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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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デールさん

「ふふ。なんか湿っぽいのは苦手なの。

 私には似合わないと思うのよねぇ?

 という事で、なんかお腹すいちゃったぁ。

 食堂案内するね?」


 バネッサが話すと、さっきまでのどこかどんよりした空気は無くなり、明るい雰囲気なる。凄い人だな。

 何というかバネッサは歳以上に大人びている。

 ただ前向きな人なだけじゃなく、色々な事情があったのを乗り越えて今があるので懐が深い。

 きっとこれまでも苦労したのでは無いかと思う。


 バネッサが、立ち上がり扉へ向かう。

 私は返事をして、バネッサに続く。


 部屋を出ると、関所ほどでは無いが、長い廊下があり、扉も多い。たくさん部屋があるようだ。

 バネッサの話で、ここはちょっと複雑な事情を抱えた子供達も暮らす孤児院のようなものも兼ねているので、今は20人ほど、下は幼児から大人まで住んでいるらしい。


「あっ、先に荷物の整理かな?

 気が利かなくてごめんね?」


「大丈夫です。荷物整理は殆どないですし……ちょっとお腹が空いててご飯食べたいなぁと思っていたので!!」


 歩いている途中、バネッサがそう声をかけてくれたけれど、殆どの荷物は魔法空間に入っているから、整理の必要もない。多分ぽんぽんぽんと大きな家具を置いていくだけなので数分もあれば出来る。

 何より、今日は初めての事が多くの緊張と感情の浮き沈みが激しかったので部屋に案内されたら、疲れていて、そのまま寝てしまいそうだ。

 初日から、疲れがあったとはいえ、寝て挨拶をすっぽかすより、お世話になる方々への挨拶は早めの方が良いだろう。


「そっそう?

 関所の食堂もなかなか美味しいけれど、ここのも負けちゃいないのよ!!」


 私がはっきりと物を言うのが珍しいのか、バネッサは驚いていたが、食堂の方へ案内された。


 食堂は、関所の食堂と似たような配列で椅子とテーブルが並べられていた。

 奥からは湯気と良い匂いが漂ってくる。


「デールさん、今日から新しい人が入ったの!

 フィリアだよ! 私の妹だからよろしくね」


 バネッサは食堂と厨房室を分けてある扉を開きながら、私を紹介する。厨房の扉の奥には、中年の女性が1人いて忙しなく動いていた。

 厨房には出来たばかりの食事がたくさん並んでいる。

 唐揚げやおにぎり、サンドイッチ、ピザもある。

 品数も多く、ここの基準はわからないけれどかなり豪華なんじゃ無いかと思う。とにかく良い匂い!

 ちょっとふくよかな女性がデールさんなのだろう。バネッサの声を聞いてこちらを向く。 

 茶色い目に、茶色い髪をうしろでまとめ、調理の為か化粧気のない笑顔の似合う女性だった。


「はいよ! 聞いていたから今日は張り切って作っているからね!!

 ……あらあらまぁまぁ可愛らしいお嬢さんじゃ無いかい。

 フィリアちゃん! 私はデール。よろしくね!」 


 デールさんは、バネッサには気安い感じで話しかけ、私の方には改まって優しい笑みを浮かべて話してくれる。


「フィリアです。よろしくお願いします」


 私は初対面の為かちょっとぎこちない挨拶になってしまった。

「フィリア固いよ〜リラックス!!

 あっあ〜!! 唐揚げがぁ〜」


 バネッサが私の挨拶にフォローをしつつ、唐揚げをつまみ食いしようとして、デールさんに取り上げられあられもない声を出す。とても悲しそうな声だ。


「みんなで歓迎会するんだから、つまみ食いはなし!

 と言いたいところだが手伝うなら、あげるよぅ?

 さてどうする??」


「手伝う〜! おいひ〜」


 デールさんの問いに即答したバネッサは念願の唐揚げを食べて満足そうな顔だ。


「私も手伝いたいです!!」

「えぇっと、こちらは助かるけど、歓迎会の主役に手伝って貰うのは良いのかい?」


 疲れはあるが、こちらの生活にも慣れたい。アーレン王国では、ほぼ魔法で料理をする。なので殆ど単調な味付けになりやすいが、ここの調理場を見ると前世の厨房を思い出す。

 前世と同じ様な調理器具に興味が湧いた。精神的にも体力的にも辛いが、今を逃すと私から言い出すのは苦手なので頑張るしかない。

 少し困惑顔のデールさんは、私の申し出にどうしたものかとバネッサを見る。


「良いんじゃ無いかな? フィリアもお腹空いているのよねぇ? つまみ食い出来るならやりたよね!!」


 バネッサが助け舟をだしてくれる。

 私の意図とは違うけれど、やりたい事には変わりはないので、私は肯定をした。

 デールさんは豪快に笑った。


「こりゃ2人とも食いしん坊だとは、腕がなるねぇ。

 それなら遠慮なく手伝ってもらおうかな?

 これは似たもの同士! さすが姉妹だね!」


 デールさんはそう言ってもう一度、豪快に笑った。

 私は、内容はどうであれ、バネッサと姉妹だと言われて密かに嬉しく感じていた。


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