ダルダナ訓練施設
チンと言う可愛らしい音とともに前の扉が開く。
転移陣から出ると明るい部屋でホッとした。ただ、部屋を出ても窓がない場所が続く。白を基調とした壁紙とクリーム色の床、天井には蛍光灯に似たランプが等間隔にあって窓がなくても、とても明るい。少しひんやりした空間から、地下室なのでは無いかと思う。
バネッサに案内され、階段を登ると扉とパネルがある。またまたバネッサが何やら操作して、私の魔力とサティカを、登録し解錠した。
扉を出て、一つ角を曲がり少し進むと広間に出る。広間には窓があり、外を見るとここが一階のようだ。やはり、先ほどの転移陣は地下になる。
「ここが、ダルダナ訓練施設の中央玄関ね。あそこが受付。
大丈夫だと思うけど、今日は帰りも一緒に帰りましょう。
全部終わったらここ集合で! 着いたらサティカで連絡してね」
「はい。ありがとうございます」
「う〜ん。かたいなぁ。リラックスよ〜!!
後、敬語も少しずつ砕けてくれると嬉しいんだけどなぁ」
「はい。努力しま……ええっと、頑張る」
「ふふふ。じゃぁあとでね〜!」
バネッサが去ると途端、雰囲気が暗くなる。まぁそれが私なのだから仕方ない。受付を済ませて集合会場に行く。
大きな講義室に所狭しと人が座っている。流石トライア地区、魔道具で有名だからか希望者数も多いみたいだ。指定された席に座る。もう仲良くなった人たちもいるのか、雑談しているところもチラホラあった。
私は勿論話しかけ……れる訳もなく。テーブルに置いてあった、これからのスケジュールを見ていた。
◇◇◇
講習予定の数分前には、皆先に着席して講義室は静まり返る。
そんな中、1人の男性が教壇に立った。男性は藍色の髪をキッチリ纏め、紫がかった藍色の目はとても神経質そうだ。スラリとした体型は白衣を見事に着こなし立ち姿も凛々しかった。多分自分にも他人にも厳しい人そうだ。多分。
「私はレルート。
この20の教室の担当教官になります。お見知り置きを。
先に渡した資料を見ればわかりますが、あなた達は約2週間ハードスケジュールになります。この2週間を耐えられないようであれば、魔道具師には向いていないと思ってください。
魔道具師はトライア地区の花形とも言える職業になる分、給与水準も高いです。が、それ相応の責任と技術、知識が必要になりますので、生半可な気持ちでは難しいと思ってください。
無理だと思った方はいつでも途中でドロップアウトする事も可能です。
因みに今までのドロップ率は、約7割です。再受講される方もいるので最終ドロップ率はもう少し下がりますが、それくらい厳しいものになります。
更に2週間と言いましたが、実際に2週間で受講し試験に合格出来る人は1割もいません。平均受講期間は2ヶ月です。
軽い気持ちで来られた方は、ドロップする事をお勧めします。もし今の時点でドロップしたい方いらっしゃったら帰っていただいて構いません」
レルート教官は、そう一気に捲し立てた。
うん。思った感じの人だった。レルート教官の全体をギロリと見る威圧に、例え辞めたいと思っていても縫い付けられた様に体が動かないと思う。私も辞める気はないが、もし辞める気になった場合でも立つ勇気はない。当然、誰も動かなかった。
魔道具作成免許5級は、所謂、大量生産の魔道具作成に関わるみたいだが、魔道具は便利ではあるが不良品を出せば場合によっては事故にも繋がりかねない。それにトライア地区の沽券に関わる責任ある仕事には間違いない。2週間の実習は勿論大変だと思っていたが、思っていたよりも、更に緊張した時間になるのだろうと感じる。
ギロリと全体を見渡していたレルート教官は、少しため息を吐いた後、残念な人達を見るような目でこちらを見た。
「はぁ、まぁ仕方有りません。まずは篩に落とす為、試験をいたします。試験の結果によって16から20のレベル別に教室を振り分けられるので真剣にしてください。
まずはサティカに、触れてください。すでに試験内容が入っているはずです。はい、では始め!」
呆れたような、人を見下したような話し方は、癪に障ると言うか、そんな言い方しなくてもと思うが、今は試験に集中しなければと思い、サティカにふれた。




