転移陣
パチっと目が開く。
寝起きは良い方だけれど、窓から入る朝の光が、更に目覚めをよくさせた。
早朝なのに、部屋の中は明るく、日当たりがとても良い。
半端者居住区の部屋よりも少し広めなのは、ちょっと落ち着かないけれど(狭い部屋の方が落ち着く私が変わり者なので、部屋は悪く無い)、かなり良い部屋だ。
身支度を済ませて、食堂に行く途中にバネッサにあう。
恐縮しつつ部屋のお礼を言うと、嬉しそうな笑顔を返してくれた。ペティの皆であつらえた部屋だと言う。
ペティとは、この辺一帯の地域の事を言うみたいだ。なので、孤児院もペティ孤児院、研究棟もペティ研究棟、食堂もペティ食堂とつづく。なのでペティの地域に住む子供達も、ペティの子供達と通称で呼んでいる。
ペティに住む人達みんなで分担して整えてくれたらしく、カーテンは、生地から選んで子供達が縫ってくれたり、壁紙も張り替えてくれたり、備え付けの家具も手作りらしい。
それは子供達が将来、職に就くための訓練の一環でもあるみたいだ。
子供達の手作りだと言われると、途端に愛着がわく。現金な奴だなと自分で思いつつ、大切に使わせて貰おう。ここの人達の温かさに、私の心も温かくなった。
◇◇◇
ペティの家は、魔道具が沢山あり、日々驚いたり慣れないこともあった。1番驚いたのは、トイレに入る時にランプが勝手に点いた事だ。前世で言う人感センサー付きのランプらしい。そういや前世の時も初めてセンサーライトがついた時はびびってたな……。全然成長してない私だ。けれど1週間もすれば慣れた。
ペティに住む子供達も大人も、皆、とても明るくて気さくな人が多い。困っている事は無いかとか、オススメの場所を案内してくれたりと、積極的に声をかけてくれるので、私も何とか対応出来ているし、大体の場所も把握できた。本当にありがたい。
今日から、魔道具作成免許5級の講習と演習が始まる。
遠方から来る人は、合宿の様な施設もあるらしいが、私は通える距離なので、ペティの家から通わせてもらう。
講習を申し込んだ後、日程が届いたが、朝から夕方まで休憩を挟んではいるが、びっしり予定が詰まっていた。
こんなにびっしり詰まった講義は、前世の大学以来だなと思いつつ身の引き締まる思いになる。
みんなで朝食を食べ、お片付けをして、自室で用意を済ませた。初日はバネッサが、送ってくれるとのことで、玄関で待ち合わせだ。
「お待たせ〜じぁあ早速行きましょう!!」
「よろしくお願いします!」
時間通りにバネッサが来て、外に出るかと思いきや、研究棟の方へ進む。外に出ないのかと思っていると……。
「歩いて行くと結構かかるし、転移魔法だと色々厄介なのよねぇ。という事で、転移陣から行くことにしましょう。
父さんの許可は取っているから、登録はしてくれているはず」
どうやら会場へは、徒歩ではなく転移陣を使うらしい。
転移陣とは、任意の場所を繋ぐ魔道具だ。どうやらペティの研究等にも転移陣があるらしい。
玄関から、研究棟へ向かう廊下の手前にある扉へ近づき、扉の横にあるパネルにバネッサは手を翳した。
何やらバネッサがしていると、白に光っていたパネルが緑に変わる。
「フィリアの魔力とサティカを登録するから、手のひらをパネルにのせて魔力を流してくれる?」
「はい。わかりました」
私はパネルに触り魔力を流す。どれくらい流せば良いかわからなかったが、パネルの色が青に変わった。
「OK! それで充分。これでフィリアも魔法陣の部屋に入れるから扉を開けてみて」
魔力を流すのをやめて、ドアノブに手をかける。
ドアノブに触れると、一瞬光ってカチャリと音がなる。
扉を開けると、数人が入るのがやっとくらいの、板間の小さな空間だった。




