはそう言うものさ。

 見くびらないほうが良い」


 総長の言葉に皆に激震が走る。

 この地区において、ラルフ総長は、魔道具の最高責任者であり、技術面でもトップなのだ。

 ラルフ総長が、見込みのある者達に惜しげもなく魔道具の知識を広めたからこそ、今のトライア地区がある。

 なので、ここにいる責任者の全てがある意味、ラルフ総長の弟子なのだ。今の所ラルフ総長よりも魔道具に長けていると言い出せる者はここにいないだろう。

 そのラルフ総長の個人研究室は、最高峰のセキュリティが施されているのは間違いなかった。


 広範囲を防御する地区全体を守っている防御壁は、確かに魔法使いなら突破は容易いのかもしれない。それでも痕跡は残るはずだが……。記録が残っていないのならセキュリティ構築を考え直さないといけないかもしれない。

 それよりも個人の研究室は、範囲も狭くセキュリティを強固にしやすい筈なのにそれも突破するだと?

 そんな事があり得るのか?

 皆が動揺していると、ラルフ総長は苦笑して、更に俄には信じがたい話をし始める。


「まぁ、オリ…オルドはフィリアにしか、興味はない。

 俺に、この先、一生遊んで暮らせる有益な特許をタダで渡すくらいだ。

 秘匿権益には、全く興味はないさ。と言うより殆ど、オルドにとっては目新しいものはないだろう?」


そう言って、ラルフ総長は同意を得る様にオルドを見た。

オルドは、面倒そうだったが、総長に意見を振られ仕方なく答える。


「タダではない。『私のする事に口出しするな』と言っている。

 秘匿権益に興味などない。俺にとって、魔法も魔道具も手段にすぎない。必要であれば自分で学ぶだけだ。

 今はその必要はないし、研究の邪魔をするつもりもない。

 邪魔をしないなら、護衛に支障のない範囲で助力もしよう。

 ただ、私はフィリアが安全に過ごせているか、見守りたいだけだ。その邪魔をするなら排除するまでだ」


 オルドも、それを肯定するかのような発言だ。

 総長の言っている意味が最初わからなかった。

 この地区は知的財産の宝庫なので、国内外から知識を得ようと暗部が定期的に送り込まれてくるような場所だ。他国から喉から手が出るほど欲しい情報だらけのトライア地区は、特にセキュリティには厳しくしているし、日々更新して常に最新のセキュリティで強化している。

 にも関わらず、オルド殿はすぐに突破するだと?


 それに興味が無いなどとそんな事があり得るのか?

 特許をタダで渡す点で、お金に興味はないらしいが、特許を取るような人物なら、他の研究結果は興味があるはずだろ?

 俺は結構気になる研究室はあるぞ?

 倫理観と罰則から、もちろんそんな事はしないが、それを罰則なしで見れるなら見たいと思うのが研究者だろう?

 興味が無いなんておかしいだろ?



 他の人達も納得しなかったのは言うまでもない。

 セキュリティ部門の責任者が、テストしたいと言い出したのは必然だった。

明日で投稿1周年です。

次回の投稿は明日(9日)、23時半頃の予定です。

こんな夜遅くに初投稿してたみたいです。

すみません。

10日も投稿予定なので、注意して下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ