第五話 誤解と憶測
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天野エミリ 四
「これ、そうかくんにずっと返したかったの。覚えてる?返そうと声をかけようとしたんだけど、ちょっと勇気が出なくて・・・」
その声も見た目に比例してまさしく天使である。想定外の状況に賢太郎の脳内シュミレーションは全く役に立たなかった。
「傘?いつ? っ 天野に?」
「うん・・。返すね。」
「あ、あぁ。」
微妙な返事になる。その一連の出来事が一瞬で終わる。
「俺、天野と話したことあったっけ?」
「うん、去年のちょうど今くらい」
「ごめん覚えてない・・・・」
「やっぱりそうなんだ・・。」
どこか悲しそうな表情をする彼女。
「それに二年になって初めて天野を見た。」
「ひどい・・・。」
草加賢太郎という人間は、嘘が得意ではない。自覚している。目の前にいる彼女を目の当たりにしてもそうだ。。そして、目の前にいる宝石のような青色の目を見れば嘘はつけない。神に嘘は御法度だ。
「違う、俺はあまり他人に関心がない、そう言う人間ってだけだ。」
「うん、見てたらわかる。何回も声かけようとしたのに目も合わせてくれないんだもん。」
「それは悪かったな。」
「頑張ったのに。」
「だから悪かったって。」
中野珈琲の窓は全部で三つ。古閑優、木佐博之は二人から遠い側の窓に張り付きその様子を眺める。それでも内側からは気づかれていない。
「なんかあいつらいい感じじゃね?」
「よ、告白大統領」
「実は天野、」
「エミリで、いいよ・・。」
忘れていたわけではない。ただの気恥ずかしさだ。そして、嘘つけない病気を発症してしまう。
「あ、あぁわかった。 っえ、エミリ、実は誤解なんだ。」
「・・・?」
「その誤解なんだ、昨日のあれは・・・・。」
「・・・・・・・・・?。」
「天野に告白したのは本当は違うんだ。」
言ってしまった。どうしていつもこうなるんだ。
「何が?」
「俺昨日お前に告白しただろ」
「うん」
「それが誤解なんだ。」
「なんかあいつら急にどうした。」
「なんか〜雰囲気悪いね〜」
「俺もそう思う。」
賢太郎は違和感に遭遇した。目の前の美少女の様子がおかしい。なにを考えているんだ。
「私は、好きだったの。草加賢太郎くん、あなたのことが好きなの。なのにひどい。」
まだよくわからない。
「へ?」
「なんで一回でわからないの・・。」
思わず変な声を出してしまった。
驚いた。まさか、そのまさかだ。
「天野、俺のどこに・・・。」
「特別扱いしなかったのはあなただけだったから。」
違う、それは、さっきも言って、気がつかなかっただけだ。
賢太郎は微かに震える彼女の唇を見て、幾分か自分は無慈悲な人間なんだと悟った。
それでも草加賢太郎は嘘はつけない。
「・・・。ごめん。まだ返事は出せない。」
「そ、そうだよね。ごめんね。も、もう帰るね。」
「待ってくれ、そうじゃない、エミリ。俺もお前のことが好きなんだ。でも違う。今は。」
ついに言ってしまった。だがとっくに腹を括っていた。
そう、今はまだやるべきことがある。
江藤の顔が、その漢としての勇姿が頭をよぎる。
「おい、賢太郎何か言ってるぞ!」
「わぁ、だいぶ注目されてんね〜。」
翌日、眠りに眠れなかった賢太郎は一限目ギリギリになって登校した。
カラッと晴れたアスファルトが異様に眩しかった。動揺は未だに健在中だ。久しぶりに忘れ物をしてしまった。
「芹川、消しゴム持ってないか?仁が一つしか持ってないんだ。シャーペンは貸してくれたのだが。」
「悪い俺もこれしかないんだ。どっかに落ちてなかったか?」
「賢、俺のせいにするのはよしてくれ。にしても、賢が忘れ物、それも筆箱を忘れるなんて。賢、お前もしかして・・・。」
「違う、たまたまだ。」
「いいよ、これ貸すよ。」
「すまん、サンキュウ・・。」
なぜか彼はあっさりとしている。取り繕っているのか? 嘘つけない病患者には伝わる何かがある。気のせいか。
落し物届けの消しゴムをとって、またそこに返せばいいだろう。盗みを働いているわけではない。あくまで借りるだけだ。
しかし、一番上に乗せられてある消しゴムは、確かに見覚えのある、これは・・確かあいつの・・・だよな。
消しゴムとしては珍しい色をしていたので覚えていた。昨日拾おうとしたあの消しゴムだ。一番上に置いてあるということは、今日、もしくは昨日届けられたものだろう。
賢太郎は、彼に返すために持ち去ろうとしたが、やっぱりそっと元に戻した。
まさかな・・・・・・。
教室に入り、エミリに気がつかれないように自分の席に戻る。単純に気まずい。隣には仁が座っている。芹川がいないことを確認する。
「仁、昨日芹川図書室で見なかったか?」
「賢、また何かあったのかい?」
「ああ、多分な。で、どうなんだ。」
「いたよ、本を読んでいたよ。急にどうしたんだい?賢、少し顔色悪いぞ」
「どのくらいだ」
「最後までさ」
「その前は?」
「わからない、けど芹川はいつも遅くまでいるよ。なんたってこの学年で三位だからね。」
「そうだな・・・・・。」
そこで話をやめた。まだ情報が足りない。
賢太郎が教室を出ようとしたとき、入り口でとんでもなく可愛く、絵にも言えない美しさの天使と鉢合わせた。さっきまで椅子に座っていたはずだ。しまった。
「あまっ、エミリ、昨日は、ありがとな。」
またあいつら!
仁は読書に夢中にもかかわらずどこにそのセンサーがついているのか、入り口付近の二人反応する。
そしてすぐさま駆け寄った。交通違反の取り締まりのような勘の鋭さだ。
「天野さ〜ん、昨日は賢に何かされなかったかい?」
「っぁお前、仁!余計なこと言うな!」
エミリに引き続き、さっきまであの席に座っていたはずだ。
エミリの声がそれは実体を持って遠ざかって行くかのようにこだまする。
「私たち付き合うことになったの。」
(付き合うことになったの・・)
(ぁうことになったの・・)
(ったの)
(たの)
(・・・・・・。)
仁はポカーンと口と目を開けていた。
沈黙が降りる。
仁はふと我に帰ると、賢太郎の方を鬼の形相で向いた。
「嘘だろ!賢!賢太郎!説明しろ!」
いや、わからない、彼女が何を言っているのか。胸の奥から何か込み上げてくる。止められない。
「エミリ!おおおおお前何言ってんだ!」
「違うの?」
「エミリってなんだ!天野さんに何を吹き込んだ! 天野さん、こいつに弱みでも握られたのかい?」
「・・・・。」
若干火照る彼女の顔がリアリティーを持たせる。状況が複雑になる。
「賢!」
自分が慌てればこの場の収集はつかないだろう。今度こそ心を落ち着かせよう。
「はぁ、仁ちょっと落ち着け、だから、俺は付き合ってはいない。」
「告白したんじゃないのか?」
「ああ、した。」
「お前はバカなのか!」
「バカで悪かった。」
「なのに本当に付き合ってはないのか?」
「ああ、だが俺はエミリが好きだ、それは認める。」
「っつ!」
息を大きく吸い込む。
「この告白総理大臣があああああ!」
エミリは口を閉ざして俯く。そして聞こえないように呟いた。
「バカ・・・・。」
図書室の先生は恐らく芹川のことを知っているだろうと思い図書室に訪れてみた。
返却BOXと書かれた棚にはどっさりと本が積まれている。
忙しそうだな。手短にいこう。
「あの先生、二日前芹川見ませんでしたか?」
「芹川くん?あのいつもいる子よね?」
「はい多分それです。」
「彼、そういえば珍しくここにきてなかったわね〜お休みしてたのかしら。」
「いえ、彼は同じクラスメートですので、いました。覚えています。」
「そう・・実は私も少し気になっていたのよ。常連さんが急にこなくなったときの気持ちがわかったかもしれないわ。でも次の日からちゃんと来てたわよ。安心したわ。」
そこまでで満足だった。手短に。
「そうですか、ありがとうございました。」
賢太郎は久しぶりに校内を走ったかもしれない。運動不足か、息が切れるのが早くなったらしい。息を荒げたまま教室に駆け込み、青年の机にバッと両手を下ろす。
「お前、これ以前に別の相談事持ちかけられたことはないか?」
「今は関係なくないですか?」
呼吸を整えるために深呼吸する。そしてもう一度。
「いいから、何かなかったか?こう恋愛とか、そっち方面で。」
と、少年は何かに怯えているかのように急に立ち上がると、急いで教室の外に出て行った。
すぐに追いつき話を聞く。
「どうした!どんだけ走らせる気だ。」
「あ、ありますが!お話しした方がよろしのでしょう?」
あっさりと教えてくれるようだ。なぜ逃げたのだろう。多分・・・そうだ。一人で納得する。
「ああ、ぜひ。」
「実は・・・。一年生の十二月。あれはクリスマス前からだったと思います。ほら、やっぱりクリスマス前って、か、彼女とか作りたいとか思いますよね・・。それでだと思います、今同じクラスメートの、」
「もういい。大丈夫だ。悪かった。お前が席から慌てて逃げた理由はそれか?」
「ええ。」
「あとは察する。すまん、そして感謝する。」
「何かまたあったので・・・まさか!?」
「や、まだ俺の勝手な憶測でしかない。」
まだ公にすることはできない。江藤もそれはわかっているようだった。
今日はもう落ち着こ・・・・・ちつけない。
「そうかく・・・・・・・・・・・・け、ケンタロウ、」
顔が熱い。体が熱い。なんだ、急にどうしたんだ。エミリに名前を呼ばれた。昨日から大接近しすぎだろ。正直、もう心に余裕がない。空容量はゼロだ。
しかし、なんとも美人だ。とてつもなく可愛い。
「な、なんで片言なんだ、で、どうした?」
「い、一緒に帰らない?」
急すぎる、それはあまりにも唐突だった。
「あ、ああ、いいけど。」
だが正直嬉しい。こんな経験は二度としたい。そう思える。来世にもよろしくお願いしたい。
正門の坂を昨日と同じく二人で下る。傘が当たる距離を取らない分、距離がかなり近い。
昨日みたいに雨音も聞こえない。しかし、なぜか昨日よりは余裕がある。
「まあそれもそうか。」
「ん?」
エミリがこちらを向いた。その目を見つめる。
「いや、なんでもない。」
今日はどこを歩いても大丈夫そうだ。
さて、これからが高校生らしい謎解きになっていきます。
本当に彼が犯人なのか。犯人だとしても。。。。。




