51.思わぬ収穫
十数体の緑皮鬼。簡単な思考能力を持つこの邪悪体たちは、知性種族のように隊列の中でそれぞれ役割を分担していた。先頭で道を切り開く者、周囲を警戒する者、獲物を運ぶ者と、三つの役目が整然と分けられている。
目的地である森が目前に見えてくると、一行は明らかに活気づいた。
口から時折、興奮した甲高い声を上げ、それに応じるように奥の巣からも、小さな幼体や雌個体が次々と飛び出してくる。数日分はありそうな食料を、皆で処理するつもりなのだろう。
その時だった。
隊列の中でもひときわ大きく逞しい、ほとんど人間と変わらない体格をした上位個体の緑皮鬼が、突然、手にした骨の棍棒を高く掲げ、慌てたような甲高い叫び声を上げた!
作業を始めていた緑皮鬼たちは一瞬呆けたものの、すぐさま四方へ逃げ散った。獲物すらその場に放り出し、とにかく逃げようとする。
だが、もう遅かった。
明るい空の下、火の元素がエネルギーと呪文によって凝縮され、燃え盛る巨大な火球がいくつも生み出される。それらは猛烈な勢いで緑皮鬼の群れへと降り注ぎ、巣から飛び出してきた幼体や雌個体すら容赦なく巻き込んだ!
たちまち草原の至るところで赤い光が弾け、炎が燃え上がる。火勢は一気に広がっていった。
それまで穏やかだった草原は、瞬く間に生死を懸けた狩場へと変わった。
大柄な緑皮鬼は、自分たち程度の群れでは敵わないと悟ったのだろう。再び奇妙ながらも統制の取れた甲高い声を上げると、生き残った個体がすぐさまその周囲へ集まり、一斉に炎の隙間を縫って逃げ出した。
その時、「ヒュッ! ヒュッ! ヒュッ!」と数度、空気を切り裂く音が響く!
数本の矢が、潜伏しているヴィンセントでさえ辛うじて目で追えるほどの速度で飛来し、逃げようとしていた緑皮鬼たちを瞬く間に射抜いた。
恐ろしいのは、その矢が速く、射程も長いだけではない。すべてが炎の壁を貫いて飛び込んでくるため、その中にいる緑皮鬼には攻撃の軌道を読むことさえ難しい。
しかも矢には魔力を帯びた炎がまとわりついており、命中した者はたちまち全身を炎に包まれ、確実に死へと追いやられていた。
ヴィンセントは長草の中に伏せたまま、密かに驚いていた。
まず待ち伏せを成功させ、火球の魔法による奇襲で緑皮鬼の逃走経路を制限し、さらに炎の壁を貫く矢で殺傷力を高める。一連の動きは素早く、省力的で、極めて効率がいい。
その組み立ては、ヴィンセントがこれまで目にしてきた名のある傭兵団にもまるで見劣りしなかった。
何より、この伏兵たちの射撃能力は、彼がこれまで出会ってきた冒険者たちよりも遥かに優れ、正確だった。
天賦「探知」を通じて、ヴィンセントには分かる。
放たれた矢に無駄撃ちは一つもない。すべてが致命の一射だった。
速く、正確で、そして遠い。
緑皮鬼たちが状況を把握するより先に、すでに壊滅的な一斉攻撃が叩き込まれていた。
この時には、エネルギーの反応からヴィンセントも数人の射手が潜んでいる位置を掴んでいた。だが、相手の射程は明らかに彼の探知限界よりも遠い。中には攻撃を始めて初めて、その存在に気づけた伏兵さえいる。
ヴィンセントはますます警戒を強め、気配を深く押し殺した。
草原を焼く激しい炎の中では、一方的な殺戮が続いていた。
容赦のない矢の雨は、やがて視界に入る緑皮鬼をすべて仕留め、部下を犠牲にして辛うじて炎の輪を突破した大柄な緑皮鬼だけが生き残る。
だが次の瞬間、草むらから低く伏せた影が姿を現した。
五本の指先には硬く鋭い爪が伸び、それらを揃えて刃のようにし、大柄な緑皮鬼の首筋へと不意打ちを放つ!
この緑皮鬼の変異個体は、偵察や感知を得意としているらしい。先ほども誰より早く火の元素が集まる気配を察知していたが、今回もまた伏兵の奇襲に気づいた!
影が密かに近づいていた時から、大柄な緑皮鬼は両手で骨の棍棒を握りしめていた。敵が草むらから姿を現した瞬間、勢いよく振り向き、棍棒を全力で横薙ぎにする!
頭部を狙った一撃だった。
互いの生死を分ける攻撃がぶつかろうとした、その時。
一本の矢が素早く、しかもほとんど音もなく飛来し、大柄な緑皮鬼の肩を射抜いた!
貫通した矢の強烈な力に引かれ、大柄な緑皮鬼の身体が大きく揺らぐ。振り抜こうとしていた棍棒の動きさえ鈍った。
奇襲者はその隙を逃さなかった。
低く身を沈めたまま一気に距離を詰め、片手を刃のように揃えて鋭く突き出す。その一撃が、邪悪体の腹部を鮮やかに貫いた!
なおも抵抗しようとする大柄な緑皮鬼の口から、大量の緑色の血が流れ落ちる。震える腕で再び骨の棍棒を持ち上げようとしたものの、満足に動くことすらできない今の姿は、格好の標的でしかなかった。
再び一本の矢が炎の壁を突き抜けて飛来する。
十分に力を溜めた強烈な一射は、今度こそ眼球から脳、そのまま後頭部まで一直線に貫き、矢そのものが頭蓋を完全に突き抜けた。
さらに矢にまとわりついていた魔力の炎が燃え広がり、その頭部を瞬く間に黒焦げへと変える。
大柄な緑皮鬼の身体が、ついに力なく倒れた。
この巣の緑皮鬼がすべて殲滅されたことを確認すると、それまで姿を隠していた伏兵たちが一人、また一人と姿を現した。
遠くから隠れて見ていたヴィンセントは、その正体を目にして驚きを隠せなかった。
隊伍の半数ほどは、獣の耳、鋭い眼差し、長い尾、体毛、刺青など、半ば野性的な特徴を色濃く残した亜人だった。
その特徴にはヴィンセントも見覚えがある。
人亜連合は冒険者を多く輩出する国だ。彼自身もかつてしばらくあの地を流浪していたことがあり、現地では至るところで亜人の姿を目にした。決して珍しい存在ではない。
亜人たちが遊騎兵ギルドしか信用しないのでなければ、蒼藍帝国の迷宮城攻略隊にも、それぞれ異なる生まれつきの長所を持つ彼らの姿があったことだろう。
だが、伏兵たちの中でヴィンセントを本当に驚かせたのは、残る半数だった。
風になびく金髪、細身の身体、長く尖った耳、澄んだ緑の瞳、整った顔立ち。
それぞれが背に異なる形の弓や弩を負っている。
緑皮鬼の大半を仕留めた射手は、どうやら彼ららしい。
「……エルフか?」
「この知性種族は原始樹海に閉じこもって何年も外界との交流を断ち、近隣のごく一部の勢力とだけ交易を続けているはずだ。外ではほとんど姿を見ないし、血染めの薔薇事件以降はさらに少なくなった……エリカが言っていた、混沌時代から残る部族なのか?」
考えながら、ヴィンセントは慎重に距離を詰めていった。
この亜人とエルフについて、もう少し詳しく知りたい。
もし接触し、飼育に成功できれば、彼らは死亡峡谷にとって最高の補充戦力となり、エリカにとっても最良の助けとなるはずだった。
だが、その最中。
鋭い視線に捉えられたような感覚が、突然ヴィンセントを襲った!
エルフについて聞いたことのある噂を思い出し、ヴィンセントは即座に足を止める。
天賦「隠匿」を維持したまま、ぴたりと動きを止め、静かに身を低く伏せた。
遠方では、先ほどの戦場が今も炎に包まれていた。
「デヴィット、どうした? まだ始末してない緑皮鬼が残ってるのか?」
目の前のエルフより二回り以上も大きく逞しい亜人が、ひどく大きな声で問いかけた。
その一声だけで、周囲にいた十数人のエルフと亜人はすぐさま再び戦闘態勢へ移った。
慌てる者は一人もいない。
明らかに訓練されている。
数人のエルフが流れるような動作で背負っていた弓や強弩を手に取り、内側へ下がる。亜人たちは粗末な武器を構え、外周の草むらへ潜み、不測の事態や奇襲に備えた。
デヴィットと呼ばれたエルフは、すぐには答えなかった。わずかに眉を寄せ、自分が視線を感じた方向へ目を凝らす。
だが、そこに生える植物たちから返ってくる単純な反応によれば、そこには何もいない。
ただ長い草が、風に揺れ続けているだけだった。
「何でもない、キヌ。俺の勘違いだったようだ。皆、警戒を解いていい」
その言葉を聞いて、ようやく皆が再び集まり、武器を収めた。そして整然と戦場の片づけを始める。
緑皮鬼が持ち帰ろうとしていた獲物も、ちょうど村へ運んでいける。
エルフと亜人は、それぞれ自分の役目へ戻っていった。
突然――デヴィットが迅雷のごとき速さで振り返った。
隣にいたキヌでさえ、その動きを目で追えないほどだった!
弓を取る。
矢をつがえる。
弦を引く。
狙いを定める。
放つ。
すべてが瞬き一つの間に終わった!
異変に気づいて全員が振り返った時には、矢はすでに光のような速さで疾走していた。
鋭い風切り音とともに遠方の草むらを貫き、その先にある巨岩へ深々と突き刺さる。
矢羽は、矢に込められた凄まじいエネルギーの余波を受け、なお激しく震え続けていた。
今度は誰もデヴィットの判断を疑わなかった。
キヌは即座に数人の亜人へ声をかける。獣性に満ちた荒々しい顔を引き締め、体内で雷鳴のような唸りが微かに響く中、低い声で言った。
「デヴィット、俺たちで見てくる。お前は他の連中を連れて、後ろで気をつけてろ」
キヌがそう言って動こうとした時、隣にいたエルフの友人が腕を伸ばしてそれを止め、首を横に振った。
「いや。植物たちが教えてくれている。これは不吉な血の臭いだ。周辺の緑皮鬼の巣を片づける任務はもう終わった。先に静謐の森へ戻って、長老と祭司に報告しよう。母樹から何か示しがあるかもしれない」
そう言いながらも、デヴィットは遠くの草むらから視線を外そうとしなかった。
キヌはそれを聞いて、仕方なさそうに頭を掻いた。
危険があるのなら、その場で片づけてしまえばいいのに――彼には、どうしてそうしないのか理解できない。
この友人は他のことなら何も問題ないのだが、いわゆる運命や示しというものを信じすぎるところだけは、どうにも理解しがたかった。
他のエルフたちですら、ここまでではない。
もっとも、それこそが彼が次代の指導者として育てられている理由なのかもしれない。
キヌは仲間たちへ頷き、デヴィットの言う通りにするよう合図した。
一行は再び片づけを始めたが、その速度は明らかに先ほどよりも速い。遠方の矢が突き刺さった場所への警戒も、誰一人として忘れてはいなかった。
その後の作業は順調に進んだ。
デヴィットだけは弓を手にしたまま絶えず周囲へ視線を走らせていたものの、それ以上の異変は起こらない。
エルフと亜人の混成隊は戦場を片づけ終えると、すぐさま森の縁を迂回しながら別の方向へ退いていった。
それから間もなく。
長草が風に揺れる場所からそう遠くない物陰で、ヴィンセントの姿がゆっくりと現れた。その表情は険しい。
頬には浅い血の筋が一本増え、そこから鮮やかな赤い血の粒が少しずつ滲み出していた。
先ほど不意に放たれた一矢は、予測することも防ぐこともあまりに難しかった。
実際、ヴィンセントは完全には避けられていない。
いや、反応することさえ間に合わなかったと言っていい。
最後の瞬間、ほとんど反射的に天賦「超速」を発動したことで、ようやく致命的な軌道から辛うじて逃れただけだった。
エルフの弓術は、やはり噂通りだった。
恐ろしく優れている。
先ほどの振り向きざまの一射だけでも、ヴィンセントがこれまで見てきた多くの冒険者を遥かに上回っていた。
亜人との連携も整っている。明らかに協力して戦う術を心得たエルフの部族だ。まさに、今の死亡峡谷が最も必要としている人材だった。
エルフには植物と意思を通わせる能力があるという。
ヴィンセントは天賦「隠匿」のまま急いで後を追う案を捨て、天賦「探知」を使って遠くから追跡することにした。
緑皮鬼の補充なら、また別の場所で探せばいい。
この邪悪体はシロ大陸の至るところに存在している。この高原にも、他にいくらでもいるはずだ。
今はまず、この地でエルフと亜人がどのように暮らしているのかを把握する必要がある。それからでなければ、彼らを死亡峡谷へ勧誘できる可能性があるかどうかも判断できない。
果てしなく広がる高原を、エルフと亜人の一行は、何か分からぬ圧力に急かされるように足早に進んでいた。
その遥か後方を、血族が慎重に追っていく。
どちらも進む速度は、それほど速くない。
道中、双方とも意図的に高原に棲むさまざまな種族や危険を避けながら進み続けた。
やがて光神が天頂から傾き始める頃。
高原の景色を塗り替え、空の大半さえ覆い隠すほど巨大な森が、ついに視界へ姿を現した。
目的地は、その前方。
広大な高原の大半を占める――静謐の森。




