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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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閉所恐怖症

 中に入ると扉が勝手に閉まる。

 天井の淡いライトが付いているので、真っ暗にはならないが、少し薄暗く、勝手の分からない狭い空間はちょっと苦手だった。見渡すと、入ってきた扉の内側にも同じようなパネルがある。その下にもパネルがありバネッサが操作していた。


「えぇっとダルダナ訓練実習棟だったわよね。

 ん〜あった!!」


 バネッサの隣で見ていると、どうやら地図のようだ。多分この地区の全体図だと思う。地図内にある建物の殆どは、グレーになっているが、所々、緑、赤、黄色の場所がある。多分色のついているところに転移陣があるのだと思う。バネッサが指差したのは海辺近くにある黄色に光る場所だった。


「ん〜順番待ちだわ。えぇっと色の付いているところが、ここの転移陣が一度は行った事のある転移陣で、緑は今すぐ転移可能、黄色は順番待ち、赤はなんらかの理由で使用不可になってるの。

 んで、ここが今回の実習先のダルダナ実習棟。

 ここをポチッと押すと、後は転移を待つだけよ。

 簡単でしょう? 場所だけ覚えててね?」

「はい。ありがとうございます」

「ん?ん? フィリア硬い!! 緊張してる??

 それは実習について? ……と言うか狭い部屋苦手?」


 私が思った以上に掠れた声でバネッサに返事をしてのでバネッサは振り返った。多分私の冷や汗を見てその結論に至ったようだ。

 私にとって狭い場所は、見知った場所なら最高の安心できる場所になるが、初めての所だったり、嫌な思い出のある閉鎖的な狭い空間は苦手だ。

 まぁ、よくある小さい頃に狭い空間に閉じ込められて嫌な思いをしたやつだ。

 バネッサがいるから落ち着いてられるが、1人だったらパニックだろう。

 私が苦笑いをしていると、バネッサは口を真一文字にした。

 多分怒っているのだろう。


「それって子供の頃に……親がとか?」


 バネッサが何を言いたいのかはわかる。

 子供の頃に、親に閉じ込められたのか? という事だろう。

 閉鎖空間が苦手な人に多いのは、幼少期に閉鎖的な空間で嫌な事があった人たちが多いからだ。

 偶々、事故で起こった場合もあるだろうが、昔は親が押入れに閉じ込めたりした事が多かった。

 多分バネッサは、幼少期に親に閉じ込められたのかと聞いているのだ。直接的に、わざわざ口に出さないのは、私のいまの状況を思いやってくれているからだ。

 勿論、今世の両親はそんな事はしない。


 私のトラウマをつくったのは、前世の父親だ。ほとんど家にいなかった父親だが、帰ってきたらここぞとばかりに子供達に難癖をつけてきた。

 社会的に立派な父親は、今思えば、足りない部分を指導していたのだろうなと思うけれど、幼児期に大人の理論的な指導は意味をなさない。

 子供は、わけのわからない理論でねじ伏せられる訳もなく反抗する。前世の私は幼少期から、人見知りの小心者ではなかった。我儘し放題だったのだと思う。幼児なんてそんなものだ。

 まぁ、幼少期の頃なんて、今世はともかくとして、前世の記憶は殆どない。けれど真っ暗闇の押し入れに入れられて、子供にとって、気の遠くなるような時間は、鮮明に覚えていた。そして落ち込んだり辛い時ほど夢に出て来たりする。


 今世になって忘れかけていた記憶が、何故かここに来て、よく思い出すようになる。不思議だ。特に落ち込んだりは、していないが、新しいことを始めることへの不安からだろうか?


 私は、ゆっくり息を吐いて自分を落ち着かせる。

 もうここに前世の父親はいない。私も、前世も含めればかなりのいい年齢になってきた。

 今はバネッサもいる。うん。大丈夫。


「いいえ。違います。私の両親はとても優しい人達なので、全くそう言った事はありませんでした。

 子供の頃の悪夢を思い出していただけで、現実ではないんです。もう大丈夫」


 バネッサに心配かけないように、笑顔で返事を返す。

 今世の両親には本当に良くしてもらっている。貴族の矜持から逃げて、神殿に入り、出国……我儘をいっぱいしてきた。こんな我儘し放題の私なのに、全てを許してくれている今世の両親には感謝しか無い。

 今世の両親の事は、バネッサに誤解されたくなかった。


「うん。お母さんやフィリアのお父さんは、悪くないのはわかった。……今はそういう事にしとく。言えるようになったら言ってね。全力で復讐計画するから!!」


 バネッサの顔が真剣でドス黒いオーラがあるような、ちょっと怖い部分を見たような気がしたが、見て見ぬ振りをした。

 バネッサでも、前世の父親に復讐計画は難しいだろう。

 私はニコリと笑うだけで誤魔化した。

 これ以上、この話を長くしたくなかったから。


 そうこうしているうちに、「チン」と昔のエレベーターのような音がして扉が開く。どうやら、転移が終わった様だった。




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